ロシュフォール物語

正輝 知

文字の大きさ
上 下
14 / 492
凍雪国編第1章

第11話 狼退治

しおりを挟む
 ジョティルは、剣を腰だめに構え、魔力を練り上げる。
 そして、空いた左手を一番手前にいる狼に向ける。

light needleライトニードル

 指先から細長い光の針が飛び出し、襲い掛かってきた狼を串刺しにする。

ジゥッ

 辺りには焼け焦げた臭いが漂い、ほかの狼たちが明らかに怯み出す。
 ジョティルは、そんな狼たちの様子を見て、少し怒りを顔に表す。

「一度、戦いを挑んできた以上、私は許しません」

light arrow diffusionライトアローディフュージョン

 指先から複数の光の矢を撃ち出し、今にも飛び掛かろうと腰を低くした狼を突き刺す。
 無数の光の矢が刺さった狼は、大きくビクンと一度痙攣したあと、声も上げずにドウッと横倒しになる。

 ジョティルは、油断なく残った狼たちを見渡す。

enchant swordエンチャントソード

 ジョティルは、剣に光属性の魔法をかけ、剣を強化する。
 ジョティルが、光属性を多用するのは、光属性がジョティルの得意属性だからである。

「たとえ、あなた方が硬い毛皮で身を覆っていたとしても、この光剣の前には無力ですよ」

 ジョティルは、切っ先を正眼の位置へと移動させ、冷静な瞳で狼たちを見据える。

グルルル……

 淡い光を放つ剣を見た狼たちは、唸りながら、警戒して距離を取ろうとする。
 だが、ジョティルは、一番近くにいる狼へ一足跳びで間合いを詰め、剣を右下から切り上げ、即座に、唐竹割りにして仕留める。
 それを見た狼たちは、ジョティルの正面と左右から一斉に飛び掛り、残った一匹が後ろへ回り込む。

「!」

 正面にまわった一匹は、ジョティルの喉もとに食らいつこうと牙をむき出して迫り、左右から、腕や足に牙や爪を突き立てようと突進していく。
 ジョティルは、正面の狼を易々と一刀両断し、包囲網を難なく潜り抜け、すぐさま、剣を左右に閃かせて、一頭ずつ切り伏せる。
 だが、その瞬間、ジョティルの体勢がわずかに揺らぎ、体が流れた隙に、後ろから最後の一匹が飛び掛る。

ガッ

 ジョティルの左肩から鮮血が飛び出し、破れたい衣服の間から爪で抉られた傷口が現れる。

「つっ!」

 ジョティルは、顔を大きくしかめ、飛び退く狼に向け、追撃の剣を振るう。
 しかし、狼は、その攻撃を予測していたかのように体を沈めてかわす。
 狼は、再び跳躍して、ジョティルに襲い掛かり、喉もと目掛けて牙を剝く。

light javelinライトジャベリン

 左手から生まれた光の槍が、狼の大きく開いた口の中に吸い込まれ、背後に突き抜ける。

ドサッ

 重く鈍い音とともに、最後の狼が地面に倒れ伏す。
 ふぃ~っと大きく肩で息をしたジョティルは、まだ息のある狼に近づいて止めを刺し、全ての獣を倒し終える。

(やれやれですね……)

 少し気だるげに心の中で呟いたジョティルは、痛む左肩に手を当てる。

light healライトヒール

 ジョティルの傷口付近からやわらかい温かな光が生まれ、傷口に吸い込まれる。
 癒しの光は、瞬時に傷口を塞ぎ、痛めた肩を治療する。

(まったく、食欲旺盛な狼たちでしたね……)

 ジョティルは、左肩が完治したのを確認するため、軽く動かす。
 左肩は、スムーズに動き、怪我の影響がないことに、ジョティルは満足する。
 そして、倒れた狼たちを見渡して、これらの獣をどうしたものかと考える。
 だが、特にいい案は浮かばなかったので、このまま放置することに決める。

(どうやら……、この狼たちは魔法が使えないようですね)

 ジョティルは、近くに倒れている一際大きな体格をした狼の体に触れ、魔力の残滓ざんしすらないことを確認する。

(すると……、先ほどの爆発音は、この狼たちではなく、何か別のものの仕業ですね……)

 ジョティルは、狼たちがやってきた道の先を見て、気配を探ろうと意識を向ける。
しおりを挟む

処理中です...