一日一回シないと死んじゃう妖精の私が、人質になってしまいました。~救命はエッチ? いじわるな准将様に見張られて~

夢沢とな

文字の大きさ
32 / 116
ドライヴランド編

31話 荒治療

しおりを挟む
 
 
うでの手当てをするからと、キッチンの椅子に座るよう言われた。

テーブルには、赤、青、緑のくすんだ薬瓶が用意してある。

すぐにシャツをかぶったゼイツ准将じゅんしょうが戻ってきて、私の真向いに座る。
彼は膝が触れあうキョリまで椅子をひき、赤い瓶を手にとってちゃぽちゃぽと振った。

「この傷は残るぞ」

そう断言されて、私は自分を納得させるようにうなずいた。仕方ないもの。

「だ、大丈夫で」
「だがそんな事は俺が許さねえ」
私の返事きいてない。
りもんの王女に傷をつけたとあっちゃ、フェアリーアイランドからの信用にかかわるからな。悪いが荒治療あらちりょうさせてもらう」
「荒治療?」
「そうだ。この薬なんだが……、赤、青、緑の順に患部にかけていけば、明日にはかさぶた程度になって元通りになる」
「……傷のこらないで済むの?」
「ああ」
私は首を縦にふった。
「はい。お願いしたいです」
「ただ、尋常じゃないほどみるぞ。覚悟はいいか?」
「がんばり、ます……」
「代われるもんなら代わってやりたいが、頑張ってもらうしかない。腕だせ」

オンチ鳥に噛まれたのは、左の前腕部だった。
准将が私の手首をとって、手の甲を下へ向けるように腕をひねる。
そして、木のスプーンを私の口に差し出した。
「噛め」
「そんなに沁みるんですか……!?」
私はこわごわスプーンを咥えた。

「かけるぞ」

瓶のふたをあけたゼイツ准将が、わずかに気弱な表情をみせた。これから私が受ける痛みに、同情しているかのようだった。

シュワワッ

「☆$#ッ!!」

私は震えあがった。引っこめようとした腕をゼイツ准将がびくともしない力で固定する。苦痛に歪む顔を、ガン見されてしまった。

「……うううぅ……ううう゛」

スプーンが床に落ちている。

「もう一回かけるぞ」

「まっ……ッ」
「……」
「も、もういい  きずなんか残ってもいい…………」

もちろんよくないけど、准将に変な顔みられちゃったダメージが上乗せされて動揺していた、私は泣き言をいいだした。

「もうやりたくない」
「今はそう思うかもしれないが、治した方が絶対にいい」

汗ばむ私の左手をゼイツ准将が両手で包んでいる。

「結婚式する時、ドレス着んだろ? こんな傷ない方がいいだろ? ジョニーの為だと思って頑張れ」

わけわかんない。私はかぶりをふった。

「ジョニーは私がどんな姿でも愛してくれるもん」
「なら自分の為に頑張れ」
「准将が信用を失わない為にでしょっ」
「……」

八つ当たりしちゃった。私は意を決して顔をあげた。

「わ゛かったやる。ゼイツ准将のために」(錯乱)
「あのな、一旦落ち着け」
「ゼイツ准将にたくさん気持ちよくしてもらってるのに、私は全然気持ちよくしてあげられないから、これくらいがん」

あっさり腕に薬をかけられて、顔を見られないようにうつむいて耐えた。

「う゛―っ う゛―っ」

彼が手の甲を撫でてくれている。
私は足の裏で、彼のすねをつっぱねていた。

「よし、峠は越えた。次の二つは赤よりマシだ。赤は……俺の隊で失神した奴がいたくらいだからな、フェルリナの方が強いぞ」

えっ……。ほ、褒められた?

「次も頑張ったら旅団長にしてやる」
「旅団長……」
って、サーカスの団長みたいな響きで特になりたいと思わないけど、でも、ゼイツ准将に褒められたからには、期待に応えたい。

彼は青い薬瓶の蓋を回し開けた。

パシャパシャ

「!!」

やばっ、サーカス旅団フェルリナ、叫びそうになっちゃったけど頑張った。
今度の痛みは別次元で、赤よりマシだっていうけど、こっちの方が痛く感じた。
叫ばない代わりに椅子から立ち上がっちゃって、引っ張り戻される。

「大丈夫か?」
「はぁ、はぁ、はい……」
「おし、フェルリナ准将。次頑張ったら褒美やるよ。何がいい」
「はぁ、はぁ、私いつ准将になりましたか」
「旅団長と准将は同等なんだ。で何が欲しいんだ」

抱きしめてほしい。
そんな思いが浮かんだ。

「…………ハグ……」
「家具? 何のだ?」
「…………た、箪笥」
「タンスってお前、渋いな。いいけどよ」
よくないよ(涙)

シャビシャビシャビ

「ピイイイッウエェ!?」

「おっし、おつかれさん!」
ゼイツ准将がにっかり笑って緑瓶に蓋をかける。

「ぷはっ、はぁっ、はぁっ、ちょっ、ちょっと待って???」
「どした」
「いぃまのが一番キツかったんですけど!? 青、緑って……実は赤が一番楽だったんじゃないですかっ!?」
「はっはっはっ。ンんなことね~よ」

そう嗤う横顔はわるいかお。まんまとノセられた。しんじらんない。

「ほめられて本気にしちゃったじゃないですか!」
「ほめて伸びる奴と、叩いて伸びる奴と、色々いるからなぁ」
いるからなぁ、じゃなーい!!///
「ふみゃっ」
ゼイツ准将がティッシュで私の鼻をつまんだ。なにしてるの? 私、鼻水たれてるの?

私は顔をそむけて、自分で鼻をかんだ。
准将がテープを人差し指と中指に挟んで、ハサミで切る。ガーゼを私の腕に貼って、包帯を巻き始める。

「どうせジョニーだと思って触ろうとして噛まれたんだろ? 違うつったのに、俺を信用しねーからだ」
「またジョニーの話ですか? なんでいっつもジョニージョニー言うんですか」

って、あらら?
私、ジョニーの名前、難なく口に出せるようになってる。

「ゼイツ准将、ジョニーはキ」
「別に、こんな何日も放っておく男のどこがいいんだと思っただけだ。持病のこと当然知ってんだろ? 俺なら何が何でもその日に駆けつけるけどな」
すごい長いひとりごとをゼイツ准将が呟き終わるのを待って、もう一度息を吸う。
「あのですね、ジョニーは、キツ」

「怪我、俺の責任だ。すまなかった」

ゼイツ准将が、私に頭をさげた。

「!? や、やめてください。この傷は……」

准将のせいじゃないのに。

「…………」

包帯を巻き終えた彼がふっと廊下をふりむいたので、私もそっちを見た。
マグカップを手にした男の人が、目を細めて私たちを眺めていた。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!

奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。 ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。 ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!

数年振りに再会した幼馴染のお兄ちゃんが、お兄ちゃんじゃなくなった日

プリオネ
恋愛
田舎町から上京したこの春、5歳年上の近所の幼馴染「さわ兄」と再会した新社会人の伊織。同じく昔一緒に遊んだ友達の家に遊びに行くため東京から千葉へ2人で移動する事になるが、その道中で今まで意識した事の無かったさわ兄の言動に初めて違和感を覚える。そしてその夜、ハプニングが起きて………。 春にぴったりの、さらっと読める短編ラブストーリー。※Rシーンは無いに等しいです※スマホがまだない時代設定です。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件

楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。 ※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。

会長にコーヒーを☕

シナモン
恋愛
やっと巡ってきた運。晴れて正社員となった私のお仕事は・・会長のお茶汲み? **タイトル変更 旧密室の恋**

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

結婚式に代理出席したら花嫁になっちゃいました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
美希は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、結婚式の友人の代理出席をする予定で式場にいたのに!? 本編は完結してますが、色々描き足りなかったので、第2章も書いています。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

処理中です...