学校の怪談

結城朔夜

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第一章 鏡の間

case.6

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皆が家庭科室へと向かう中、ふと、桜花は一人で駆けていった郁斗を心配していた。

「いっちゃん…また一人で走り廻って。探す私のことも考えて欲しいな」
「大変ですね。それにしても郁斗さん、本当にどこへ行ったんだろう?」
「まぁいずれはどこかで会えるかもしれないし、今は先に進もう」

和也の言葉に桜は心配そうな表情のまま頷き、皆で家庭科室へと急いだ。
2階の中央付近と言ってはいたが、相変わらず迷路のような廊下に彷徨い続けて、ようやく家庭科室へと辿り着くことが出来た。

「よし、じゃあ入るぞ…」

慎重に扉を開き、何も起きないことを確認して、和也を先頭に皆が家庭科室の中へと入っていく。
念のため周りを見渡しても、特に気にするようなモノもなく、入り口の脇にある大きな姿見だけが、異様に存在感を醸し出していた。

「何か、嫌に存在感あるな、この大きい鏡」
「確かに。もしかしてあの子が言ってた鏡ってこの事かしら?」
「他にそれらしいモノもないし、たぶんそうだろうな…それでどうするんだ?見たところ誰も居ないぞ。閉じ込められてるって言っても、そんな何人も入れる場所なんて、此処にはないし……?」

一通り見渡しても、家庭科室の中は作業台の机が並んではいるモノの、何人もの人が入れる場所は確かになかった。

だが、二葉は気付いてた。
先ほどから、こちらを伺っている視線が向けられていることを。
恐る恐る視線のする方へと顔を向けると、先ほどの姿見の中に、見知らぬ女の子の姿が映っていた。
その女の子は、二葉に向かってにやりと口角を上げると、二葉は怖くなって一葉の服の裾を掴んですり寄った。

「ん?どうした二葉。何かあった……え?!」

二葉の異変に気付き、一葉が振り向くと、姿見の中にいる女の子に気付き、声をあげた。

「誰か居る……!!鏡の中に、女の子が!!」
「え?!」

一葉のその声に皆が姿見の方へと視線を向け、驚愕した。

「…どういうこと?鏡の中に、人がいる……」

皆が鏡の中の女の子へと視線を向けて、驚きの表情を浮かべていると、鏡の中の女の子はどこか楽しそうににやりと口元を歪めて。
そして手を伸ばすと、何と鏡の中から腕が伸びてきて、一番近くに居た二葉の腕を掴み、引きずり込もうとしてきた。

「っ!!」

一瞬のことで皆が唖然としていたが、一葉が咄嗟に反対の腕を掴んで食い止めようとするが、ものすごい力で引き摺られて。
何とか和也達も動いて鏡の腕を引き剥がすことができた。
しかし、鏡の女の子は再び腕を伸ばし、今度は家庭科室の壁に掛けられていた時計の針を動かし始めた。
そして時計の針を7時16分16秒に合わせると、鏡に向けた。
鏡に映った時計が急に歪んで、そこから今度は別の男の子が現れた。

『ヒヒヒ…。久々の外の世界、やっと出られたぜ』

その男の子が両手でガッツポーズを組むと、『サンキュー、巫子(みこ)』と言ってこちらに視線を向けた。
そして次の瞬間、男の子の影が突然うねうねと動き出し、カタチを変えていくとやがて大きな鎌へと変化した。
そして「みこ」と呼ばれた鏡の中の女の子は、男の子に向かって告げる。

『精一杯遊んであげなさい、永遠(とわ)。それで飽きたら、また私が貰うから』
『了解!』

「とわ」と呼ばれた男の子は、影から出来た大鎌を手に持ち、にやりと口元を歪めて。

『鬼ごっこをしましょう?永遠に捕まったら、私の玩具にしてあげる。さあ、では始めましょう!』

そう言って、巫子が合図をすると、永遠がカウントダウンを始めた。

「まずいな…とりあえず、逃げるぞ!」

和也が叫んで、皆がいっせいに走り出した。
そしてカウントを言い切った永遠は、「ヒヒヒ…」と不気味に笑って、ゆっくりと動き出す。
その手に持った大鎌を担ぐように持って。

「やばいやばいやばい!あれ絶対ヤバいって!!」
「そんなこと言ってないで、さっさと走りなさい!」
「皆一緒だとまずいな…とりあえず別れて逃げよう。落ち着いたらどこかでまた合流しよう」

「それじゃあ…」と言って、とりあえず二手になって校舎内を逃げることにした。
その後から、最初はゆっくりとした動きをしていた永遠が、『じゃあ行くぞ』と言うと、床を蹴って走り出した。

一葉は足が遅い二葉の手を引きならが、懸命走り回った。
途中、階段を見つけて、3階へ逃げることにして、どこか身を潜められる場所がないかを探し回った。
その間にも、永遠はじりじりとその距離を縮めていく。

「二葉!頑張って走れ!アイツがもうそこまで来てる!!」
「はぁはぁ…お兄ちゃん…!」
「だめだ、このままじゃ追いつかれる…!」

そして角を曲がったところにちょうど音楽室の扉が開いているのに気付き、咄嗟にその中へと逃げ込み、机の影に隠れながら、息を潜めてじっと待っていた。

―――――ずりっ ずっ ずりっ

大鎌を引き摺っているのだろうか?
重たい何かを引き摺るような音が聞こえてくる。
そして時偶『キヒヒ…』と不気味な笑い声も聞こえてきた。

(どうかそのまま通り過ぎて行ってくれ……!)

心の中でそう願いながら、永遠が通り過ぎるのを待った。

―――――ずりっ ずっ ずりっ

しかし、音楽室の前で音が止まると、しばらくの間、静寂が訪れる。

―――どくん、どくん

心臓の音が聞こえるのでは無いかと言うくらいに、うるさく感じて。
ぎゅっと目を瞑り、皆が息を呑んでじっとしていると、ガシャーン!という音が鳴り響いた。

永遠が要り繰り近くの机を蹴り飛ばしたのだった。
そして、遅疑次に机を蹴飛ばしていき、一葉達が隠れて居る場所へと近づいてくる。

ガシャーン!
ガシャーン!

『ヒヒヒ…隠れても無駄だ。出てこいよ…なぁ……』

どんどんと近付いてくる。
そして、すぐそばの机が蹴飛ばされて…。
永遠は手に持っていた大鎌を振り上げて、一葉達を見下ろした。

『………みぃ~つけた』
「っ!!!」

振り上げられた大鎌を一気に振り下ろして。
咄嗟に逃げ切った一葉達は、その勢いのまま再び走り出す。
しかし、蹴飛ばされた机の脚に和也が足を引っかけて、転んでしまう。

「あっ!!」
「…っ和也!!」
「俺に構うな!早く行け!!」
「でもっ!」
「いいから!此処で皆捕まったらダメだ!だから早く行け!!」
「くっ……」
「お兄ちゃん……」

二葉が不安そうな表情で見つめてくるが、その間に永遠が大鎌を床から引き抜き、こちらへと向かってきていた。

「絶対、助けに行くからな、和也!!」

そう叫んで、「行こう!」と二葉の手を再び掴んで、桜花もその後に続いて走り出した。

『ヒヒ…お友達とのお別れは済んだか?』
「ああ。で?捕まったらどうなるって?」
『俺はお前らを捕まえるだけ。その後は巫子のお楽しみってとこだよ。じゃあな、せいぜい巫子を楽しませてやれよ?』
「………」

ニタニタと笑う永遠に、和也は無言で睨み付ける。
すると先ほどまで静かだった音楽室に、突然カチコチと時計の針を刻む音が響いて。
良く見ると、永遠の真横に置き時計があるのが見え、その時計が急に動き出したのだった。
振り子のある扉がガラスで出来ていたためか、そこが反射して鏡のようになっている。
そう気付いたときには、もう遅かった。

扉のガラス面から巫子が姿を現し、再び腕を伸ばしてきた。

(ここまでか…)

そう断念すると、和也の体は鏡になったガラス面の中へと引き摺りこまれていき、そのまま消えていった。

ドサッと投げ出されると、そこはたくさんの鏡で周りを囲まれた場所だった。
その中心には何人かの子供がいた。
皆和也と同じように、此処へ閉じ込められたのだろう。
すると、一人の女の子が声を掛けてきた。

「あなたも捕まってしまったの?」

その声は、先ほど電話で聞いた声だった。

「君は…電話で話しかけてくれた子?ごめん、助けるどころか捕まってしまって……」
「ううん、いいの。声が届いただけでも、嬉しかったから。私は伊泉梓帆(いずみ しほ)です。こんな状況だけど、よろしくね」
「俺は瀧本和也だ、こちらこそよろしく。それにしても、此処はいったいどうなってるんだ?鏡の中って感じか……?」
「たぶん、そうなんだと思う。私は放課後に忘れ物をして、取りに行った帰りに、トイレに寄ったら、鏡の中に女の子が現れて、そのまま引き摺り込まれたの。他の子達も同じように、その女の子に引き摺り込まれたって言ってる。抜け出そうにも、鏡以外何も無くて、どうしようもなかったんだけど……」

梓帆は落ち込んだ表情で他の子達の方へと顔を向けた。
他の子達はどうしようもない状況で、このまま帰れないのでは泣いている子が居たり、呆然と踞っている子も居たりと、状況は最悪だった。
そこへ、周囲の鏡に巫子の姿が映り込んだ。

『ようこそ、新人さん。さぁ、また皆で一緒に遊びましょう?』
「っ!!」

巫子の姿を見て、皆が恐怖の表情を浮かべている。
その様子からして、和也は普通の遊びじゃないのだと悟った。

「遊ぶって…何をするんだ?」
『ふふ、簡単な遊びよ?みんなで鬼ごっこするだけの話。ね、簡単でしょう?』
「……その割にはみんな楽しそうではないんだけど、どうしてかな?」
『さぁ?疲れてるだけじゃない?でも大丈夫。ここには時間なんて関係なく、いくらでも遊べるんだから。さぁ、みんな早く準備して!』

巫子がそういうと、皆は嫌々ながらも体を起こしていた。
そして巫子の『それじゃあ、始め!』という掛け声とともに、皆が散り散りになって走り回っていた。

(こっちでも鬼ごっこかよ……)

そんなことを思いつつ、なぜ皆こんなになってまで巫子の言いなりになってしまっているのか?
その疑問は後に身をもって知ることになるのだった。

一方、何とか逃げ切った由宇たちは、校舎内を走り回って、同じく階段を見つけて一階へと下り、すぐ傍にあった保健室へと逃げ込んでいた。
息を潜め、耳を澄まして、追っ手が来る気配がないことを確認すると安堵し、大きく息を吐いた。

「逃げ切れた…のか?」
「たぶん、ね。でも油断はできないわ。それに…ここも、ちょっとまずいかもしれない」

愛依の言葉に、「何が?」と言いかけて、由宇もその意味に気付いた。
中に入って教卓用の机の前の壁に手洗い用の洗面台が付けられてある。
そこに鏡が付いていたのだった。

「まずいわね。永遠って子は撒けても、巫子って子にはまた捕まる可能性が高いわ…」
「マジですか…じゃあここに逃げ込んだ意味、なくない…?」
『…それだったら、大丈夫だよ』
「「え…?!」」

突然、第三者からの声に驚き、声のした方へ向くと、いつからいたのか、そこには見知らぬ男の子がたたずんでいた。

「だ…誰?!ってか、いつから居た?!」
『君たちが入ってきた時から居たよ?たぶん、僕の影が薄いからいつも気づいてもらえないだけ』
「そう…なのか?」
『…うん』

そう言われても、実際のところ単に暗闇の中に紛れていただけで、気づかなかっただけかも、なんて思ったりもして。
しかし、よく見て見れば、その少年の姿がうっすらと透けて見える気がして。
彼がいる場所は、ベッドカーテンの前。
そのカーテンが少年の姿からうっすらと見える感じがするのだった。

「…あの~。つかぬことを聞きますが…。あなたもしかして、幽霊…?」

何気に直球で質問をする由宇に愛依が肘打ちをした。
「いきなり失礼でしょ」と小声に怒るも、本当に透けて見えているので、何と聞けばいいのか悩んでいると。

『幽霊っていわれれば、そうかな?それと、僕、此処から動けないんだ』

なんて、その少年は答えていた。
動けない、と言うことは地縛霊なのだろうか?
でも何故、保健室に居付いているのか?
疑問が疑問を呼び、頭を抱える愛依に、少年は丁寧にこう答えていった。

『そう言えば、未だ自己紹介してなかったね。僕は来栖切名(くるす せつな)。皆には保健室の死神って呼ばれてるみたいだけど。あのふたりとは知り合いで、鏡の中の子は花芽巫子(かが みこ)ちゃん、それに、お付きの男の子は岬永遠(みさき とわ)くん。二人も僕と同じ幽霊って呼ばれるのかな?あ、でも永遠くんは幽霊っていうより、悪魔って感じかな?』

「あ、悪魔…なのか?」
『うん…。それで、君たちは?』
「あ…、俺は御坂由宇。こっちは黒瀬愛依と、その双子の弟妹で梨音と那音。…永遠って子が悪魔って、どういうこと?」
「またあんたって奴は…」

「直球過ぎるでしょ」とまた愛依が肘打ちをして。
そんなふたりのやりとりを、切名はぼんやりと眺めている。
その様子から見て、あのふたりとは知り合いだそうだが、そこまで危害を加える感じではないと判断して。

『悪魔は悪魔だよ。だって永遠くん、影を自由自在に操れるから。それに、悪戯ばかりしてるし……』
「影を自由自在に…確かにそうだったな。普通の人間じゃまず出来ないことだしな」
「……それで、さっきの話だけど。此処は大丈夫って、どうしてそう言えるの?」

その愛依の問いに、切名は、『ああ…』と思い出したかのように返事をして。
その理由を説明してくれた。

『此処の鏡、紅映(くれは)に薄くピンクを塗って貰ってるから。あ、紅映ってのは、美術室に篭もってる子で、四縞紅映(しじま くれは)っていうの。その子絵が好きで、いつも何かの絵を描いてるんだけど、巫子ちゃんと永遠くんのいたずらが過ぎるから、お仕置きで鏡に出てこられないように、封印の色を塗ってもらったんだ。巫子ちゃんが媒介にしてるのは、呪いの紫に染まった鏡が主で、紅映が塗ったピンクはそれとは逆で幸運の色だから。…って、感じなんだけど。意味通じる?』
「え~っと…たぶん……?」
「なんで私を見るのよ。でも、大体は分かったわ。その紅映って子が、此処の鏡に巫子って子を出てこられないようにしてるのね。…あれ?でも、じゃああなたはどうやって、ほかの子たちと連絡を取り合ってるの?あなたは確か、ここから出られないのよね」

ふと、疑問に思ったことを聞くと、切名は丁寧にまた答えてくれた。

『ああ、それは僕の言い方が足りなかったみたいだね。巫子ちゃんたちは鏡に実体化できないってだけで、声は伝わるんだ。だから、何かあるときは呼び掛けて、連絡を取り合ってるんだ。…たぶん、今も隠れてこの会話も聞いてると思うけど』

そう言って切名は鏡の方へ向き、コンコンッと鏡をはたくと、「きゃっ」っという声が聞こえてきた。
「やっぱり…」とつぶやいて、鏡に向かって呼び掛けた。

『巫子ちゃん、隠れてないでこっち来なよ』

そう鏡に呼びかけると、鏡の中に影が映り込んだ。
実体化は出来ないと言っていたが、本当に姿は映らずに、影だけがうっすらと見えるだけだった。
しばらくしてから、不機嫌そうな巫子の声が聞こえてきた。

『……もう、せっかく楽しんでいたのに。邪魔しないでよね』
『またいつもの遊びしてるの?いい加減、解放してあげたら?』
『嫌よ、せっかく見つけた遊び相手なのに…。また一人ぼっちでいろっていうの?』
『君が見つけたんじゃないでしょう。それに、いつまでも閉じ込めたら可哀想だよ。捕まえてきた子達は、もう帰してあげよう?』
『……嫌だって言ったら、怒る…?』
『………たぶん』
『………』
『………』
『………わかったわ』

しばらく間をおいてから、そう返ってきたが、声の調子からして、不服といった感じだろう。
切名はため息をつき、『じゃあ解放してあげて』というが、巫子は『今は嫌』と言って聞かない。

『せっかく新しい子が来たのに、一緒に遊ばないまま帰すなんて、絶対に嫌!』
『巫子ちゃん、いい加減にしないと、……本当に怒るよ?』

急に切名の口調が強くなり、ポケットから何かの紙切れを出して鏡に向けると、巫子が慌てるように声を上げた。

『まって、それはやめて!とりあえず、半分だけ帰してあげる。……それじゃあ、ダメ?』

巫子の言葉に、切名は黙って、こちらへと視線を向き直した。

『そう言ってるけど、いいかな?新しく来た子って、もしかしたら君たちの知り合いかもしれない。たぶんその子は、解放されないかもしれないと思うけど……』

そう切名に言われて、愛依は一葉たちの誰かが捕まったのだと知り、表情を曇らせた。
それに、こんなわけのわからない場所で助けようにも、皆が無事に元の場所へ戻れる保証はない。
どうしたものかと悩んでいると、巫子が付け加えでこう言ってきた。

『ちゃんと元の場所へ返してあげるわ』

それならと愛依は承諾し、それでいいと答えた。
しかし、それでもまだ半分の子たちは解放されずに捕らわれたままだ。
どうやって全員を解放させるか、頭を悩ませていると、切名がある提案を言ってきた。

『何だったら、紅映にも協力してもらう?』
「確か美術室に居る子だったわね。そうしてもらえるなら助かるけれど…今連絡は取れるかしら?」

わらにもすがりたい思いで、出来るコトなら何でも試した方が良いと想い、その提案を受け入れ、連絡が取れるとのことなので、お願いした。

『ちょっと待ってて』と、切名が鏡に何かを書き込んでいる。
すると、鏡の色が真っ白に変わって、何かの文字が浮かんできた。

『大丈夫、美術室で待ってるってさ。場所分かる?』

そう言われて、この校舎内の配置が分からないのを思い出して。
簡単な配置場所を確認して、美術室へ向かうことにした。

その前に一葉達に一度連絡が取れないかと、スマホで電話を掛け、何とか繋がった。

「もしもし、一葉?聞こえる?」
「ああ、きこえてる。けど、ごめん。今あまり長く話せる状況じゃないかも…」
「それなら一応は大丈夫よ。こっちで何とか出来そうだから。それより、これから美術室に来てもらいたいんだけど、今どの辺りにいるか分かる?」
「え~と…たぶん。今3階に上がってきたけど、職員室の前にいる」

切名から、職員室の場所を聞いて、そこから美術室へのルートを確認して伝えると、「美術室で待ってるわ」と告げた。

「本当に大丈夫なのか?」と言う問いに、後で説明するから、といい電話を切った。

「じゃあ、行きましょう。いろいろとありがとう、来栖くん」
『うん、行ってらっしゃい』

そうして、それぞれが美術室へ向けて移動することになった。

そんな中、独り行動を別にしていた郁斗は、図書室へと来ていた。

「にゃ~お」

足元には、あの黒猫が寄り添ってきている。
それに構わず、郁斗は本棚から1冊の古い本を取り出し、手に取った。
しばらくの間、その本をじっと見つめて。
ふと、壁に掛けられていた時計を見ると、時刻は午前3時半を廻っている。

「………」

無言のまま、視線を本の方へと戻して、何故か、にやりと口元を歪めた。
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