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顔合わせと加護 6
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結局あのあと、集まってきた聖獣様に囲まれて良いようにされた。
美人な馬な聖獣様から始まり、あっという間にポンちゃん以外の犬の聖獣様やキツネやタヌキ、牛やトラオオカミ、何故か馬と同じ大きさのカピバラさんとそのアタマの乗った猫並みの大きさのハムスター。
見た瞬間からテンションが上がって、我を忘れてしまった。
三百六十度全てモフ。
しかも向こうからグイグイ引っ付いてくる。
天国。
マジ天国に来たと思った。
思ったんだよ?
一斉に体中のにおいを嗅がれ、頭や腕や足を舐められ甘噛みされ。
抵抗も出来ない状態で、もみくちゃ。
いや、楽しかったけどさ。
力加減が、こう。マチマチで。
気がついたら地面に転がって草まみれになってた。
目の前には青い空と、緑の木々だけが映って。
仰向けに寝転がりながら声がする方を見るとマーガレットがいた。
優雅に椅子に座って、某アニメの乙事主様並みのデカい綺麗なイノシシの聖獣様と語らっている。
あるぇ? なんでぇ?
私なんで、ぐしょぐしょで転がってるのに、あの子無事なのぉ?
私だけ襲われた後みたいになってるんだけど、気のせい?
気のせいではなく、襲われた気分だけども。
天国で襲われるとか、ご褒美なのか罰なのか。
侍女の皆さんはマーガレットの周りに避難していて、私の横には謎のモフモフが横たわっている。
近すぎて全体が見えない。
背中?だけ。いや、長い尻尾が揺れてるのも見える。
ダレコレ?
『気が付いたかの? お前に加護を渡す事になった者だ。さ、名前をつけてもよいぞ?』
頭の中に、女性らしい可愛らしい声が聞こえた。
不思議現象だ。
でも動きたくない。
このままお返事良いかしら?
『立てるか? ふふふ。みな、お前の反応が楽しくてはしゃいでしまった。』
「はう? だれ?」
誰かにごろりと、体をうつ伏せにひっくりかえされた。
せっかくの好意に、よいっしょっと言いながら立ち上がる。
目の前には超大型犬並みの大きなにゃんこ。
白地にキジトラハチワレの、美しいにゃんこ様。
すらりとした体の線に、先端は真っ黒なシマシマ模様の長いしっぽがゆらりゆらりと揺れる。
薄くシマ模様の入ったタキシードを着ているような、胸元と両手足の先の眩しい白さ。
女性らしいほっそりとした顔と体つきが、とても美人さん。
その美人の猫さんの大きな緑色の瞳が、そっと細められて優しい顔つきになる。
『さて、みなには『穴あき』だとか『半仮面』だの、少々嬉しくないよび方をされているな。』
にゃごにゃご聞こえるが、美しい声は頭の中に響いてくる。
天国だからね、何でもアリだね。
さすてん。
「そうなの? 半仮面はハチワレだからかしらね。」
『ほう、ハチワレとは?』
「ハチって数字を漢字にすると、こう貴方の顔の柄の様に別れるから、八の字分かれでハチワレね。」
『かんじ、はちのじは知らないが、勢いのある呼び名だの。』
「いやいや、それは名前でなくて模様や柄の呼び方だよ。貴方にはもっとこう、うん。凛とした名前が似合うわ。」
うーん、どんな名前が良いんだろう?
「あれ? でもなんで『穴あき』なの?」
『これが穴が開いて見えるからと、言われてな。』
そう猫さんが言いながら、体の向きを変え右半身を見せる。
綺麗に縞が入っているの右足の付け根に、白く丸い模様がぽつんと一つだけ。
黒い縞の服に、穴が開いた様に見えなくもない。
ここだけ白丸なんて、不思議だ。
「ふむ、なるほど、丸い模様がそう見えたのね。」
「あとは、綺麗な緑の瞳ね。新緑の緑。」
ふむん。
にゃんこさん、上品そうな佇まいにゆっくりと動く優美さ。
何より謎の気品が。
上位貴族でもあんまり感じなかった気品。
でもよくある柄が、とても親しみを感じる。
高貴な感じの名前に素朴さを感じる様に。
うーん。
あまり命名に自信は無いけども。
ありきたりでかぶってしまっていないか、ちょっと心配だけど。
「名前はアーデルハイド、姓が若草。あとね、愛称はハイジ。」
『ほぉ! 呼び名だけでなく、愛称まであるのか。』
「そうね、『アーデルハイド・若草』でどうかな? 普段はハイジで呼ぶよ。」
『ふふふ。『アーデルハイド・わかくさ』か。こそばゆい。嬉しい。』
猫さんはふわりふわりと長い尻尾をゆっくりと動かし、得意そうに顎をツンっと上げた。
『感謝するぞぇ、良い響きの名前じゃ。』
「よろしくね、ハイジちゃん。」
『こちらこそ宜しく。ベロニカ。』
ハイジさんは目を閉じ、そっと私のおでこのあたりを鼻で触れる。
ふおおおおおお!
これはモフらねば!
『いや、今は良い。』
きっぱり断ってきましたよ!
(えー。なんでー、せっかく復活したのにぃー。)
(ハイジたん、私の事嫌いなのー?)
『そうではない。ほれ、みなが待っておるぞ。早く席につくと良い。』
「ほ?」
前足をたしんと地面につけ、顔を横に向ける。
そのしぐさもまた可愛い。
大きなにゃんこさん、どうやっても可愛いわぁ。
目の先を追うと、テーブルに座るマーガレットと侍女さん達が大きな白いイノシシと一緒にこちらを見ていた。
あら、もしかして待っててくれたのかな。
美人な馬な聖獣様から始まり、あっという間にポンちゃん以外の犬の聖獣様やキツネやタヌキ、牛やトラオオカミ、何故か馬と同じ大きさのカピバラさんとそのアタマの乗った猫並みの大きさのハムスター。
見た瞬間からテンションが上がって、我を忘れてしまった。
三百六十度全てモフ。
しかも向こうからグイグイ引っ付いてくる。
天国。
マジ天国に来たと思った。
思ったんだよ?
一斉に体中のにおいを嗅がれ、頭や腕や足を舐められ甘噛みされ。
抵抗も出来ない状態で、もみくちゃ。
いや、楽しかったけどさ。
力加減が、こう。マチマチで。
気がついたら地面に転がって草まみれになってた。
目の前には青い空と、緑の木々だけが映って。
仰向けに寝転がりながら声がする方を見るとマーガレットがいた。
優雅に椅子に座って、某アニメの乙事主様並みのデカい綺麗なイノシシの聖獣様と語らっている。
あるぇ? なんでぇ?
私なんで、ぐしょぐしょで転がってるのに、あの子無事なのぉ?
私だけ襲われた後みたいになってるんだけど、気のせい?
気のせいではなく、襲われた気分だけども。
天国で襲われるとか、ご褒美なのか罰なのか。
侍女の皆さんはマーガレットの周りに避難していて、私の横には謎のモフモフが横たわっている。
近すぎて全体が見えない。
背中?だけ。いや、長い尻尾が揺れてるのも見える。
ダレコレ?
『気が付いたかの? お前に加護を渡す事になった者だ。さ、名前をつけてもよいぞ?』
頭の中に、女性らしい可愛らしい声が聞こえた。
不思議現象だ。
でも動きたくない。
このままお返事良いかしら?
『立てるか? ふふふ。みな、お前の反応が楽しくてはしゃいでしまった。』
「はう? だれ?」
誰かにごろりと、体をうつ伏せにひっくりかえされた。
せっかくの好意に、よいっしょっと言いながら立ち上がる。
目の前には超大型犬並みの大きなにゃんこ。
白地にキジトラハチワレの、美しいにゃんこ様。
すらりとした体の線に、先端は真っ黒なシマシマ模様の長いしっぽがゆらりゆらりと揺れる。
薄くシマ模様の入ったタキシードを着ているような、胸元と両手足の先の眩しい白さ。
女性らしいほっそりとした顔と体つきが、とても美人さん。
その美人の猫さんの大きな緑色の瞳が、そっと細められて優しい顔つきになる。
『さて、みなには『穴あき』だとか『半仮面』だの、少々嬉しくないよび方をされているな。』
にゃごにゃご聞こえるが、美しい声は頭の中に響いてくる。
天国だからね、何でもアリだね。
さすてん。
「そうなの? 半仮面はハチワレだからかしらね。」
『ほう、ハチワレとは?』
「ハチって数字を漢字にすると、こう貴方の顔の柄の様に別れるから、八の字分かれでハチワレね。」
『かんじ、はちのじは知らないが、勢いのある呼び名だの。』
「いやいや、それは名前でなくて模様や柄の呼び方だよ。貴方にはもっとこう、うん。凛とした名前が似合うわ。」
うーん、どんな名前が良いんだろう?
「あれ? でもなんで『穴あき』なの?」
『これが穴が開いて見えるからと、言われてな。』
そう猫さんが言いながら、体の向きを変え右半身を見せる。
綺麗に縞が入っているの右足の付け根に、白く丸い模様がぽつんと一つだけ。
黒い縞の服に、穴が開いた様に見えなくもない。
ここだけ白丸なんて、不思議だ。
「ふむ、なるほど、丸い模様がそう見えたのね。」
「あとは、綺麗な緑の瞳ね。新緑の緑。」
ふむん。
にゃんこさん、上品そうな佇まいにゆっくりと動く優美さ。
何より謎の気品が。
上位貴族でもあんまり感じなかった気品。
でもよくある柄が、とても親しみを感じる。
高貴な感じの名前に素朴さを感じる様に。
うーん。
あまり命名に自信は無いけども。
ありきたりでかぶってしまっていないか、ちょっと心配だけど。
「名前はアーデルハイド、姓が若草。あとね、愛称はハイジ。」
『ほぉ! 呼び名だけでなく、愛称まであるのか。』
「そうね、『アーデルハイド・若草』でどうかな? 普段はハイジで呼ぶよ。」
『ふふふ。『アーデルハイド・わかくさ』か。こそばゆい。嬉しい。』
猫さんはふわりふわりと長い尻尾をゆっくりと動かし、得意そうに顎をツンっと上げた。
『感謝するぞぇ、良い響きの名前じゃ。』
「よろしくね、ハイジちゃん。」
『こちらこそ宜しく。ベロニカ。』
ハイジさんは目を閉じ、そっと私のおでこのあたりを鼻で触れる。
ふおおおおおお!
これはモフらねば!
『いや、今は良い。』
きっぱり断ってきましたよ!
(えー。なんでー、せっかく復活したのにぃー。)
(ハイジたん、私の事嫌いなのー?)
『そうではない。ほれ、みなが待っておるぞ。早く席につくと良い。』
「ほ?」
前足をたしんと地面につけ、顔を横に向ける。
そのしぐさもまた可愛い。
大きなにゃんこさん、どうやっても可愛いわぁ。
目の先を追うと、テーブルに座るマーガレットと侍女さん達が大きな白いイノシシと一緒にこちらを見ていた。
あら、もしかして待っててくれたのかな。
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