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凍雪国編第5章
第37話 闇の情報屋パロおばさん4
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パロは、ダイザの話を聞き終え、眉間にしわを寄せて、腕を組む。
皇衛兵でもあるパロは、ミショウ村の住人に敬意を抱いており、その苦難を聞いて、心を痛めたのである。
また、パロは、闇ギルドのリビングデッドについても知っている。
パロが住むこの石組の建物は、貧民街からほど近い場所にあり、その動静もよく把握できている。
「あたしらに、弓を引く奴らは生かしておけないね」
ふんっと荒い鼻息をつき、パロは、率直な怒りを表現する。
「それで、ダー坊は、どうしたいんだい?」
パロは、宗主であるダイザの考えを問う。
パロ自身、ダイザに言われなくても協力する気だが、ダイザがどこまで求めているのかを知りたいのである。
「明日の夜、リビングデッドを潰します」
ダイザは、テムと決めたことをパロに告げる。
「はははっ。それは、いいね。あたしも、協力を惜しまないよ。何でも、言ってくれて構わないよ」
「まずは、情報をください。オンジからアジトの場所は聞きましたが、ギルド長の正体は不明のままですし、アジトにいる人数も分かっていません」
ダイザは、オンジから聞き得た情報をパロへ告げ、ダイザとテムがどこまで敵の情報を把握しているかについて話す。
「うんうん。ダー坊は、いい友達を持ったね。オンジ支部長なら、力になってくれるよ」
パロも、ヴァールハイトのことは知っており、その支部長であるオンジにも面識がある。
パロは、ダイザからオンジのことを聞き、我がことのように嬉しくなったのか、しきりに頷き、歯を見せて笑う。
そして、パロが知り得る情報を話し始める。
「リビングデッドは、最近できたギルドだよ。そうさね~、14、5年前ぐらいだったかな……」
パロは、頭を捻り、記憶を辿り出す。
「当時は、リビングデッドとは名乗らず、単に裏稼業を生業にする者たちが集まっただけだったんだけどね。あるときから組織化されて、闇ギルドになってしまったんだよ」
「あるとき?」
「前国主が亡くなった辺りからだね。そのときは、国都の中枢で権力争いが起きていて、都内の治安も悪化していてね。そのどさくさに紛れて、闇ギルドが結成されたのさ」
「誰が作ったんです?」
「カザイルとかいう流れの闇魔法師らしい。これは、あたしも詳しくは知らないし、確証が持てていない情報なんだけどね」
「それが、リビングデッドの長ですか?」
「違うよ。カザイルとかいう奴は、闇ギルドへの組織化を主導しただけで、長には就いていない。カザイルは、その後、国都を去ったらしいしね」
「では、長は、誰なんです?」
「ハリエンナ・ランドール。元ラオベンアーデルのギルド員だよ。おそらく、ダー坊は知らない人物だね」
ラオベンアーデルとは、『強奪貴族』とも呼ばれる大陸最大の闇ギルドである。
その本部は、ルシタニア帝都にあると言われており、構成員は千人を超えるとも言われている。
その名前は、国都外の情報に疎いダイザやテムでも知っているぐらいに有名である。
ただし、ダイザとテムも、その構成員までは知らないため、ハリエンナ・ランドールの名前を聞いてもピンと来ない。
「どのような人物ですか?」
「一言で言えば、暗殺に長けた人物。ただし、常に黒い外套を纏い、仮面をつけ、声音を変えているらしい。だから、その素顔までは特定できていないよ」
パロは、申し訳なさそうに答える。
「そこまで分かっていれば、充分です。あとは、何人いて、明日、アジトに何人が集まっているかですね」
「そうさね……。あたしが掴んでいる情報では、リビングデッドの構成員は、およそ30。その多くは、国都内で活動しているけど……、まずアジトには集まらないね」
パロは、ダイザの希望を見事に打ち砕く。
だが、ダイザとて、事がそれほど簡単に済むとは考えていない。
明日は、アジトを焼き払い、そこにいる者たちを逃がさなければよいのである。
皇衛兵でもあるパロは、ミショウ村の住人に敬意を抱いており、その苦難を聞いて、心を痛めたのである。
また、パロは、闇ギルドのリビングデッドについても知っている。
パロが住むこの石組の建物は、貧民街からほど近い場所にあり、その動静もよく把握できている。
「あたしらに、弓を引く奴らは生かしておけないね」
ふんっと荒い鼻息をつき、パロは、率直な怒りを表現する。
「それで、ダー坊は、どうしたいんだい?」
パロは、宗主であるダイザの考えを問う。
パロ自身、ダイザに言われなくても協力する気だが、ダイザがどこまで求めているのかを知りたいのである。
「明日の夜、リビングデッドを潰します」
ダイザは、テムと決めたことをパロに告げる。
「はははっ。それは、いいね。あたしも、協力を惜しまないよ。何でも、言ってくれて構わないよ」
「まずは、情報をください。オンジからアジトの場所は聞きましたが、ギルド長の正体は不明のままですし、アジトにいる人数も分かっていません」
ダイザは、オンジから聞き得た情報をパロへ告げ、ダイザとテムがどこまで敵の情報を把握しているかについて話す。
「うんうん。ダー坊は、いい友達を持ったね。オンジ支部長なら、力になってくれるよ」
パロも、ヴァールハイトのことは知っており、その支部長であるオンジにも面識がある。
パロは、ダイザからオンジのことを聞き、我がことのように嬉しくなったのか、しきりに頷き、歯を見せて笑う。
そして、パロが知り得る情報を話し始める。
「リビングデッドは、最近できたギルドだよ。そうさね~、14、5年前ぐらいだったかな……」
パロは、頭を捻り、記憶を辿り出す。
「当時は、リビングデッドとは名乗らず、単に裏稼業を生業にする者たちが集まっただけだったんだけどね。あるときから組織化されて、闇ギルドになってしまったんだよ」
「あるとき?」
「前国主が亡くなった辺りからだね。そのときは、国都の中枢で権力争いが起きていて、都内の治安も悪化していてね。そのどさくさに紛れて、闇ギルドが結成されたのさ」
「誰が作ったんです?」
「カザイルとかいう流れの闇魔法師らしい。これは、あたしも詳しくは知らないし、確証が持てていない情報なんだけどね」
「それが、リビングデッドの長ですか?」
「違うよ。カザイルとかいう奴は、闇ギルドへの組織化を主導しただけで、長には就いていない。カザイルは、その後、国都を去ったらしいしね」
「では、長は、誰なんです?」
「ハリエンナ・ランドール。元ラオベンアーデルのギルド員だよ。おそらく、ダー坊は知らない人物だね」
ラオベンアーデルとは、『強奪貴族』とも呼ばれる大陸最大の闇ギルドである。
その本部は、ルシタニア帝都にあると言われており、構成員は千人を超えるとも言われている。
その名前は、国都外の情報に疎いダイザやテムでも知っているぐらいに有名である。
ただし、ダイザとテムも、その構成員までは知らないため、ハリエンナ・ランドールの名前を聞いてもピンと来ない。
「どのような人物ですか?」
「一言で言えば、暗殺に長けた人物。ただし、常に黒い外套を纏い、仮面をつけ、声音を変えているらしい。だから、その素顔までは特定できていないよ」
パロは、申し訳なさそうに答える。
「そこまで分かっていれば、充分です。あとは、何人いて、明日、アジトに何人が集まっているかですね」
「そうさね……。あたしが掴んでいる情報では、リビングデッドの構成員は、およそ30。その多くは、国都内で活動しているけど……、まずアジトには集まらないね」
パロは、ダイザの希望を見事に打ち砕く。
だが、ダイザとて、事がそれほど簡単に済むとは考えていない。
明日は、アジトを焼き払い、そこにいる者たちを逃がさなければよいのである。
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