おちゆく先に

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71話

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 「まだ終わっとらんぞ!最後まで気を抜くでない!」
 歩み寄ってきたジグレイドにハヌマエンは飛び上がり強烈な回し蹴りを放った。
 「なにっ!?ぐ、ぐはっ!」

 油断していたジグレイドはもろに蹴りを受けてしまい弾き飛ばされてしまった。
 「油断したの・・・儂はまだ動けるぞ・・・お主はちと危険じゃ・・・ここで儂と共に死ぬがよい!」
 吐血しながらもそう言い放ち拳を振り上げジグレイドに接近していく。
 「ぐっ・・・この化け物が!まだ動けるとはな・・・っ!?」

 起き上がりジグレイドが見た光景は拳を振り下ろす寸前のハヌマエンだった。
 すぐに丸盾で拳の連撃を防ぐ。だがいつまでたってもその連撃は止まらなかった。


 丸盾が段々変形し始めてきて、さらに腕も痺れてきた。
 「この、いい加減にしやがれ!」
 ジグレイドはなんとか拳を受け流し、ハヌマエンに蹴りを放った。
 だがその回し蹴りはハヌマエンに当たらなかった。空を蹴ったのである。
 「なっ!?うそ、だろ!?・・・え?」
 確実に追撃がくると身構えていたのだが、殴られることはなかった。
 回し蹴りの反動で一回転したジグレイドだったが再びハヌマエンの方へと向いたその先には、誰もいなかった。
 慌てて後ろに丸盾を構えて振り返るが、そこにもハヌマエンはいなかった。

 そして飛び退こうとした時、何かに躓いた。
 「うわっ・・・」
 下を見るとそこにはハヌマエンがいた。
 「っ!?」
 慌てて飛び退くがハヌマエンはピクリとも動かない。まるで死んでいるかのように・・・。
 「おい・・・死んだ、のか?」

 油断なく丸盾を構えて短槍でハヌマエンを突いてみるが、やはり動かない。本当に死んでいるようだった。
 「こんな終わり方・・・せめて一撃くらいくらってから死ねよ・・・」
 ジグレイドは終ぞハヌマエンに攻撃を当てることができなかった。それは納得のいく終わり方ではなかった。仇の仲間を倒したという実感が全く湧いてこなかったのである。むしろ虚しさしか感じなかった。

 そして何を思ったのかジグレイドはハヌマエンを担ぎ歩き出した。遠くには豆粒大となった集団がまだ微かに見えていた。もちろん戦場の狼プグナループスと獣人族の集団だ。まだ戦闘中なのだろうか・・・。
 ジグレイドはその集団が見える方向とは違う方向へと歩き出した。その先には小高い丘があり見晴らしがよく湿地帯を見渡せる場所だった。


 その丘には夕方に到着した。そして拾ってきた槍や剣で穴を掘った。
 特大の穴が掘れたのは日を跨いでからだった。
 その穴にハヌマエンを埋めてから、これまた拾ってきた岩を少しだけ削りまっすぐに整えて墓標とした。この時にはすでに日が昇り始めていた。
 そして“大猿ここに眠る”と墓標に彫ってから、丘を後にしてフェイシル王国陣地へと歩み出した。

 なぜハヌマエンをジグレイドが丁寧に埋葬し墓標まで作ったのかは本人には全く分かっていなかった。ただこの大猿はきちんと埋葬したいと思ったから埋葬しただけであった。
 名前すら知らない相手、しかも仇の仲間なのになぜ?と考えながらジグレイドはひたすら歩いた。
 そしてジグレイドがフェイシル王国陣地に戻ってきたのは夜になってからだった。
 ジグレイドが戻ってきたという連絡はすぐさまオウルーゼルとカリーナに届いた。



 時は遡り、戦場の狼が獣人を退けフェイシル王国陣地に辿り着いた頃
 「はぁ、はぁ、はぁ・・・さすがにここまでは追ってこれないだろ」
 息を切らせて走ってきた戦場の狼に門衛たちは慌てて集まってきた。
 「大丈夫ですか!?また亜人が襲ってきたのですか!?」
 門衛が慌てて聞いてくる。
 「おい、慌てるな!戦場の狼の方々ですね?モルドさんはいますか?」
 別の門衛が落ち着かせてからそう聞いてきた。
 「・・・ここだ」
 現れたのは仏頂面の男だった。
 「あの・・・なにがあったのかお聞きしても?」
 不機嫌丸出しのモルドにビビりながらも門衛はそう聞いてきた。
 「ちょっとモルドさん!いつまでも拗ねてないで質問に答えてください!」
 リーリャに喝を入れられ、漸くまだまともな顔つきになった。
 「あ、ああ・・・門衛に当たるのはダメだよな。すまなかった。何があったかというとだ、亜人の集団に襲われた。そして仲間が一人囮となって俺たちは逃げてきてしまった!」
 余程悔しかったのか歯を食いしばって喋るモルドに門衛は驚きを隠せなかったが、すぐに自分のやるべきことを思い出した。

 「すぐに伝令だ!閣下なら絶対に増援を送るはずだ!増援の準備をするぞ!」
 そして門衛の通りにオウルーゼルはすぐに増援の許可を出した。
 急ぎ現場に戻るがそこには激しい戦闘痕と血の跡が残っているだけだった。
 念のため周囲を探すが誰もジグレイドを発見することはできずに、捜索は後日という事になりその日は陣地に戻ることになった。

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