おちゆく先に

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38話

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 カザフ要塞都市に着いたのは日が沈み始めた頃合いであった。

 湿地帯から独りで歩いて帰っている途中、ジグレイドはサルシャを失ったことにより喪失感を味わっていた。
 行きはサルシャと戦場の狼の面々を加えて数十人で湿地帯へ向かっていたのだが、帰りはジグレイド独りっきり・・・しかもサルシャとは何が起ころうとも二度と会えないのだ。


 魔物にも出会わずにカザフ要塞都市に着いたジグレイドは早々に前回泊まっていた宿に向かった。

 「おや、君はいつぞやの傭兵さんじゃないのかい?おかえりなさい」
 「あ、はい。ただいまです・・・一部屋お願いします」
 「・・・あいよ、一部屋だね。食事はどうするんだい?」
 「2食、できれば部屋で食べたいです」
 「わかったよ、お湯は前回と同じかい?」
 「はい、お願いします」
 「なら角部屋の203号室だよ」
 戦争に行く前はパートナーがいたことを知っている女将は事情を察知して何も言わずにいてくれた。

 その後、部屋に入ったジグレイドは部屋から一歩も出なくなり、完全に引きこもりになったのだった。
 引きこもっている間の料金は戦争での活躍(殆ど竜人についての情報だが)でお金を沢山持っていたため滞納することはなかった。


 およそ10日間引きこもってうじうじしていたが『このままでは仇が討てない!』とやっと思い当り、外に出る決心がついた。
 やっと部屋から出てきたジグレイドを女将はいつも通り接してくれた。

 「おや?もう起きたのかい?まだ食事の準備はまだ出来ていないから暇だったら外でも散歩してきなよ」
 優しい女将の言う通り朝の散歩をしてみると、思いの外いいものであった。そろそろ夏の季節に移り変わろうかというのに朝の空気は涼しく澄んでいた。
 そんな朝に散歩をしていると長い間部屋に引きこもっていた自分が馬鹿らしくなり『なにを悩んでいたのだろうか、サルシャの仇を討つためには少しでも実力をつけないといけないのに』と思うようになった。
 実際ジグレイドはサルシャのことが好きだった。むしろ依存していたと言ってもいいほどにである。


 朝の散歩を終えたジグレイドは宿に戻り女将に礼を言った。
 「女将さん、色々とありがとうございます。心配を掛けましたが、もう大丈夫です」
 「そうかい?あんたが元気になってくれたのなら嬉しいよ。お腹空いただろ?ほらこっちに座って食べな」



 食事を終えたジグレイドは武器と防具が全滅していることを思い出した。
 幸いお金はまだまだ沢山持っているのでそこそこの良品は買えるはずである。
 女将におすすめの武器と防具を扱っている店を教えてもらい行ってみるだが、その店はカザフ要塞都市にある区画で最も外縁部にある場所にあった。


 カザフ要塞都市には4つの区画がある。まず城のある区画の(貴族区)、貴族区の周りを囲うように一般人が住んでいる(居住区)、都市を十字に跨る(商業区)、最後に外縁部の貧しい人々が住んでいる(貧民区)である。
 ジグレイドが泊まっている宿は北門から延びる商業区にあるが、教えてもらった店は南西の貧民区にあった。


 「この地図だとどう見てもスラムにある店なんだよなー・・・訳ありなのか?でも女将さんのおすすめだしな、絡まれそうだけど行くしかないか・・・」

 孤児出身なのでスラムの恐ろしさは身に染みるほど知っている。
 スラムの住人は少しでも身なりの良い人が着たらどこからともなく現れて金目の物を奪おうとするのだ。
 今のジグレイドは武器も防具もなく丸腰であり、いくら身体強化魔法が使えるからと言っても厄介な場所なのである。
 
 ジグレイドは絡まれないことを祈りつつ貧民区ことスラムに足を踏み入れたのだった。
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