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103話
しおりを挟む時刻は夜半過ぎ、ジグレイドはボダホン侯爵から言われた通りではなく、正面を避け敵軍の後方へと迂回していた。
そして朝日が昇る頃にはバルクド帝国軍の後方へと回り込むことに成功していた。
そしてあたかも味方であるかの様に悠然とバルクド帝国軍の陣地へと歩いていった。
「止まれ!冒険者の援軍か?」
「これはどうも、おはようございます。今回は皇帝陛下自らが指揮をとってるとの噂を聞いて遠方より急いで来たんだが…。もう戦は終わりましたか?」
ジグレイドはまるで野手丸出しの若者といった雰囲気を漂わせて門兵の警戒を多少なりとも緩和させようとした。
「そうか!援軍は1人と言えども有難い。歓迎する。知っての通り此度の戦は皇帝陛下自らが陣頭に立っておられる。くれぐれも粗相には気をつけてくれよ」
こうしてジグレイドはあっさり敵陣へと侵入に成功した。
「ふう、緊張したが案外簡単に潜り込めたな。これが複数人だったらまた違ったのかもしれないな」
ジグレイドのこの考えは的を射ていた。
実際門兵は1人できたジグレイドを冒険者か傭兵だと勘違いをして敵軍の間諜だと疑いもしなかった。
そもそも間諜は地味な装いで商人などのすぐに逃げ出せる装いをしてくるもので、決して全身鎧で大剣と見間違うほどの短槍を背負ってするものではないからだ。
ここが前線であればジグレイドを戦場で見た兵士がいたかもしれないが、ここは後陣であるためジグレイドを見た事のある兵士は誰一人としていなかった。
「さてさて、どうしようかな…。」
後陣は皇帝が居る事もあり陣地を組むとしては広大だった。
流石のジグレイドも広大な陣地全てを一度の猛毒の領域で覆う事は出来ないため、まずは補給を潰すことにした。
バルクド帝国の陣地には補給物資を置くためのテントが五ヶ所あり、その内の二つが後陣の補給物資として使われていた。
そして残りの三つは中陣へと送られている様だった。
ジグレイドはまずこの中陣へと送られる三つの補給物資をある程度選択出来るようになった猛毒で侵した。
この時ジグレイドが選択した毒は食中毒といった生易しいものではなかった。
一度口に含んでしまうと毒が全身に回り死に至るような毒だった。
普通の毒であれば食料は一目にわかる程に変色し誰もそんな食料は食さないだろう。
しかしこの毒の恐ろしいところは変色などを起こさない潜伏期間があるということだ。
その期間は約一週間でこの補給物資が中陣へと運ばれ、そして最前線へと運ばたのち兵士達が口にするまでの期間としては十分すぎるほどだった。
この毒の難点としては直接生きている生物を侵すことは出来ず、食料など死んでいる生物にしか毒に侵せないことだ。
しかしこの毒に侵されたものを食べてしまえば回復魔法も効かない恐ろしい毒となり得てしまうため、今回のような時には非常に役立つ毒といえた。
「よし、裏工作も終わったな。あとはこの陣地なんだが…。憂さ晴らしに暴れるとするかな。でもまだ暴れるには早いな。補給物資がちゃんと前線へと運ばれてくれなきゃ裏工作の意味ないし。今は大人しく待機だな」
そう人には聞かれないように呟いてジグレイドは陣地の端にテント組み立てて寝床とした。
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