学校の怪談

結城朔夜

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第三章 真白の闇

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「………紅映さん、“この世界の外”にいるかもしれない」

二葉の言葉に、一葉と愛依と愛鈴は困惑しながらも顔を見合わせる。
そして同時に紅映もまた、驚きを隠せずにいた。

『あの子………、結構鋭い感性を持っているわね………』

そう呟きやんわりと口元に笑みを浮かべると『さて、どうしましょうか………?』と首を傾げながらこの状況を楽しんでいた。

「この世界の“外”って、どういう事だ?」
「そのままの意味。本物の紅映さんは、この世界には居なくて“外”の世界に居るの」
「………この世界の他にも、平行世界みたいな物が存在しているってこと?パラレルワールド的な?」
「簡単に言えばそうだけど………別の異空間が存在していて、そこに本物の紅映さんがいるのかもしれない」
「う~ん………何かややこしいけど、とりあえず本物の紅映さんに会うには、その“別の異空間”に行かなければ会えないってわけかしら?」
「たぶん………そうだと思う」
「マジか………」

なんとなく理解したところで、状況が変わるわけもなく、結局の所袋小路に嵌まってしまったまま。
此処からどう切り抜けるかを考えたところで、良い案が浮かばないのもわかっていたので、ここは一旦捜索を中断して皆で集まり打開策を考えようという事になった。

「まずは、皆に連絡だな」
「じゃあ私は梨音たちに連絡を入れるわ」
「わかった。こっちは和也に連絡してみるよ」

そう言いそれぞれに連絡を取ると、由宇と梨音たちが一緒に居ること、和也が単独でいることがわかって。
とりあえず一度美術室へ集まろうと声を掛けて、皆が集まるのを待った。

「そういや、和也と由宇はなんで別行動していたんだ?」
「それは話せば長いことになるから、あとでな。それより、何か進展でもあったのか?」
「進展ってわけでもないんだけど………。とりあえず一度皆に情報共有ってことで、集まってもらったんだ」

そうして二葉の言葉を皆に伝えると最初は驚くも、しかしながらこれだけ探しても“本物”に辿り着けない理由を、なんとなく感じていたのだろう。
皆、どこか納得したような表情を浮かべていた。

「それで、その“別の異空間”って所に行くのに、考えが及ばないってことか?」
「話が早くて助かるよ。そうなんだ、だから皆の考えを聞かせて欲しくて、一度集まってもらったんだ」
「そうは言っても、突然聞かれても何も良い案は浮かばないぞ」
「それを考えるために集まったんだろう?つべこべ言わずに何か考えろ」
「うるせーな、わかってるよ」

何やら由宇と和也の仲が険悪なコトに気付いて、一葉と愛依は困惑しながら顔を見合わせる。
由宇と和也がペアで行動していなかったのは、おそらくこの仲違いが原因だろうと察して。
何が原因で仲違いしたのかはわからないが、今は別のことに頭を使おうと意識を切り替える。

「そもそも、その“別の異空間”って存在自体どうなってるのかがわからなくないか?たとえば、この空間と同じような感じなのか、それともまったく別の空間なのか………」
「流石にそこまでは解らないけど………でも、存在してるのは確かな筈なんだ。この世界とは別の世界が存在していて、そのどれかに僕たちも紛れ込んだと言えば良いのかな。幾つもの異空間が存在していて、それが枝分かれして居るみたいな………」
「何か難しくて頭がパンクしそう………。だけど、なんとなく理解は出来るよ。俺たちの居るこの空間も、その枝分かれしてるうちのひとつってこと、で合ってる?」
「ああ。問題はその異空間同士の接点について何だけど、何がきっかけで接点が出来るのかがわからないんだ。何か見落してる気がしてる気もするんだけど………それが何かがわからないってこと」
「異空間同士の接点ね………。そう言えば、私たちがこの異空間に飛ばされる時って、今回も前回も“空間の歪み”があったじゃない?もしかして、それが関係しているとか?」
「っ!?愛依、ビンゴだ!確かに、僕たちはその“空間の歪み”に巻き込まれて、この異空間に飛ばされている。だとしたら、その“空間の歪み”の発生原因を調べれば“別の異空間”にも移動できるかもしれないってことだ」
「そう、なの?よくわからないけれど………でも、まだ何かある気がするのよね」

愛依はまだ何か腑に落ちない転があるようで、まだ首を傾げて考え込んでいる。
和也が指摘したとおり“空間の歪み”の発生原因を何とか調べられないかと、模索していた。
実際、発生原因を突き止めようとも、まだ情報が足りない。
そもそも何故“空間の歪み”が、そして“別の異空間”までもが存在するのか?
皆、頭をフル回転させるもやはり情報不足のためか、手がかりになりそうな物が何も無い。

「う~ん、さてどうしたものか………?」

皆で悩んでいると、ふと愛依が言葉を漏らす。

「接点………原因………きっかけ………?もしかして………」
「何か思いついたのか?愛依」
「う~ん、まだ大まかな過程にしか過ぎないんだけど………。愛鈴さんのいた空間と繋いでいたのが“音”だったなって思い出して………。それだけなんだけどね」
「“音”が空間を繋いでいた………?確かに、言われてみればそうだったな。でも、それが何か関係していれば良いんだけど………」
『“音”って言えば、これも関係あるのかな………?』
「え?それって………楽譜、ですか?」
『ええ。昔、紅映と一緒に作ってた物なんだけど………。何かきっかけになれば良いのだけれど』

そう言って、愛鈴が手に持っていた楽譜を机に置き、皆が囲んで覗いていた。
まだ作りかけらしく、所々書き直したような跡がいくつか見受けられる。

「これ、まだ書きかけなんですね」
『ええ。これを書き上げる前に私は死んでしまったから………もう完成することはないと思うけど』
「そう、ですか………。でも良く残ってましたね。何処に在ったんですか?」
「屋上の給水タンクの陰に隠していたみたい。私もさっき話を聞いたんだけど」
「っていうか、さっき紅映さんと一緒に作っていたって言ってましたよね?もしかしたら、何かの手がかりになるかもです」

そう言い、一葉はその楽譜を1枚ずつ並べていく。
最後のページは途中までしか書かれていないが、曲自体はある程度出来ているみたいだ。
見た感じはただの楽譜だが、愛鈴と紅映の共同創作となれば、何かしらきっかけは掴めると思ったのだ。
並べただけでは何も起きることもなく、まだ何かないかと模索して。
そして何気なく、愛鈴にこの曲のメロディはどんななのかを聴いてみると、鼻歌でハミングしてくれた。

~♫♪ ♩♩♩♩ ♪♪ ♪~

すると、そのハミングに合わせて楽譜の文字が浮かび上がっていき、やがて光る蝶へと姿を変えた。

「ビンゴ!やっぱりこれがトリガーになってる!」
「あとはこの蝶が何かを示してくれれば良いんだけど………」
「そう上手く行くかしら………?」

そう言うや否や光る蝶はひらひらと宙を舞い、やがて壁の所に止まると、まるで水に溶けるかのように消えた。
そして代わりに現れたのは、例の空間の歪みだった。

「嘘でしょう………」
「でも、これで空間移動が出来るはずだ」
「………これ、マジで通っても大丈夫なやつ?」
「それはわからないけど、行ってみる価値はあるだろう」
「だよな………。できれば、紅映さんのところへ繋がってくれれば良いんだけど………」
「とりあえず、行ってみましょう」

そうして、皆がその空間の歪みの中へと、ひとりずつ飛び込んでいった。

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