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105話
しおりを挟む皇帝アルザーンの亡骸を目の前にジグレイドは見下ろしていた。
「呆気なかったな…。いや、兵士でもないから当然といえば当然か。──そういえば、なんでこいつだけ毒に耐えれたんだ?なんか特殊な道具でも身につけてるとか?」
そう考えたジグレイドは容赦なくアルザーンの亡骸を物色しはじめた。
「うーん、結構色々持ってたな…。どれがそれなのか分からん」
アルザーンの所持していたものは皇帝の冠、古びた短剣、ギラギラした腕輪などなど沢山あった。
「うん、めんどくさいな。入るだけ持って行こう。おっさんに渡せば何かしら分かるだろ」
結局ジグレイドは考える事がめんどくさくなり、他人に投げる事にした。
ここでなぜおっさんかというと、ジグレイドの考えはこうである。
謎のアイテム→アイテムといえばドワーフ→ドワーフといえばおっさん、であった。
ジグレイドは近くにあった袋に詰めれるだけ詰めた。
袋自体は何十個もあったが、ジグレイドが持って帰らねばならないため、最終的に袋は三つとなっていた。
袋三つ分とはいえ皇帝が持ってきていた道具は殆ど全部が袋の中に収められていた。
「よし、準備できたし適当に蹴散らしながら敵陣を突っ切っていくか!」
……
戦争が始まってから早8日が経っていた。
すでに数千もの兵が息絶えている。
だが両軍は戦を止めようとはしなかった。
日のある内は正面からの衝突戦、日が落ち暗くなると生き残った兵士が遭遇戦という乱戦模様となっており、開始当初とは打って変わってまともな陣形などどちらの軍も組めていなかった。
そんな中で未だ辛うじて機能している部隊がいた。
それは組合員だった。
組合員は3パーティー単位で行動していた。
戦の流れでこの単位が1番効率が良かったため、不思議とこういう形で行動していくことになっていたのである。
この単位以上で組んでいれば敵から狙われ、逆に少なければ夜まともに寝ることが出来ず翌日まともに動けなくなるのは目に見えていたのである。
しかも補給は3日に1回という命令を受けており、補給以外で後退することが許されていなかった。
「だー!もう、二度と!戦争になんか!参加、しねー!」
「こんな無茶なことやらされるなら次から冒険者で参加する奴なんて皆無だろ!」
「リーダーもアブエルさんも喋ってないで相手を倒してください!」
「はっははは!リンダも言うようになったじゃねーか!これがこんな戦場の真っ只中じゃなけりゃ嬉しい事なんだがな!」
モルドたち戦場の狼は他の組合員よりも多くの人数で固まっていたため、敵の標的に晒されることが多かった。
しかしそれも仕方がないことだった。
なにせギルドなのだ。
誰かを見捨てることは出来るはずもなかった。
だがここは戦場の真っ只中である。
いくら精鋭揃いの戦場の狼であっても犠牲は出てしまっていた。
日が沈み出した頃合いを見計らって戦場の狼は陣地へと撤退を開始していた。
もちろん補給を受けるためだ。
すでに食料は底をつき、武器などもまともに使える物は残っていなかった。
「漸く一息つける」
「ああ、だが仲間が何人かやられちまった」
「モルドのせいじゃねーだろ。全部ボダホンとかいう無能指揮官のせいだ!」
「そう言いたくなる気持ちもわかるが、今はまだ戦場だ。落ち着け」
「わかってるよ!」
ジャレッドもモルドに当たりたい訳ではなかった。
だがどうしてもギルドの仲間が目の前で死んでいくのを見てしまうと愚痴りたくもなるようだ。
フェイシル王国軍の陣地に辿り着いた戦場の狼は一息ついていた。
温かい食事と寝床が用意されているだけで全員満足できた。
今までの戦争では主に斥候として雇われていた。
そのため前線での殺し合いは初めてだった。
もちろん戦場の狼は盗賊などの人の討伐をやったことはあった。
だが犯罪者ではない人むしろ殆どが武器を持った農民と斬り合うのは初めての経験だったため想定以上に神経が摩耗していた。
「明日まで自由行動だ。といってもこの陣地内だがな。俺は補給物資を受け取ってくる。リーリャは手伝ってくれ。では解散!」
モルドはそう締めくくった。
補給物資を受け取ったモルドとリーリャは二人で食事をとっていた。
そして知人であるジグレイドの話にいつのまにかなっていた。
「ジグレイド君は無事でしょうか?」
「さてな…。ジグが今も前と同じ立場なら俺らと同じく前線に投入されてるだろうな。ま、あいつならそう易々とくたばったりしねーだろ」
「ですが今回の戦は作戦なんてあったものではありません」
「言いたい事も分かるがジグはもう大人だ。あいつを信じてやれ。それともリーリャはジグにほの字か?」
「そんなんじゃないです。ただ心配なだけです」
「心配しすぎだ。ジグは仮にも俺を倒してるからな」
「そういえばそうでしたね」
そんなたわいない話をしながら束の間の休息をとるのだった。
明後日にはまたあの戦場へと戻るのだから。
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