おちゆく先に

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110話

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 フェイシル王国軍 陣地 総指揮官テントにて

「はぁ?報酬を寄越せだと!?ローレンの弟子だかなんだかしらんが随分と業突く張るのだな。貴様は今の今まで何をしていた!?吾に答えてみよ!」

報酬を貰いに戻ってきたジグレイドに罵声を浴びせているのは総指揮官のボダホン侯爵だ。

「あ?敵に毒盛ってきただろ?大半の敵は毒で死んだ筈だ!まさか報酬を払わないつもりじゃないだろうな…?」

威圧をしながらジグレイドはボダホン侯爵に詰め寄った。

「ひっ!?き、貴様!吾を誰だと、思っておるのだ!?」

「ただの貴族としか思っていねーよ!言ったよな?次ふざけた真似したら容赦しないと…」

「そんなの知らぬ!そもそもどうやって貴様が毒を盛ったと証明するのだ!よもや貴様…手柄を横取りしておるのではないのか!?」

いい事を思い付いたと言わんばかりのにやけ顔で言ってくるが、逆にこの言葉がジグレイドの怒りに触れた。

「おい…この俺にタダ働きをさせようってのか?今から此処にいる全員を殺す事もできるんだぞ?それともなにか?お前も毒で苦しんで死にたいってのか?それなら喜んで殺してやるが?」

「ふ、ふざけるな!吾は総指揮官なるぞ!平民風情が調子に乗るでない!極刑に処すぞ!」

「ほう…やれるものならやってみろ。師匠がいない今、俺に勝てるのは誰もいないぞ?それに──今回の戦争での最大の功労者にそんなことしてお前の首は果たしてどうなるのだろうな?」

「なんだと!?」

「ほれ、こいつに見覚えあるだろ?敵将の首だよ」

そう言って背嚢から無造作に放り投げたものは叙勲されてもおかしくない程のものだった。

「なっ!?こいつは、まさか、アルザーンだと!?」

「そうだ、敵の王だよ。さてさて、敵将を討ち取ったのに邪険にされたと言いふらしてもいいんだがな…どうしてほしい?」

今度は逆にジグレイドがニヤニヤと不敵な笑みを浮かべてボダホン侯爵に問う。

「ぐっ…わかった。言い値を、払おう…」

まさに苦虫を噛み潰したような表情でボダホン侯爵はそう答えたがジグレイドは良しとしなかった。

「あー、ダメダメ。お金なんて今は要らないんだよ。お前からなんて端金しか貰えないだろうし、陛下から貰うことにするよ。だからお前はただ橋渡しをするだけだ。それで俺を邪険にした事を水に流してやるよ」

「貴様…!」

「で?どうするんだ?橋渡しをして黙っていて貰うのと、橋渡しをせずに身を滅ぼすのとどっちだ?俺としてはどっちでもいいんだけどな。橋渡しもオウルーゼル閣下にお願いすれば叶うだろうしな」

「ぐっ…。わ、わかった、橋渡しを、しよう」

ジグレイドの最後の一言が決め手となったのかボダホン侯爵は項垂れて素直に橋渡しをすると答えた。

その答えを聞いて満足そうにジグレイドは総指揮官テントを後にした。
交渉としては下策の脅しを使ったが、ジグレイドとしてはボダホン侯爵が何をしてこようとどうとでも出来ると思えたため簡単に言う事を聞かせられる脅しという手段をとったのである。
例え暗殺者が送られてこようと領域を発動しておけば勝手に死んでいくので気にもしないといったところなのだろう。

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