91 / 126
90話
しおりを挟む
「お手柔らかにお願いしますよ」
誰もが2対1での戦闘が始まるかと固唾をのんで見守っていた。
だが突如として上空から両軍の間に何かが落ちてきたせいで今にも戦闘が始まろうとしていた張りつめた空気が解けてしまった。
「ちっ、雨のせいで地面がぬかるんでやがる。おかげで泥塗れだぜ…」
空から落ちてきた人物は愚痴を言いながら落下時に出来た窪みから這い上がってきた。
「お前は…。あの時の獣人族か!?」
「あん?誰かと思えばログ・ハイローじゃねーか。お前とも戦ってみてーが…先に殺さなきゃならねー奴がいるんでな」
そう言って獣人族は鋭い眼光でジグレイドを睨み付けた。
「ジグ、あの獣人族お前のこと睨んでいるぞ。知り合いなのか?」
ローレンは冗談混じりでジグレイドに声をかける。
「んー、見たことないですね。多分あいつの勘違いじゃないですか?そもそも俺の人相はヘルムで見えないですしね」
「ふざけんな!てめぇ忘れたとは言わせねーぞ!俺の師匠、ハヌマエンのことをな!」
「は?誰だそれ?人違いだろ?そんなことよりお前、こんな敵陣のど真ん中に落ちてきて無事に帰れるとでも思ってるのか?」
ジグレイドはハヌマエンのことを忘れている訳ではなく強敵だった大猿と認識していたため、この落ちてきた獣人族カイチガの師匠と同一人物だとは思っていなかったのである。
「てめぇ…ハヌマエンはとるに足らない相手だったと言いたいのか?ふざけんな!」
「はぁ…そもそもお前みたいな狼の獣人族は始めて見たから人違いだろ?」
「あ?ならこう言えば思い出すか?ハヌマエンはな、猿の獣人族だ!銀色の大猿だ!」
「銀色の大猿だと!?確かにそいつには身に覚えがあるな。かなりの強敵だったよ。そうかあいつはハヌマエンというのか…。で?その仇をとりにきたというわけなのか?」
「やっぱり貴様か…なら今すぐ死ねや!」
ジグレイドが認めるとカイチガはそう言って飛びかかってきた。
「うおっ!ローレンさん、どうも、そちらの手助けは、もう少し後に、なりそうだ!」
カイチガは連続で飛びかかり、その鋭い爪や鋭い牙でジグレイドを高速で攻撃してくる。
だがジグレイドは避けれるものは避け、避けれないものは受け流して完全にカイチガの攻撃を無力化していた。
「くそが!仕方ねえ…出し惜しみしてる場合ではないな!ぐぅぉぉおおお!」
カイチガが雄叫びをあげると見る見るその姿を変えていった。
先程までは獣人族という名のとおりの見た目だったが、今では体長2メル程もある角の生えた狼へと変貌していた。
「獣人族ってのは全員変身できるのか?だが…あの大猿、ハヌマエンだったか?あれの変身を見た後だとあまり強そうには見えないな。本当にやるつもりか?」
決して驕っている訳ではないが、ハヌマエンとの死闘からローレンに鍛えられたジグレイドは相手の力量を僅かばかりではあるが図れるようにはなっていた。
そして目の前の獣人族はジグレイドよりも格下だと思えたのだ。
「グルル…人族風情ガ、獣人族デアル俺ヲ見下スツモリカ?笑止!手足カラ噛ミ砕イテジワジワナブリ殺シテヤル!」
一方、ローレンと剛鬼はというと、
「残念だったな、まだ一騎討ちを続けるしかないようだぞ?」
「やれやれ、とんだ邪魔が入ったものだ。だがログ殿さえ足止め出来れば此方の勝利は揺るがんよ」
ニヤリと笑みを浮かべるローレンに剛鬼は漸く自軍へと強大な魔法が放たれようとしていることに気がついた。
「っ!?させてなるものか!」
直ぐ様魔法の無効化に踵を返し自軍へと戻ろうとするが、ローレンがそれを許さなかった。
「させぬよ!貴殿の相手は私だ!」
ジグレイドとカイチガ、ローレンとログの戦いがほぼ同時に始まろうとしていた。
誰もが2対1での戦闘が始まるかと固唾をのんで見守っていた。
だが突如として上空から両軍の間に何かが落ちてきたせいで今にも戦闘が始まろうとしていた張りつめた空気が解けてしまった。
「ちっ、雨のせいで地面がぬかるんでやがる。おかげで泥塗れだぜ…」
空から落ちてきた人物は愚痴を言いながら落下時に出来た窪みから這い上がってきた。
「お前は…。あの時の獣人族か!?」
「あん?誰かと思えばログ・ハイローじゃねーか。お前とも戦ってみてーが…先に殺さなきゃならねー奴がいるんでな」
そう言って獣人族は鋭い眼光でジグレイドを睨み付けた。
「ジグ、あの獣人族お前のこと睨んでいるぞ。知り合いなのか?」
ローレンは冗談混じりでジグレイドに声をかける。
「んー、見たことないですね。多分あいつの勘違いじゃないですか?そもそも俺の人相はヘルムで見えないですしね」
「ふざけんな!てめぇ忘れたとは言わせねーぞ!俺の師匠、ハヌマエンのことをな!」
「は?誰だそれ?人違いだろ?そんなことよりお前、こんな敵陣のど真ん中に落ちてきて無事に帰れるとでも思ってるのか?」
ジグレイドはハヌマエンのことを忘れている訳ではなく強敵だった大猿と認識していたため、この落ちてきた獣人族カイチガの師匠と同一人物だとは思っていなかったのである。
「てめぇ…ハヌマエンはとるに足らない相手だったと言いたいのか?ふざけんな!」
「はぁ…そもそもお前みたいな狼の獣人族は始めて見たから人違いだろ?」
「あ?ならこう言えば思い出すか?ハヌマエンはな、猿の獣人族だ!銀色の大猿だ!」
「銀色の大猿だと!?確かにそいつには身に覚えがあるな。かなりの強敵だったよ。そうかあいつはハヌマエンというのか…。で?その仇をとりにきたというわけなのか?」
「やっぱり貴様か…なら今すぐ死ねや!」
ジグレイドが認めるとカイチガはそう言って飛びかかってきた。
「うおっ!ローレンさん、どうも、そちらの手助けは、もう少し後に、なりそうだ!」
カイチガは連続で飛びかかり、その鋭い爪や鋭い牙でジグレイドを高速で攻撃してくる。
だがジグレイドは避けれるものは避け、避けれないものは受け流して完全にカイチガの攻撃を無力化していた。
「くそが!仕方ねえ…出し惜しみしてる場合ではないな!ぐぅぉぉおおお!」
カイチガが雄叫びをあげると見る見るその姿を変えていった。
先程までは獣人族という名のとおりの見た目だったが、今では体長2メル程もある角の生えた狼へと変貌していた。
「獣人族ってのは全員変身できるのか?だが…あの大猿、ハヌマエンだったか?あれの変身を見た後だとあまり強そうには見えないな。本当にやるつもりか?」
決して驕っている訳ではないが、ハヌマエンとの死闘からローレンに鍛えられたジグレイドは相手の力量を僅かばかりではあるが図れるようにはなっていた。
そして目の前の獣人族はジグレイドよりも格下だと思えたのだ。
「グルル…人族風情ガ、獣人族デアル俺ヲ見下スツモリカ?笑止!手足カラ噛ミ砕イテジワジワナブリ殺シテヤル!」
一方、ローレンと剛鬼はというと、
「残念だったな、まだ一騎討ちを続けるしかないようだぞ?」
「やれやれ、とんだ邪魔が入ったものだ。だがログ殿さえ足止め出来れば此方の勝利は揺るがんよ」
ニヤリと笑みを浮かべるローレンに剛鬼は漸く自軍へと強大な魔法が放たれようとしていることに気がついた。
「っ!?させてなるものか!」
直ぐ様魔法の無効化に踵を返し自軍へと戻ろうとするが、ローレンがそれを許さなかった。
「させぬよ!貴殿の相手は私だ!」
ジグレイドとカイチガ、ローレンとログの戦いがほぼ同時に始まろうとしていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
17
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる