ロシュフォール物語

正輝 知

文字の大きさ
上 下
22 / 492
凍雪国編第1章

第19話 来訪者への備え2

しおりを挟む
 ドルマは、バージの意見に頷く。

「そうか。それなら、バージとダイザでジョティルを出迎え、ここへ案内してきてくれ」

 ドルマは、村長としてバージとダイザへ指示を出す。

「「はい」」

 2人は、同時に答えて姿勢を正す。

「ただし、来訪者がそのジョティルでない場合、むやみに近づかず、1人は残って監視し、もう1人は戻って知らせてくれ」

「分かった」

「はい」

 2人は、ドルマの指示に頷く。

「では、行ってくれ」

「はい。フレイ、行ってくるな」

 ダイザは、フレイに声を掛ける。

「うん。気をつけてね」

「あぁ」

 バージとダイザは、お互いの顔を見て頷いた後、足取り確かに出入り口へ向かい、ドルマとフレイは、その後ろ姿を見送る。
 そして、ドルマは、フレイに向き直り、優しく諭す。

「さて、フレイ。ロナリアが戻ってきたら、家に帰ってお留守番じゃぞ」

「うん。分かっているよ。僕が行ったところで、足手まといだからね」

「うむ。聞き分けの良い子じゃな」

 ドルマは、素直に頷くフレイを見て嬉しくなる。

「それはそうと、今日は、どうして湖まで行っていたのじゃ?」

 ドルマは、フレイがなぜ村の外へ行っていたのかが気になっていた。

「行きたかったから……」

「何をしに行っておったのじゃ? トウジンに会いに行ったのか?」

「違うよ。透輝石を採りに行ってたの」

「何でまた?」

「前にね、お母さんが大きめの透輝石が欲しいって言ってたから、お母さんにプレゼントしようと思ったの」

「そうか。フレイは、偉いな」

 ドルマは、フレイの孝行心のあつさに感心して頷く。

「じゃが、トウジンがいない今、湖は危険じゃぞ。ボーが一緒とはいえ、巨狼種の群れに襲われていたら、怪我では済まなかったぞ」

「うん。ちょっと反省してる。僕には、まだ巨狼種は倒せないから……」

「分かっておるならば、それで良い。無茶をして、命を落とすようなことをしてはいかん」

「うん」

 フレイは、そう言ったあと、家の外から足音が近づいてくるのに気がつく。

「村長。お母さんが戻ってきたみたいだよ」

 フレイも、足音に気がついて、ドルマに知らせる。

「おっ、そうじゃな。ホレイも来たみたいじゃな」

「遅くなりましたわ、村長」

 ロナリアは、やや駆け足で家の中に入ってきて、ドルマにそう告げる。

「いやいや。ご苦労じゃったな」

 ドルマは、ロナリアをねぎらい、その後ろにいるホレイへ声をかける。

「ホレイよ。急に呼び立ててすまんの」

「いえ、村長。それで、どうなりました?」

 ホレイは、炭作りでもしていたのか、顔や手がところどころすすけていて、着ているものもにも炭が付いている。
しおりを挟む

処理中です...