私をきらいになって! チェストラ様

夢沢とな

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#1 全然可愛くない

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メロディ・ココ・マリナリーランドは、婚約者こんやくしゃに会うためにイークアル公国へ連れて来られていた。お相手の名はチェストラ・イークアルエイカー、歳はメロディの三つ上の19歳だ。どんな人なのかはまだ知らない。メロディはドキドキしていた。

「あっ、お父さまお母さま待って」

チェストラの城館をおとずれた父と母とメロディの三人は、なぜか庭の芝迷宮めいろに迷いこんでいた。

「あなた、さっきもここ通らなかったかしら……」
「いいから黙ってオレについてこい!」
「すぐそこでパーティーの声がするのに、こんな所でぐるぐるしていて恥ずかしいわ……」
「だぁーっ! もう面倒だ!」

ガサガサッバッキバッキ!
父が草でできたかべを破壊はかいし、メロディは息をのんだ。人のお城に来て迷子まいごになったからって、やっていいことと悪いことがある。

「さ! メロディ通りなさい!」
「わ、私から?」
「早く!」

強引ごういんに背中を押されて、メロディは穴をくぐった。ずり落ちためがねを直すと、皆がメロディに注目していた。

ひゃああ、パーティーしてる真ん前にでちゃった、恥ずかしい……!

ガーデンパーティーのテーブルにたくさんの人が集まっていたのだ。
車いすのおじいさまもいれば、子供もいる。ドレスを着た女の子たちもいる。男子の集団もいる。
その中に、ブルーの髪をした人が見えた。彼と目が合った瞬間だけ、メロディは時が止まったように感じた。

「やあ! 君がチェストラ君だね!」
「はじめまして、コントラバス伯爵。ようこそお越しくださいました」

えっ? メロディはおどろいた。チェストラ? あの方が?

チェストラがこっちへやって来る。

メロディはおずおずと、彼の姿を見あげた。
すらりとした立ち姿で、騎士服のそでをまくっている。
さらさらした髪が目元にかかってる。目はアーモンド形で大きくて、口のはしが上がっていて可愛い顔をしている。

「あそこのかべ、れてたからむしっといたよ」
「あ、本当ですか? ありがとうございます、フフフッ」

チェストラの笑顔に、メロディはホッとした。
あからさまなお父さまのうそを、こころよく許してくださった。心の広い方だわ。

チェストラがメロディに微笑む。二人があいさつをかわそうとしたその時、誰かが声をはりあげてこう言った。

「全然可愛くない!! ガッカリした!」

 
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