転生したら異世界の王子だった

国光

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第02話「王国の危機と成長」

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 アランは自分が王子であることを、日々嫌というほど実感していた。「王子」ではなく「無能王子」としてという意味での実感だった。
 田中勇太の意識がアランを乗っ取ったわけでもなく、互いの記憶や思考が混ざっている感じであった。
 転生した最初の日に国王である父と話して自分が王子であると実感した。その後王宮内では彼を無能王子として扱う貴族たちの冷ややかな視線を感じ続け、最初の数日はその重圧に押し潰されそうになった。
 だが、そんなアランに救いの手を差し伸べてくれたのは、やはりリリスだった。
「殿下、今日は大事な会議があります。国の未来に関わる重要な議題ですので、ご出席をお願いします」
 リリスの言葉に、アランは心の中でため息をついた。王宮での会議といえば、常に難解な政治の話が繰り広げられる場だ。アランは政治に関する知識はほとんどなく、ましてや王子として出席するとなると、全く何を言っていいのか分からなかった。
「会議に出るって…どうせ何もできないよ、僕は」
 アランは小さく呟いたが、リリスは微笑んで答えた。
「殿下、無理にすべてを理解する必要はありません。ただ、しっかりと耳を傾けてください。学びの場ですから」
 そう言われても、アランはどうしても不安でたまらなかった。無能王子としてのレッテルを貼られ、常に周囲から軽んじられている自分には、何もできないという思いが頭を離れなかった。
 その日、王宮の大広間で行われる会議には、王国の重要な貴族や家臣たちが集まっていた。アランはその席に座らされ、周囲を見渡す。
 長テーブルの上にはいくつもの文書が広げられており、貴族たちはその内容について激しく議論している。その中で、アランが一番気になるのは、隣国との外交問題だった。
「こちらから積極的に手を打たねば、隣国が攻めてきますぞ! 王国の防衛体制が不十分であることは、何度も指摘されてきた」
「だが、我々には予算も兵力も限られている。無駄な戦争は避けるべきだ」
 声を荒げる貴族たちの言葉が耳に入る。アランは、それが何を意味しているのかを理解しようと必死で耳を傾けた。
「もし戦争を避けるのであれば、どう対処するか。この外交問題を解決するための案を考えなければならない」
 一番年長の貴族がそう言って、他の者たちの顔を見渡す。その顔には、真剣な表情が浮かんでいた。だが、アランにはその議論がどこへ向かっているのか全く分からない。ただ、空気の重さに圧倒され、うまく口を挟むことができなかった。
 そのとき、ひとりの貴族がアランに視線を向けた。
「第二王子殿下。お聞きになっていますか? ご意見をお伺いしたい」
 アランは驚いて顔を上げた。その貴族は、王国でも名の知れた家系の出身で、冷徹な政治家として知られている人物だった。彼が突然自分に意見を求めてきたことに、アランは心臓がドキンと跳ね上がるのを感じた。
「わ、私に?」
「ええ、殿下。ご意見をお聞かせください。王国の未来について、王子としてのお立場から何か考えていることがあれば、是非お話しください」
 周囲の貴族たちもアランに注目している。アランは焦った。
「そ、それは…私はまだ何も分からないので…」
 言いかけた言葉が喉に詰まった。どうしていいか分からない。自分が発言したところで、きっと何の役にも立たないだろう。無能王子という立場が、アランにその不安を抱かせていた。
 だが、その時、リリスが静かに言った。
「殿下、まずは自分の考えを素直に伝えることが大切です。どんな意見でも構いません、思っていることをお話しください」
 リリスの言葉に、アランは少しだけ勇気をもらった。彼女がいつもそうしてくれるように、少なくとも自分なりに考えたことを言うべきだ。
「……わかりました」
 アランは席を立ち、テーブルの中央に目を向けると、意を決して口を開いた。
「私も、王国を守るために何かしなければならないと思います。でも、それにはまずは、この王国の民を支えるための方法を見つけるべきだと思います」
 周囲の貴族たちは一瞬沈黙し、アランを見守った。アランはその目線が痛くて、思わず声を震わせる。
「戦争を避けるためには、まず民の生活を安定させなければなりません。税金の取り方や、商業の促進を図ることで、隣国に対しても強い立場を取れるようにできるのではないかと思います。私は、何も分からないからこそ、民の視点で考えてみました」
その瞬間、会議の場はしばらく静まり返った。アランは自分の言葉に、自分でも驚いていた。何の根拠もなく、ただ自分の感覚で言葉を並べたが、何故か胸の中で一歩踏み出した気がした。
「民の視点……ですか」
 年長の貴族が少し呟いた後、重々しい空気が流れたが、次第に何人かの貴族が頷き始めた。その中に、アランが見覚えのある顔があった。王国の財務大臣であるガルベリオが、軽く顎に手を当てて考え込んでいた。
「なるほど、第二王子殿下。確かに、それも一つの方法かもしれません」
 そして、次第に他の貴族たちもその考えに賛同し、議論が進展し始めた。アランの言葉が、少なくとも会議の流れを変えたことに、彼は少しだけ驚きと安堵を感じた。
 会議の後、リリスがアランに微笑みかけた。
「殿下、よく頑張られましたね」
「でも、俺。何も分からないままだった。ただ。少しでも役に立てたなら、よかった」
 リリスは頷き、優しく言った。
「それが大切です。殿下は、少しずつでも王としての道を歩んでいけるはずです」
 アランはその言葉に、少しだけ胸を張ることができた。まだ完全に自信があるわけではないが、少しずつでも成長している自分を感じることができた。それが、これからの王子としての「覚悟」に繋がるのだと信じて。
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