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イケメンだということは知っています

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夕暮れ時の噴水前。
藍色の髪の男性が切れ長の金色の目で、こちらを真剣な表情で見つめている。

(あ、まずい、これは!)

ゲームの画面越しに、私は心の中で警戒体制をとる。

「やっぱり、君がいたんだな。」

男性がにこりと笑い、優しい声でつぶやいた。

さすが、「乙女ゲームのジャンルで好きなキャラ」の五位以内に、必ず入ってくるイケメン。
推しでなくても、こんな笑顔を直視するのはまぶしすぎる。

(始まっちゃったー!か、帰らせてー!)

「誰かに呼ばれたような気がしたんだ。」

(違う人をお待ちしてたんですぅー!あなたはお呼びしてないですぅー!)
こちらは画面越しなので、心の中だけで返事を返す。

「何をしていても、誰といても、君と一緒だったら、わたしの隣に君がいたらどうしているか。そんなことばかり考えてしまうんだ。…こんな気持ちになったのは、初めてなんだ…。」

(そうですかー!こちらはたくさん聞きましたよー!そういうことは推しに思って欲しいぃ!)

「だから…わたしは君を愛しているんだろうな。」

(きっと気のせいだよ!気の迷いですよ!まだゲーム序盤なんだからまだ遊びたいんですよ!あと私の推しはライル様なんですよ!)

「オルフェ様…。」

ようやく、告白を受けている女の子が口を開いた。
紺色の腰まで届く髪と、大きくて少しつり気味の緑の目の美少女だ。
ここで一言相手の名前をつぶやくのは、そういうシステムです。

「君がいままで聖女候補として頑張っていたことは分かっている。…だが。」

オルフェ様の告白はまだまだ続くのです。続くんだけどね。

(頑張ってたの知ってるなら放っておいてよぉぉぉー!まだ薬草図鑑も埋まってないしスキルも増やしたいし推しはまだ冷たいし何とかしたいんだよぉぉー!告白断ると皆の好感度も下がっちゃうじゃない!)

画面の向こうの思いがけない展開に、私は心で悲鳴を上げながら目をつむって頭をかきむしった。

「あーもう!どうしようか、……え?」

やけになっていた状態から落ち着こうと、私は目を開けたのだが。
見覚えがないものが部屋にある。

天井もシャンデリア?小さめだけどそうだよね?
わたしの部屋にこんなものはない。

何このシーツ、高級ホテルのみたいにさらさらスベスベじゃない?
高そうなんですけど。

お高そうな海辺の絵やお花の絵とか、花瓶には赤いバラですってよ。

え、何?どうなってるの?



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お読みいただき、ありがとうございます。

お知らせ

・この第一話を「プロローグ」から「イケメンだということは知っています」に、話のタイトルを変更しました。

・この第一話の内容を、オルフェ様の説明とヒロインの容姿などを加筆して、他もいくつか修正しました。

・拙い文章で恐縮ですが、修正があるときは内容紹介にも大まかに書くようにしますので、よろしくお願いいたします。

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