深夜の月は綺麗

まどうふ

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君は素敵だったよ

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 深夜、僕はコンビニまで散歩に出かけた。

 深夜に外へ出て静かな街をまた見てみたかった。車は通っているが静かな街、ふと僕は空を見上げた。

「今日は満月か、綺麗だな」

 朝や昼の日光も素敵だが、夜の月光の方が僕は好きだ。月明かりに照らされた僕は卯月に心を見透かされている気がした。

 信号を待つ時間さえも心地がいい。夜風に揺らされるこの身体の本体は心臓、急所を乗っ取られてしまえば後は操られるのみ。

 普段から文字を書いている者としてはこの夜に刺激を頂く。信号が青になり、僕は地面を踏みつける。

「こんな時間に女の子⋯⋯?」

 刺激が舞い降りるその瞬間、僕は黒髪で容姿端麗な君に心を乗っ取られた。

 操られる僕の身体は自ら道路に飛び出してしまい、信号無視をしてきた不安定な車に轢かれた。

「⋯⋯っ⋯⋯かっ⋯⋯」

 声が出ないほどの激しい衝撃と痛み、横断歩道に倒れ込んだ体は生温かい赤色で地面を彩る。街路灯《がいろとう》に照らされた僕は瞼の奥に光を感じ、少しの勇気と奇跡を信じて瞳に睫毛《まつげ》をかけた。

「大丈夫?」

 奇跡を信じた僕の勝ち。半目から見えるその姿は月影に映し出されていても尚 美しい。

「君は素敵だな、羨ましく思うよ」

 紅く染まった君の顔は僕よりも眩しいと感じた時、胸が張り裂けそうになった。

「人間の体は脆い、気をつけなよ」

 その言葉を後に、僕は意識を失った。


 目を開けると知らない天井、そこは病院だった。彼女のおかげで僕は一命を取り留めることが出来た、だけど僕の心はまだ操られたまま。
 だけどいくら君を探しても僕の目に映ることはなかった。

 後悔、哀しみ、憂目《ういめ》を感じ、君を追うように僕は──

 深夜、コンビニまで散歩に出かけた。
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