貧乏から貧困、その先。

護茶丸夫

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09 混ざっちゃいけない話

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 青白い顔のまま、青年達は決心したように話す。

「裏通りにもいなかった。」
「表に立ってる人に聞いたけど、隣村の人はいないって。」
「最年長は五十五で、一番下が十五って言ってた。」

 こっそりきっちり確認してきたようだ。
 ジト目で青年達を見る少女達。

「ありがとう、気まずかっただろ。でも、すごい助かった。一番大切な情報だよ。」
「そうだよ、勇気あるな、お前ら。偉いぞ。」

 聞いた内容を、こそこそと囁き合う男達。
 これは、混ざっちゃいけない話だ。
 間違いなく、マリーに怒られるやつだ。

「五十五……すげえな……。」
「……客がいるのか。恐ろしいな。」
「現役ってのがすごいぞ。婆さんじゃねえか。」
「いや、その前に、成人前の子供はダメじゃないか?」
「買うやついるのか? 子供相手だぜ?」
「昔は十歳以下もいたぞ、五十年前の話だ。」
「うえー死んだ爺さんの言ってたの、本当だったのかよ。」
「あの頃はいくさ続きで、戻って来たのが少なかったからなぁ。」

 おいおい、女達の目つきが鋭くなってきたぜ。
 みんな、気が付いてくれ! 俺はもう怖くて限界だ!
 兄貴! アルバート! こんな時に目を逸らさないでくれっ!

 オロオロしていたら御者をしていた鍛冶屋が、頭を掻いて話し始めた。
 よかった! 助かった。

「あちこち声かけて聞いてきたが、隣村の出稼ぎ組は、どうも王都に連れて行かれたらしいぞ。村の人間が、何人か探しに来たから覚えてるって、奴が多かったよ。」
「聞いた話じゃぁ、王都の様子はあまり良くないな。人が多すぎて、町に戻って来たって話もあったぜ。」
「隣村の何人かとは、一応会ったよ。追いかけたくても金が無いから、何人かが金を集めて向かったそうだ。合流出来たら、一度村に戻るつもりらしい。……それまで何とか食いつなぐとは言ってたが。」

 一気に話した後に、頭を横に振り溜息をついて「どうだろうな」とつぶやく鍛冶屋に不安になる。

「どうかしたのか?」

 恐る恐る聞いてみた。

「あいつら物乞いと日雇いをしてるんだが、年寄り連中と女達の話が出なかったんだ。無事だと良いんだが。」

 隣村の何人かが鍛冶屋の周りで、詳しい話を聞き始めた。
 若者達は、外で待っている仲間達に話をしてくると出て行った。
 隣の部屋のベッドの上で話を聞いていた、隣村の婆さんは、うつろな目で神に祈っている。
 家族全員奉公と出稼ぎって、ハナシだったもんなぁ。
 見ていられなくて視線をずらすと、村長に巻かれている布の面積が減っている事に気が付いた。

「なぁ、アルバート。兄貴の怪我の具合はどうなんだ? なんだか良くなってる気がするんだが。」
「治りが早いでしょう? 神官様の祈り付きの、薬草茶の効果ですよ。これも商会から譲って貰ったんですよ。」
「神官すげぇな。」
「たくさん飲んでも、効果は変わらないって言ってましたが。でも、父さんは煎じた後の、葉っぱまで食べてますよ。」
「大丈夫なのか? いや、美味いのか?」
「試しに飲んでみます? ビックリするほど不味いですよ。」
「うわぁ。遠慮しとくぜ。」

 それからは、交代で家の地下掘りと隠れて木の伐採だ。
 狩りをしたくても、少し遠出をしないと獲物はいない。
 獲物がいなくなって良かったのは、もっと森の奥に入らない限り、大型が出る心配はなくなった。
 いや、大型が近寄りやすくなったのか?
 遠出をすればまだ獲物は捕れるから、きっと大丈夫。だと思いたい。

「なぁギル、大型がこっちまで来ると思うか?」
「んー? 来ないんじゃないかなぁ。山向こうには人里もないし、まだ獲物はあっち側にいるだろ?」
「だと良いが。気になるな。」
「親父達に相談してみようぜ、これからの狩場も考えないといけないしさ。」
「そうだな、遠出組と近場の罠組の振り分けも、しないとな。」
「雪が深くなる前に、往復できるように考えておいてくれよ。」
「ああ、そうだな。って、お前も考えろよっ。」
「えー。無理。」

 村外れの地下貯蔵庫の上に、人が二人眠れるほどの大きさで祠を作った。
 祠の周りには、大型用の罠で囲んである。
 目印があるので、夜でなければ人がかかることは無い。
 まぁその目印も、理解できなければ子供のいたずらにしか見えないだろうが。
 村外の人間はわからないだろうが、それは盗人だろうから仕方がない。
 人がかからない事を祈るしかない。

 隠れ家用に村から離れた場所で、小屋が作れるくらいの空地を作る。
 役人が入ってこれない深さで、大型の獣と遭遇しない程度の位置。
 隣村との中間あたりに、小さな小屋を少しずつ組み立てる。
 出来るだけ目立たない様に小さく、いくつも用意した。

 冬の薪用に枝も集めたいが、次は地下の補強用の木材が先決だ。
 切り株は、掘り返せそうなもの以外は、杭のかわりに縄をかけて罠にする。

 引っこ抜いた切り株は、木のにおいの強いもの以外は、食料になる物もある。
 持って帰って小さい板状にして、並べて干しておけばいい。
 どこからどう見ても、食料には見えないが役人を誤魔化すのにはいい。
 食べる前に、一週間ほどまめに水を取り替えてニオイを抜けば、煮炊きで食べられるぐらいにはえぐみが取れる。

 クッソ不味いが、無いよりはマシ程度だ。
 食べる事にならなければいいんだが。
 どうやっても食うと必ず腹を壊してしまう、「土」を食べるのはだけは避けたい。
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