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05 イタタマレナイ
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村を一回りしてきて、顔の赤みと火照りが取れた気がする。
それにしても、村の状態がひど過ぎる。
村を守るはずの柵も、あっちこっち穴だらけ。
各家の周りの、排水を流すための溝も埋まりかけている。
人手が足りなかったのか、家も傾いで建付けが悪そうだ。
収穫後の片付けもおざなりで、ウチの村と同じ様に冬撒き用の種もみも無いのだとわかった。
せめて藁ぐらいはまとめておこうと、少しだけ畑に入る。
目につく分を手早くまとめ、ある程度の山にしておいて置く。
ここに春まで残っても、何か出来そうなことは。……ないな。
せっせと畑で作業していると、村の人が呼びに来た。
凄く恐縮されるが、色々と大変でしたねと、声をかけると泣かれてしまった。
いやっあのっ。
オレ、ナニモワルイコト、シテナイヨ?
泣いている人に引っ張られて、小さくなりながら皆の集まっている所に戻る。
荷馬車は荷物でいっぱいになっている。ついでに人もいっぱいだ。
ドウシヨウ、イタタマレナイ。
「トムぅーお前何したんだよー。おばちゃん泣かしてー。」
「いやっ! あのっ、大変だっただろうなって思ってっ!」
「思って?」
「大変でしたねって、言ったら泣かれた……んだよ?」
ギルに問い詰められて、やり取りをそのまま正直に話す。
怖がられて子供に泣かれるのはよくあったが、大人に泣かれてしまうほどだったんなんて……悲しい。
どうしようもなくなって、呼びに来てくれた人に頭を下げる。
「あの、怖がらせたのなら、申し訳ない……。」
「違うのよ、大変だったのは、そっちも変わらないでしょう? なのに。」
「ごめんなさいね、駄目ね。おばちゃん、ちょっと、優しい言葉が嬉しかったのよ。」
泣きながらニコリと笑ってくれる人に、ついつられて涙が出そうになる。
「いや、本当に申し訳ない。ヒゲが無かったら、もう少しマシだったかも。」
「いやいや、どっちにしろ見た目悪人だから。」
人が一生懸命謝ってるのに、台無しにするクソギルめっ。
ギルの親父さんがまた笑い始めた。この人笑い上戸かっ。
「さあ、皆さん、そろそろ出発しましょう。ウチの村で少しだけですが、炊き出しの用意をしています。もう少しだけ、頑張ってください。」
アルバートが助け船を出してくれた。ええ子に育ったなぁ。
「ギル兄、笑う体力あるなら、もっと荷物持ってください。あとトム兄、そのくちゃくちゃになった藁も持っていくの?」
「へ?」
引っ張られて慌てた俺は、畑でまとめていた藁束を持ってきてしまった様だ。
置き場所をわたわたと探していたら、荷物を持っていない若い子が笑いながら受け取った。
「私達は狩りに行った父さん達を待つから、これはこっちで使わせてもらうね。」
そう言って、狩人の格好の娘さんが藁束を振る。
その言葉にうんと頷き、目の前のおばあさんの荷物をひょいと担ぐ。
片手分は開けておかないといけないから、俺が持てるのはこれぐらいか。
最終的に狩人家族五世帯と、鍛冶屋の男が残る事になった。
鍛冶屋の父親は、こっちの村に移動するのを最後まで渋っていた。
嫁と孫が町に行っているので、帰ってくるまでは村で待ちたいのだろう。
こっちも村長紹介での出稼ぎ組だった。
子沢山の家は出産の為に、親兄弟のいる町に行っていて村にはいない。
無事に生まれていると良いんだが。
二女さんが村に帰ってくるのは、おそらくだいぶ先になるだろう。
まだまだ十三歳なのに、身売りを決心したそうだ。
なんだそれ。健気すぎんだろ。
まさか自分達の年で子供が出来るとは、親も思ってなかったんだろうなぁ。
一番上が十七歳で、結婚したのが二年前。
すげえな十五で嫁に出したとは。
隣を歩くおばあさんの話を聞きながら、町に行った隣村の人達の話を聞く。
初めのうちは出稼ぎだと信じていたらしい。
で、村長に聞いた勤め先をたずねてみたら、そんな人はいないと。
そこで村長を問い詰めてみたら、人買いに売ってたと。
犯罪者じゃ無くても引き取るのはオカシイってんで、人買い屋に確認したら、村長が罪状つけて引き渡してたと。
全部の罪状が「村長宅からの盗難」って。
村の人達の様子を見て、ヤバいと思ったらしくその人買い屋は姿をくらましちまったと。
控えは村長が持ってたはずだが、どこに隠したのか言わないまま、役人が全部持って行ったと。
なんだそれ。
びっくりするほど隣村の村長が、クズ野郎だった。
「どうにか、どうにか探し出したいもんだ。」
溜息と悔しさが口から出てしまう。
おばあさんはポロポロと泣きながら、うんうんと頷く。
他の人達も、荷馬車の後ろからしょんぼりしながら歩いている。
今、俺にできる事なんて、大してないんだと打ちのめされる。
それでも周囲を警戒しながら、ゆっくりと進む。
少しでも、何かできりゃぁいいんだが。
「よう親友、なんで今度はウチの義母を泣かせてんだ?」
「へ?」
一緒に話を聞いていたはずのギルが、ニヤニヤしながら荷物を抱えて寄ってきた。
「えっ?」
改めて顔を見て、ハッと気が付いた。
そういやこのおばあさん、ギルの嫁の母ちゃん……。
もうヤダ。恥ずかしい。
それにしても、村の状態がひど過ぎる。
村を守るはずの柵も、あっちこっち穴だらけ。
各家の周りの、排水を流すための溝も埋まりかけている。
人手が足りなかったのか、家も傾いで建付けが悪そうだ。
収穫後の片付けもおざなりで、ウチの村と同じ様に冬撒き用の種もみも無いのだとわかった。
せめて藁ぐらいはまとめておこうと、少しだけ畑に入る。
目につく分を手早くまとめ、ある程度の山にしておいて置く。
ここに春まで残っても、何か出来そうなことは。……ないな。
せっせと畑で作業していると、村の人が呼びに来た。
凄く恐縮されるが、色々と大変でしたねと、声をかけると泣かれてしまった。
いやっあのっ。
オレ、ナニモワルイコト、シテナイヨ?
泣いている人に引っ張られて、小さくなりながら皆の集まっている所に戻る。
荷馬車は荷物でいっぱいになっている。ついでに人もいっぱいだ。
ドウシヨウ、イタタマレナイ。
「トムぅーお前何したんだよー。おばちゃん泣かしてー。」
「いやっ! あのっ、大変だっただろうなって思ってっ!」
「思って?」
「大変でしたねって、言ったら泣かれた……んだよ?」
ギルに問い詰められて、やり取りをそのまま正直に話す。
怖がられて子供に泣かれるのはよくあったが、大人に泣かれてしまうほどだったんなんて……悲しい。
どうしようもなくなって、呼びに来てくれた人に頭を下げる。
「あの、怖がらせたのなら、申し訳ない……。」
「違うのよ、大変だったのは、そっちも変わらないでしょう? なのに。」
「ごめんなさいね、駄目ね。おばちゃん、ちょっと、優しい言葉が嬉しかったのよ。」
泣きながらニコリと笑ってくれる人に、ついつられて涙が出そうになる。
「いや、本当に申し訳ない。ヒゲが無かったら、もう少しマシだったかも。」
「いやいや、どっちにしろ見た目悪人だから。」
人が一生懸命謝ってるのに、台無しにするクソギルめっ。
ギルの親父さんがまた笑い始めた。この人笑い上戸かっ。
「さあ、皆さん、そろそろ出発しましょう。ウチの村で少しだけですが、炊き出しの用意をしています。もう少しだけ、頑張ってください。」
アルバートが助け船を出してくれた。ええ子に育ったなぁ。
「ギル兄、笑う体力あるなら、もっと荷物持ってください。あとトム兄、そのくちゃくちゃになった藁も持っていくの?」
「へ?」
引っ張られて慌てた俺は、畑でまとめていた藁束を持ってきてしまった様だ。
置き場所をわたわたと探していたら、荷物を持っていない若い子が笑いながら受け取った。
「私達は狩りに行った父さん達を待つから、これはこっちで使わせてもらうね。」
そう言って、狩人の格好の娘さんが藁束を振る。
その言葉にうんと頷き、目の前のおばあさんの荷物をひょいと担ぐ。
片手分は開けておかないといけないから、俺が持てるのはこれぐらいか。
最終的に狩人家族五世帯と、鍛冶屋の男が残る事になった。
鍛冶屋の父親は、こっちの村に移動するのを最後まで渋っていた。
嫁と孫が町に行っているので、帰ってくるまでは村で待ちたいのだろう。
こっちも村長紹介での出稼ぎ組だった。
子沢山の家は出産の為に、親兄弟のいる町に行っていて村にはいない。
無事に生まれていると良いんだが。
二女さんが村に帰ってくるのは、おそらくだいぶ先になるだろう。
まだまだ十三歳なのに、身売りを決心したそうだ。
なんだそれ。健気すぎんだろ。
まさか自分達の年で子供が出来るとは、親も思ってなかったんだろうなぁ。
一番上が十七歳で、結婚したのが二年前。
すげえな十五で嫁に出したとは。
隣を歩くおばあさんの話を聞きながら、町に行った隣村の人達の話を聞く。
初めのうちは出稼ぎだと信じていたらしい。
で、村長に聞いた勤め先をたずねてみたら、そんな人はいないと。
そこで村長を問い詰めてみたら、人買いに売ってたと。
犯罪者じゃ無くても引き取るのはオカシイってんで、人買い屋に確認したら、村長が罪状つけて引き渡してたと。
全部の罪状が「村長宅からの盗難」って。
村の人達の様子を見て、ヤバいと思ったらしくその人買い屋は姿をくらましちまったと。
控えは村長が持ってたはずだが、どこに隠したのか言わないまま、役人が全部持って行ったと。
なんだそれ。
びっくりするほど隣村の村長が、クズ野郎だった。
「どうにか、どうにか探し出したいもんだ。」
溜息と悔しさが口から出てしまう。
おばあさんはポロポロと泣きながら、うんうんと頷く。
他の人達も、荷馬車の後ろからしょんぼりしながら歩いている。
今、俺にできる事なんて、大してないんだと打ちのめされる。
それでも周囲を警戒しながら、ゆっくりと進む。
少しでも、何かできりゃぁいいんだが。
「よう親友、なんで今度はウチの義母を泣かせてんだ?」
「へ?」
一緒に話を聞いていたはずのギルが、ニヤニヤしながら荷物を抱えて寄ってきた。
「えっ?」
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もうヤダ。恥ずかしい。
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