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第6話「誘拐事件」
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「おはよう」
「おはよう」
朝、目を覚まして夏希の顔が目の前にあることにも慣れた四日目。
昨日のことには特に触れずに、二人で夏希の作った朝ごはんを食べる。
美味しいのだが雰囲気が暗い。
何か話しかけたほうがいいのだろうか。
「私さあ」
タイミングを計っていると夏希が急に口を開いた。
「お見合いさせられるんだ」
「お見合い?」
「そう。それで九州に転校するかもしれない」
「九州?」
お見合い。九州。話の脈絡が過ぎない。
「ちゃんと言え。意味がわからん」
「長くなるよ」
「別にいいよ」
どうせ今日も学校・部活共に休みだし。
それに最初から今回の原因については今日はっきり聞くつもりだったのだ。
「実はね」
夏希がポツリと話し始めた。
その話を聞いて俺は驚いた。
さっきポツリと呟かれた「お見合い」と「九州」も含まれていた。
おじさんが九州に転勤することになった。
そして九州にすんでいるおじさんの恩師の孫(二十歳・独身)と見合いをすることになり、しかもそれが結婚することが前提であり、さらに九州で一緒に過ごすことが勝手に決まっているなどという理不尽な内容だった。
「それは酷いな」
急展開にもほどがあるし、いくらなんでも勝手すぎる。
夏希の意思を完全に無視している。
なんか俺も腹が立ってきた。
殴られたせいではないがおじさんの事を殴りたくなってきたくらいだ。
「でしょう。だから家出したのに誰かさんが連れて帰るから」
夏希は恨めしそうな目で俺を見る。
「悪かったよ。……いや、だったら最初から理由言えよ」
夏希が家に来た日に理由を聞いていたらしばらく匿うくらいはしただろう。
いや、強く聞きださなかった俺も同罪か。
「こんなバカみたいな理由で家出したなんて言いたくなかった」
夏希は顔を背けた。
そうは言うものの子供の頃から夏希が家出する理由(おじさんとの喧嘩の理由)なんてほとんどバカみたいと言うか大したことない内容だったと思うが口には出さないでおこう。
「とにかく、しばらくはここにいるからね」
そう言って夏希は電話機を操作する。
「何している」
「うちに電話かけるの」
だったら自分の携帯でかけろと思ったがそのくらいはいいか。
そう思って見ていたのだが夏希は予想外の行動に出た。
「娘は預かった。返して欲しければ金を用意しろ」
「おい。何言ってやがる」
夏希から電話を奪い取った。
「もしもし」
電話は既に切れていた。
電話は切れたばっかりなので通話時間が表示されている。
夏希は冗談ではなく本気で電話したのだ。
あの言い方だからおばさんではなくおじさんが電話に出たのだろう。
「お前、正気か?」
「もちろん」
あっ。正気の時の顔だ。
でも正気だからといってやっていいことではない。
「どうしよう」
まあおじさんもこんなのを本気で信じないだろう。
とくに何かする必要はないだろう。
問題は夏希だ。
そう言えば姿が見えない。
夏希を探すと開かずのドアが開いていた。
「夏希。そこで何している」
「今日からこの部屋使うわね」
この家は俺が普段使っている六畳の部屋の他に四畳の部屋がある。
「それにしてもこの段ボールの山は何?」
「この部屋は駄目だ」
四畳の部屋は保管倉庫として使っている。
段ボール一つ一ヶ月百円。
友達が家に置いておけない秘蔵のブツを預かっている。
ちょっとしたお小遣いになる大事な収入源だ。
「段ボール開けていい?」
「絶対に駄目!」
夏希を部屋から出して六畳の部屋に戻した。
危なかった。
あれが開けられたら多分俺の持ち物だと思われてその結果俺が悲惨な目にあうだろう。
今は俺が家にいるが明日からはまた学校だ。
もしも夏希がこのまま家にいるなら段ボールは開かれるだろう。
正直もう帰って欲しいが家に帰すわけにもいかない。
おじさんにそのまま引き渡すわけにはいかないが話し合いの場は必要だろう。
とりあえず俺が電話をかけよう。
「は、はい。鈴原です」
おじさんの震えた声が聞こえた。
「おじさん。秋人です」
『秋人君?大変なんだ。夏希が誘拐された』
やばい。さっきの夏希の電話をめちゃくちゃ無茶苦茶信じている。
「おじさん。落ち着いてください。このことを警察には?」
念のために聞いてみた。
『妻が連絡済みだ』
「そうですか」
よかった。警察には連絡はしていないようだ。
「秋人君。夏希が、夏希が」
「大丈夫です」
『頼む。もう君しか頼れる子がいない』
じゃあ、殴るなよこのクソ親父。
「夏希だったら俺の傍にいます」
『本当か?』
本来なら俺がもう一度連れて行くべきなんだろうけど、殴られた恨みだ。
向こうに来てもらおう。
「おじさん。一つ言いたいことがあります」
『何だ?』
「夏希を誘拐しました。返して欲しければうちまで来てください」
『あ、秋人君?』
俺の突然の言葉に電話の向こう側のおじさんが困惑しているのがわかる。
「俺は夏希を帰すつもりはありません。ずっとうちにいてもらいます」
『ちょ、ちょっと待て秋人君。ずっと?いや、そもそもどこに住んでるんだ』
「おばさんに聞けばわかりますよ」
そう冷たく言って電話を切った。
「勝負どころだな」
親子喧嘩に巻き込まれただけだけど、決着は俺の手で決めなければならないようだ。
俺は覚悟を決めた。
「おはよう」
朝、目を覚まして夏希の顔が目の前にあることにも慣れた四日目。
昨日のことには特に触れずに、二人で夏希の作った朝ごはんを食べる。
美味しいのだが雰囲気が暗い。
何か話しかけたほうがいいのだろうか。
「私さあ」
タイミングを計っていると夏希が急に口を開いた。
「お見合いさせられるんだ」
「お見合い?」
「そう。それで九州に転校するかもしれない」
「九州?」
お見合い。九州。話の脈絡が過ぎない。
「ちゃんと言え。意味がわからん」
「長くなるよ」
「別にいいよ」
どうせ今日も学校・部活共に休みだし。
それに最初から今回の原因については今日はっきり聞くつもりだったのだ。
「実はね」
夏希がポツリと話し始めた。
その話を聞いて俺は驚いた。
さっきポツリと呟かれた「お見合い」と「九州」も含まれていた。
おじさんが九州に転勤することになった。
そして九州にすんでいるおじさんの恩師の孫(二十歳・独身)と見合いをすることになり、しかもそれが結婚することが前提であり、さらに九州で一緒に過ごすことが勝手に決まっているなどという理不尽な内容だった。
「それは酷いな」
急展開にもほどがあるし、いくらなんでも勝手すぎる。
夏希の意思を完全に無視している。
なんか俺も腹が立ってきた。
殴られたせいではないがおじさんの事を殴りたくなってきたくらいだ。
「でしょう。だから家出したのに誰かさんが連れて帰るから」
夏希は恨めしそうな目で俺を見る。
「悪かったよ。……いや、だったら最初から理由言えよ」
夏希が家に来た日に理由を聞いていたらしばらく匿うくらいはしただろう。
いや、強く聞きださなかった俺も同罪か。
「こんなバカみたいな理由で家出したなんて言いたくなかった」
夏希は顔を背けた。
そうは言うものの子供の頃から夏希が家出する理由(おじさんとの喧嘩の理由)なんてほとんどバカみたいと言うか大したことない内容だったと思うが口には出さないでおこう。
「とにかく、しばらくはここにいるからね」
そう言って夏希は電話機を操作する。
「何している」
「うちに電話かけるの」
だったら自分の携帯でかけろと思ったがそのくらいはいいか。
そう思って見ていたのだが夏希は予想外の行動に出た。
「娘は預かった。返して欲しければ金を用意しろ」
「おい。何言ってやがる」
夏希から電話を奪い取った。
「もしもし」
電話は既に切れていた。
電話は切れたばっかりなので通話時間が表示されている。
夏希は冗談ではなく本気で電話したのだ。
あの言い方だからおばさんではなくおじさんが電話に出たのだろう。
「お前、正気か?」
「もちろん」
あっ。正気の時の顔だ。
でも正気だからといってやっていいことではない。
「どうしよう」
まあおじさんもこんなのを本気で信じないだろう。
とくに何かする必要はないだろう。
問題は夏希だ。
そう言えば姿が見えない。
夏希を探すと開かずのドアが開いていた。
「夏希。そこで何している」
「今日からこの部屋使うわね」
この家は俺が普段使っている六畳の部屋の他に四畳の部屋がある。
「それにしてもこの段ボールの山は何?」
「この部屋は駄目だ」
四畳の部屋は保管倉庫として使っている。
段ボール一つ一ヶ月百円。
友達が家に置いておけない秘蔵のブツを預かっている。
ちょっとしたお小遣いになる大事な収入源だ。
「段ボール開けていい?」
「絶対に駄目!」
夏希を部屋から出して六畳の部屋に戻した。
危なかった。
あれが開けられたら多分俺の持ち物だと思われてその結果俺が悲惨な目にあうだろう。
今は俺が家にいるが明日からはまた学校だ。
もしも夏希がこのまま家にいるなら段ボールは開かれるだろう。
正直もう帰って欲しいが家に帰すわけにもいかない。
おじさんにそのまま引き渡すわけにはいかないが話し合いの場は必要だろう。
とりあえず俺が電話をかけよう。
「は、はい。鈴原です」
おじさんの震えた声が聞こえた。
「おじさん。秋人です」
『秋人君?大変なんだ。夏希が誘拐された』
やばい。さっきの夏希の電話をめちゃくちゃ無茶苦茶信じている。
「おじさん。落ち着いてください。このことを警察には?」
念のために聞いてみた。
『妻が連絡済みだ』
「そうですか」
よかった。警察には連絡はしていないようだ。
「秋人君。夏希が、夏希が」
「大丈夫です」
『頼む。もう君しか頼れる子がいない』
じゃあ、殴るなよこのクソ親父。
「夏希だったら俺の傍にいます」
『本当か?』
本来なら俺がもう一度連れて行くべきなんだろうけど、殴られた恨みだ。
向こうに来てもらおう。
「おじさん。一つ言いたいことがあります」
『何だ?』
「夏希を誘拐しました。返して欲しければうちまで来てください」
『あ、秋人君?』
俺の突然の言葉に電話の向こう側のおじさんが困惑しているのがわかる。
「俺は夏希を帰すつもりはありません。ずっとうちにいてもらいます」
『ちょ、ちょっと待て秋人君。ずっと?いや、そもそもどこに住んでるんだ』
「おばさんに聞けばわかりますよ」
そう冷たく言って電話を切った。
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俺は覚悟を決めた。
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