転生したけど、前世の記憶いる?

護茶丸夫

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優しい家族 4

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 嵐のような混乱の中、冷静に動いたのは笑顔のマシューだった。

 遅ればせながら父の膝から降り、てくてくと母に近寄り、その膝上でしゃくり上げる姉を撫でながら「いいこいいこ」して、寝かしつけたマシュー君の活躍は今夜の使用人たちの日誌に書かれる事だろう。
 やり遂げたマシューは得意げに父の膝に戻る。
 その顔につい、アイザックはサムズアップしてしまうが、意味は分からないまでも、なんとなく同じように返す賢いマシュー君さんさい。親指見せるだけで簡単だからね、真似しちゃうよね。

 ひとまず落ち着いた形になり、今後を話し合う事に決めた一同。
 泣き疲れてぐったりとしたハリエットを、膝の上で大切に抱きそっと頭を撫でる母ブリジット。

 うなされて寝ている時に、よく意味のわからない言葉を言っていたのを息子に説明させていたが、まさか自分の娘が『悪役令嬢』と言い出すとは思わなかった。

「また、王家の誰かと婚約させられるのかしら。この子が酷い扱いをされるなんて嫌よ」

 ブリジットの椅子へそっと近寄り、その肩を優しく抱いた祖母のエリザベートは優しく声をかける。

「今は爵位も低いし、あれからまだ十年も経ってないわ。名誉回復もまだして貰ってもいないのに、これ以上の無理強いはしてこないわよ」
「なぁに、次に無理を言って来たときは何が何でも断るさ!」

 祖父アルバートは励ますように大きめの声で、娘のつぶやきを否定した。
 そのまま近づき、眠ったままのハリエットを抱き上げ眩しい物を見るように、優しく微笑む。

「アイザックがいてくれて助かった。この子一人では、過去の自分との違いに耐えきれるか分からない。私達では理解しきれなかっただろう。」

 笑顔で感謝の言葉を伝えると、頷いた家族は皆同じようにアイザックへと暖かい言葉と感謝を伝える。妹を落ち着かせる事が出来ず悔しい思いをしていたアイザックは、少しだけ安心し、こそばゆい気持ちでいっぱいになった。

「でも僕は、結局、何も出来ませんでした。ハティが泣くのを止められませんでした。ごめんなさい。」

 安心したおかげで、胸の中のもやっとした気持ちを素直に謝ることができたアイザック。
 彼もまた前世持ちではあったが、過保護な祖父母と大らかな両親を信じたことで早い時期に伝える事が出来た。
 正直打ち明けるのは恐ろしかったが、それ以上に前世の記憶の中の人々より、はるかに善良で愛情を素直に表現する、今の家族を騙すような行動はどうしても出来なかった。

 過去世はやりきれない事だらけだった。
 おとなしい人間から先に搾取されていき、守ろうとすると更に攻撃され、弱い人間は声を上げる事さえ罪のような世界だった。
 それでも多少は優しい人はいたし、自身も親切な人間であろうと努力した。しかし心無い言葉や行動に翻弄され、傷つき動けず声も出せなくなり、生きるため変わってしまった人達も多く見た。
 一人でもだけでも耐える事で、いつかその人達の勇気を出すきっかけになればと、信念を曲げなかった。
 それが、突然事故に見せかけて殺されてしまった。
 一人ぼっちで頑張る自分の限界でもあったし、次の生があればもう少し誰かと協力していこう。そう考えながら目を閉じ、気が付けば今までとは全く違う幼児の姿になっていた。

 やり直し、とは違う新しい人生ならば心残りだった事をやってみようと、様子を見ながら生活していた。
 打ち明けようとは思っていなかったが、自分が思っていた以上に愛情に飢えていたのかもしれない。もしくは、これほどの愛情を受けるとは思っていなかったのかもしれない。
 ほんの少し時間はかかったが(子供の体に引っ張られていたのかもしれない)今世の家族に受け入れられたい気持ちと、人の良心を信じてみたい気持ちが、これ以上元の少年とは違うという負い目を押さえこんだ。

 真っ直ぐな気持ちには真っ直ぐに返したい。
 結局、生まれ変わっても変わらない自身の根っこの部分。
 四歳になったある日祖父母と両親に、まだたどたどしい口調で、自分の前世を打ち明けた。

 結果、あっけない物だった。
 前世持ちはよくある事で、亡くなった曾祖母もまた、そうだったと教えてもらった。
 大きくなると記憶が薄れていくが、性質はそんなに変わらない事。
 曾祖母の周りは破天荒な彼女にずっと振り回されていた。それもまた楽しい思い出だと。

 ハリエットほどではないが、自分も涙を流した。嬉しい涙なんて、何十年ぶりだろうと思いながら。
 それからは、大人っぽくしっかりした子供として、今世の事を学び素直に成長していった。
 妹や弟が出来ても、相変わらず可愛い子供扱いで、何度も気恥ずかしい思いもしたが。
 しばらくすると五歳になる幼い妹が熱を出し、熱に浮かされ前世の情報をぽろぽろと口に出すと、それまでののんびりした生活がちょっとだけ緊張感のあるものに変化した。





コメディタグつけたとたんにコレとか。
17時に間に合わなかったので、すぐ投稿します。
はーい、誤字脱字見つけ次第直していくよー。
うん、UPする前に確認はしたけど、時間空けないと見つけられない事もあるよねー。

いやぁBGMって重要なものだったんだなぁ(シミジミ
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