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凍雪国編第2章
第36話 オセイアの秘石1
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「ニアは、これから毎日、この練魔石で練習をするんじゃ。そして、フレイは……、そうじゃな……」
モールは、少し首を捻って考え、おもむろに立ち上がる。
それから、奥の部屋へ行き、手のひらに収まるほどの小さな小箱を持って戻ってくる。
「フレイには、魔力を自在に操る訓練が必要じゃ」
モールは、小箱を開けて、透明な丸い小石がついた指輪を机に置く。
「これ、なに?」
フレイは、興味を引かれ、石が埋め込まれた銀色の指輪を覗き込む。
「これはな、オセイアの秘石じゃ。旧時代の遺物じゃな」
旧時代とは、ロシュフォール帝国より以前に栄えたベルテオーム族の時代のことで、その遺跡から発掘されたものを旧時代の遺物と呼んでいる。
「オセイアの秘石? これ……、すごく細かい魔法陣がいっぱい刻んであるよ」
秘石の表面には、一体どうやって刻み込んだのか、緻密で繊細な魔法陣がたくさん描かれている。
秘石が埋め込まれている指輪自体にも、国宝級の美術品さながらの模様があしらわれている。
「当然じゃな。ベルテオームが誇る歴代最高の魔法付与者ハティ・オセイアの作じゃからな」
ハティ・オセイアは、ベルテオーム時代の終期に突如として現れた天才魔法付与者である。
オセイアは、数々の名作と謳われる魔剣や魔道具を生み出し、そのいずれにも、女性ならではの細かい装飾を施している。
オセイアにまつわる伝説では、将来訪れるであろう災厄に備え、魔剣や魔道具を製作したと伝えられており、弟子たちの何名かに重要な命を下したもと言われている。
「へぇ~」
「オセイアは、魔法陣魔法の先駆者でもあるしの」
「この石は透輝石?」
「いや、オセイアの魔力を結晶化させた石じゃな」
モールも、どのような原理で魔力を結晶化させたのかは分かっていない。
だが、魔力感知からオセイアの魔力波長を確かに感じ取ることができる。
「ふ~ん……」
フレイは、しげしげともの珍しげに眺める。
「この石は、魔力を収束させる力を持つ」
「どういうこと?」
「簡単に言うと、フレイみたいに散らばりまくっておる魔力を集めて、一方向へ放出する手助けをしてくれるんじゃ」
「じゃぁ、僕でも上手く魔法が扱えるようになるの?」
「たぶんな」
モールは、そう言ってフレイの右手中指に指輪を嵌める。
「サイズは、ちょうどじゃの」
「うん」
「その石を発動させるには、『ジェネレイティングパワー』と唱えるんじゃ」
「ジェネ……? なに?」
フレイは、モールが教えてくれた詠唱がよく聞き取れず、思わず聞き返す。
「『ジェネレイティングパワー』じゃ。しっかりと、覚えよ」
「う、うん。ジェネ……レイ……ティングパワー……ね」
フレイは、たどたどしく呟き、少し自信なさげにする。
「アクセントが少々違うが……、まぁ、いいじゃろ。まずは、ほれ、これに向かって、『ファイヤー』を唱えてみよ」
モールは、先ほど自分が持ってきた小さな練魔石を机に置き、『absorb』と唱える。
練魔石は、先ほどと同じように淡い光を帯びる。
フレイは、右手を突き出し、『fire』と唱える。
すると、手のひらから火がぼわっと燃え上がり、ゆらゆらとしたあと、煙が吸い込まれるように、火が練魔石へ入っていく。
「では、次は、オセイアの秘石を発動したバージョンじゃ」
「うん」
フレイは、『gene……rating……power』とたどたどしく唱え、秘石を淡く輝かせてから、再び『fire』と唱える。
すると、突き出した右手から火が一直線に飛び、練魔石にぶち当たる。
秘石を発動させた火のほうが、格段に威力が強まっている。
「分かったか?」
「う、うん。何となく……」
フレイは、オセイアの秘石と練魔石を不思議そうに眺めながら言う。
「フレイが先に出した火は、制御されておらんから丸まって生み出される。しかし、オセイアの秘石を使うと、真っ直ぐに進むんじゃ」
「へぇ~。すごく便利」
フレイは、右手に嵌った指輪を顔の前に持ってきて、嬉しそうに見つめる。
モールは、少し首を捻って考え、おもむろに立ち上がる。
それから、奥の部屋へ行き、手のひらに収まるほどの小さな小箱を持って戻ってくる。
「フレイには、魔力を自在に操る訓練が必要じゃ」
モールは、小箱を開けて、透明な丸い小石がついた指輪を机に置く。
「これ、なに?」
フレイは、興味を引かれ、石が埋め込まれた銀色の指輪を覗き込む。
「これはな、オセイアの秘石じゃ。旧時代の遺物じゃな」
旧時代とは、ロシュフォール帝国より以前に栄えたベルテオーム族の時代のことで、その遺跡から発掘されたものを旧時代の遺物と呼んでいる。
「オセイアの秘石? これ……、すごく細かい魔法陣がいっぱい刻んであるよ」
秘石の表面には、一体どうやって刻み込んだのか、緻密で繊細な魔法陣がたくさん描かれている。
秘石が埋め込まれている指輪自体にも、国宝級の美術品さながらの模様があしらわれている。
「当然じゃな。ベルテオームが誇る歴代最高の魔法付与者ハティ・オセイアの作じゃからな」
ハティ・オセイアは、ベルテオーム時代の終期に突如として現れた天才魔法付与者である。
オセイアは、数々の名作と謳われる魔剣や魔道具を生み出し、そのいずれにも、女性ならではの細かい装飾を施している。
オセイアにまつわる伝説では、将来訪れるであろう災厄に備え、魔剣や魔道具を製作したと伝えられており、弟子たちの何名かに重要な命を下したもと言われている。
「へぇ~」
「オセイアは、魔法陣魔法の先駆者でもあるしの」
「この石は透輝石?」
「いや、オセイアの魔力を結晶化させた石じゃな」
モールも、どのような原理で魔力を結晶化させたのかは分かっていない。
だが、魔力感知からオセイアの魔力波長を確かに感じ取ることができる。
「ふ~ん……」
フレイは、しげしげともの珍しげに眺める。
「この石は、魔力を収束させる力を持つ」
「どういうこと?」
「簡単に言うと、フレイみたいに散らばりまくっておる魔力を集めて、一方向へ放出する手助けをしてくれるんじゃ」
「じゃぁ、僕でも上手く魔法が扱えるようになるの?」
「たぶんな」
モールは、そう言ってフレイの右手中指に指輪を嵌める。
「サイズは、ちょうどじゃの」
「うん」
「その石を発動させるには、『ジェネレイティングパワー』と唱えるんじゃ」
「ジェネ……? なに?」
フレイは、モールが教えてくれた詠唱がよく聞き取れず、思わず聞き返す。
「『ジェネレイティングパワー』じゃ。しっかりと、覚えよ」
「う、うん。ジェネ……レイ……ティングパワー……ね」
フレイは、たどたどしく呟き、少し自信なさげにする。
「アクセントが少々違うが……、まぁ、いいじゃろ。まずは、ほれ、これに向かって、『ファイヤー』を唱えてみよ」
モールは、先ほど自分が持ってきた小さな練魔石を机に置き、『absorb』と唱える。
練魔石は、先ほどと同じように淡い光を帯びる。
フレイは、右手を突き出し、『fire』と唱える。
すると、手のひらから火がぼわっと燃え上がり、ゆらゆらとしたあと、煙が吸い込まれるように、火が練魔石へ入っていく。
「では、次は、オセイアの秘石を発動したバージョンじゃ」
「うん」
フレイは、『gene……rating……power』とたどたどしく唱え、秘石を淡く輝かせてから、再び『fire』と唱える。
すると、突き出した右手から火が一直線に飛び、練魔石にぶち当たる。
秘石を発動させた火のほうが、格段に威力が強まっている。
「分かったか?」
「う、うん。何となく……」
フレイは、オセイアの秘石と練魔石を不思議そうに眺めながら言う。
「フレイが先に出した火は、制御されておらんから丸まって生み出される。しかし、オセイアの秘石を使うと、真っ直ぐに進むんじゃ」
「へぇ~。すごく便利」
フレイは、右手に嵌った指輪を顔の前に持ってきて、嬉しそうに見つめる。
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