もふもふの国の聖女様

護茶丸夫

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顔合わせと加護 2

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「わたくしも早めに、中庭に行く事はできるのかしら?」

 少しでも早く、沢山の聖獣様にお会いしたい!
 そしてあの至福の時間を、再び味わいたいのですよ!
 夢にまで見た幸せ。
 あの瞬間でなら、息絶えようとも悔いはないっ。
 いや、もっと聖獣様がいるなら悔いは残るな。
 私のモフモフタイムを少しでも早く!

「もちろん、出来ますよ。でもそうなりますと、マーガレット様がお一人で移動する事になりますね。」 
「昨日で慣れているはずだから、きっと大丈夫。かもしれない。」

 侍女二人は一応笑顔ではあったが、チラチラとベロニカの様子をうかがう。
 ポンちゃんの顔は初対面では誰もが怖がるが、今日は顔はともかく体が大きな聖獣も来る。
 この囲まれても平気そうなご令嬢はともかく、もう一人は無理かもしれない。
 できれば昨日のように一緒にいれば、何とかなるかも。なって欲しい。
 そんな気持ちを込めて、呑気にお茶をしている令嬢を見る。

「そう、ね。もしかしたら、まだ不安をお持ちかもしれないし……。ご一緒したほうが……。」

 そうよ! 昨日、お友達になったのよ!
 私っ、可愛い妖精さんとお友達になれたのよ!
 これはもう常に一緒に移動しないと!

 さすがにトイレまで一緒って事は、ココでは無いけどもっ。
 こっちでもぼっち歴が長いから、と、友達とか、うまくお付き合い、できるかな。

 友達作る時間もきっかけもなかったし。はぁ。
 出来上がってるグループに入るのって、厳しいもの。
 子供の時にお茶会に出して貰えなかったのが、痛かったなぁ。

 いやいや、弱気になっちゃ駄目。
 頑張れ私!

「うん! 女は度胸! マーガレット様とご一緒させていただくわ!」

 ふんすとばかりに意気込むベロニカに、生暖かい目で微笑む二人。
 ひとまず、早めに中庭に行って見ないかと誘ってみる事となる。

「ではわたしが、マーガレット様にお聞きしてまいります。」

 ソフィアはそう言って、食後の食器を乗せたカートを押し、チラリとルーナを見やり部屋を出た。
 ルーナの方は口笛を吹きそうな顔で、窓の外を見ている。
 手持ち無沙汰となったベロニカは、自分の手荷物をまだ開けていない事を思い出した。


「ねぇルーナ、わたくしの持ってきた荷物はどこかしら?」
「ドレス類はこちらのドアが衣装室。その中の小物用棚の前に、鞄と荷物が置いてある。念のため鞄は手付かず。」
「ただ、神殿に運び入れた時に検査はした。それはご了承ください。」

 あら。ルーナの顔が「で、開けようか?」って言ってる気がするわ。
 この子、意外と表情豊かよね。
 そういえば、脱いだはずのドレスとアクセサリーは、もう届いてるのかな?

「そう、ありがとう。ねえ、この部屋で荷物は広げて良いのかしら? それともこの後、部屋を移るのかしら?」
「聖獣様の加護を受けた後に、部屋が決まる。広げるならその時がラク。主に私達が。あと、さっき脱いだドレス類は洗濯してから届く予定。装備品は荷物と一緒に置いてある。」

 うん。直球で正直に伝えてくるわね。
 恐らくソフィアが気にしていたのは、この「直球」ね。

「ふふっ。じゃぁ、後にしましょうか。ただ、鞄の中に日記が入ってるの。それだけ取り出してもいいかしら?」
「わかった。鞄を持ってくるので、必要な物を教えて。ください。」
「うふふ。口調はルーナの楽にしていいわ。率直な喋り方は嫌いじゃないもの。」
「! 助かる! ベロニカ様は良いご令嬢。」

 うきうきとドアの中に入り、ポテポテと重いであろう鞄を持ってきた。
 それでも平気そうにしてる顔が微笑ましい。
 ベロニカは、ほんのりと胸が暖かくなるのを感じた。

「ルーナも、一生懸命な良い侍女ね。慣れない事に挑戦するのは、本当に大変だもの。」

 手元まで持ってきてくれた鞄から、日記を取り出しながら話す。
 あと、ペンは備え付けがあるからいいか。
 やりたい事の残りは「確認」かな。

「敬語は難しい。本当は裏方を希望して、駄目だった。」
「そうなの? 裏方の方が大変そうなのに。」

(まさか喋るのが面倒だからって、理由じゃないでしょうね?)

「その通り。面倒くさい。」

(そっか、裏方の仕事は何を希望してたの?)

「掃除担当。」

(どうして? 掃除なんて大変よ?)

「色んな部屋が見れて楽しい。あと意外なものを見つける事もできる。」

(ほうほう、例えば?)

「ベッドの下にはお宝がいっぱい。」

(それって、大人なお宝ね?)

「そう。それはちょっとしたネタになる。」
「なるほどなるほど。」(思ってたより、はっきり伝わるのね。)
「なに、が? あっ!」

 しまった!の顔で固まっているルーナに、悪い顔で答えるベロニカ。

「昨日から違和感があったのは、このせいだったのね。なんとなく伝わるどころじゃないわね。」

 慌てたルーナが首をかしげ、頭にコブシを乗せる。
 何かを思い出そうとしてるのかと、しばらく様子を見る事に。

「てへっ。ぺろ?」

(そうじゃない。こう。)

 そのあとはソフィアが戻ってくるまで、二人で「てへぺろ」しまくった。後悔はしていない。
 もちろん二人とも怒られた。テヘペロ。
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