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困惑
しおりを挟む痛みによって気絶したオレは長い眠りから目を覚ます。
「はぁ……これからどうするか」
自然と溜め息だって出てしまう。
ベッドに寝たまま、腕に繋がれている点滴の針を見つめる。
やはりこれは現実なんだな。
──て、事はやはりオレは、知らない誰かになってるって事か。
「とりあえずこの身体の持ち主が誰なのか。そこを知らない事には、今後どうするかも考えられないよな。はぁ……」
再び大きな溜め息が部屋の中に消えていく。
包帯が巻かれた身体を触る。
まだ完全に痛みが引いた訳ではないが、前よりは少しマシになっているので身体を起こすことが出来た。
点滴をぶら下げるガードルスタンドを手近に引き寄せ、ベッドから脚を投げ出す。
それにしても無駄に広い部屋だ。
なのにベッド以外は何も置かれていない。生活感とは無縁に思える部屋。
窓が無いせいか、これでもし狭い部屋なら牢獄……と言ってしまいたい所だ。
流石にこの部屋からオレが何者なのか、それを推測する事は出来そうにない。
そう思った時だった。部屋の扉に、ノックする音が届く。
扉はオレが返事をするよりも前に開かれ、ひとりの男が入って来る。
始めに会った、あの怯えた医者を呼びに行った男だ。
男は部屋に入ってすぐ、オレが起きているのに気付いて駆け寄って来ると口を開く。
「──! 良かった、目を覚まされたんですね……。二日も目覚めないものですから、心配しましたよ」
「二日も? そうか、そんなに……」
安堵した表情を浮かべる目の前の男は、オレが入り込んだこの身体の持ち主について何らか知っているようだ。
知り合いならば、この男から情報を手を入れる事が出来るかもしれない。
だがそんな事を考えている間に、目の前の男は何かを察したらしく眉を寄せ、奇妙な物を見るように首を傾げる。
一体何事かと思えば、目の前の男の手が額に宛がわれ──そして反対の手を男自身の額にあてる。
いわゆるあれだ、熱があるかどうかを確認する際の動作である。
「失礼します。……熱は、無いようですね」
「……?」
男は額から手を離すとそのまま自身の顎に手を添え、考え事をしているのか暫し黙ってしまう。
部屋には少しの間、沈黙が流れる。
その後、男は腕時計で時刻を確認し、こちらを見据えて姿勢を正す。
「そろそろラバス医師が戻られた頃だと思いますので、連れて参ります。怪我の具合と……気になる事もひとつ……」
男は何か言い掛けたが、ふと口を閉ざしてしまった。
すると一度オレから視線を逸らし、己の中の考えを飛ばすよう首を軽く左右に振る。
そしてまた視線を合わせたかと思えば黙礼し、扉に向かって歩みを進めそのまま部屋を後にする。
再び部屋にはオレひとり。
あの男は何を言い掛けたのか……僅かばかりに気になりつつ、自分の存在確認を出来なかった事に苦笑した。
医師を連れてくると言い、部屋から男が出て行ってから結構時間が過ぎた。
部屋にベッド以外は何も無いと思っていたが、壁に時計が掛けられているを見付ける。
多分だが、もう30分は戻って来て居ない。
もう暫く待っていても良いのだけれど、ただベッドに座ったまま来るのを待つというもの退屈である。
脚に力を入れそっと立ち上がり、着衣の上から腹部を擦る。
「少し痛むけど、まぁこのくらいなら大丈夫か」
ガードルスタンドを片手で押しながら、扉に向かってゆっくり歩き出す。
勝手に歩き回れば怒られるかもしれないが、その時はその時である。
ここは窓が無いし、部屋の外も気になる。
少しばかり見て回るくらいは良いだろう。
扉の前に立つ。
見た目は大きくて頑丈そうではあったが、案外とすんなりその扉は押し開けることが出来た。
部屋から一歩外に出る。
廊下もなかなかに広い。左右を見渡し、一体この廊下はどこまで続くんだと呆然としていれば、不意に横から声が掛けられる。
押し開けた扉の影によりすぐには気付けなかったが、どうやら扉の横には人が居たようだ。
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