4 / 32
はじまり
再会
しおりを挟む
3月末。
新しい年度の始まりを告げるように、桜が薄淡い華を咲かせていた。
そこへひとりの少年が自転車に跨り、颯爽と駆け抜けていく。
彼の名は一之瀬圭(いちのせ けい)。
地元の中学に通う14才。
春からは3年生と成り、受験勉強のため近くの塾からの帰り道だった。
ふと、ある小路を曲がったところで、圭は自転車を止めた。
その視線の先に、今日越してきたのだろうか引っ越し業者の車と一緒に、一台の自動車が止まっていた。
その車から出てきた二人に、見覚えがあったのだ。
「………もしかして………!?」
そう呟き、圭は急いで二人のもとへと自転車を走らせた。
そして、その二人も圭に気付き、驚いたような笑顔を浮かべていた。
「やっぱり!帰ってきたんだな、俊。それに弥月ちゃんも…!」
「圭君?!久しぶり!元気だった?」
「ああ。もしかして、また一緒にいられるのか?」
「うん。皆に会えるの、楽しみにしてたんだ。圭君、元気そうで良かった!」
「ああ、………って、俊は相変わらずな感じだけどな」
「ふふ、言われてるよ?お兄ちゃん」
「………」
嬉しそうに話す彼女の名は架山弥月(かやま みつき)。
その隣に佇んでいるのは、その兄の架山俊(かやま しゅん)。
小学生の頃、親の転勤で引っ越していった幼馴染だった。
懐かしさに二人は話に夢中になってる中、俊は一人ぼんやりと圭を見つめて、そのまま何も言わず家の中へと入って行ってしまう。
「………って、おい俊。流石に何も言わずに去るのはどうかと思うぞ?」
「………」
一瞬立ち止まるが、やはり何も言わずにそのまま家の中へ入っていく俊に、圭が訝しげに見つめていると、弥月は何故か悲しそうな顔をして「お兄ちゃん…」と呟いた。
「………多分、疲れてたんだよ。もともとお兄ちゃん、あまり話さないし、………ね」
フォローするかのように、弥月の言葉に「そっか………」と返し、未だ引っ越し作業の途中だったことを思い出して、圭は「じゃあまた今度ゆっくり話そう」といい、自宅へと自転車を走らせた。
(あいつ、何か向こうであったのかな………?)
そんな疑問を抱きつつ、圭は二人が帰ってきたことを嬉しくも思い、家に着いてから早く新学期が来ないかと、胸を躍らせていた。
4月。
新学期を迎え、誰もがそわそわしていた。
小さな町なので中学が一つだけしかなく、この地域の子達はほとんどがこの四葉台中学に通っている。
慣れ親しんだ仲間達と仲を深めたり、別の小学校だった新たな友人関係を築いたり、それぞれに不安と期待で胸がいっぱいだった。
3年になる圭達もまた、進路や将来に向けて、不安と期待に胸をざわつかせていた。
そして迎えた新学期初日。
今日は午前中に始業式と簡単な連絡事項だけを行い、午後から入学式があるという。
入学式はあらかじめ決まった在校生が出席するので、とりあえず連絡事項だけを聞きそのまま帰宅することになっていた。
そして、全ての連絡事項を終え、皆が帰宅の準備をする中で、早速、好奇心旺盛な生徒が、俊に話しかけ始めた。
中には、昔一緒だった小学校の子達も混ざって、「久しぶり」と挨拶を交わす。
俊は緊張しつつも笑顔で「ただいま」と返すと、クラスメイトはその表情にほんわかした雰囲気を漂わせていた。
外見が華奢で中性的な顔立ちなこともあって、女子の間では早速話題になっていたのだ。
その後も、クラスメイト達からあれこれ質問責めにあうが、ちょうど同じクラスになった圭が仲裁に入り、「こいつあまり責め立てると萎縮するから、加減してやってくれ」と言うと、女子達がブーブー文句を言いつつも「あまり迷惑かけちゃ悪いからね」とそのまま引き下がってくれた。
しかし翌日以降、クラスメイトは俊が教室に来ないことに気付いたのは、2~3日経ってからのことだった。
実は俊は教室へは行かずに、毎日保健室にいる。
所謂、保健室登校をしているのだった。
そのことを知らなかった圭も疑問に思い、ちょうど登校してきた弥月にそれとなく聞くが、なぜか口を濁らせてはっきりと答えてはくれなかった。
新しい年度の始まりを告げるように、桜が薄淡い華を咲かせていた。
そこへひとりの少年が自転車に跨り、颯爽と駆け抜けていく。
彼の名は一之瀬圭(いちのせ けい)。
地元の中学に通う14才。
春からは3年生と成り、受験勉強のため近くの塾からの帰り道だった。
ふと、ある小路を曲がったところで、圭は自転車を止めた。
その視線の先に、今日越してきたのだろうか引っ越し業者の車と一緒に、一台の自動車が止まっていた。
その車から出てきた二人に、見覚えがあったのだ。
「………もしかして………!?」
そう呟き、圭は急いで二人のもとへと自転車を走らせた。
そして、その二人も圭に気付き、驚いたような笑顔を浮かべていた。
「やっぱり!帰ってきたんだな、俊。それに弥月ちゃんも…!」
「圭君?!久しぶり!元気だった?」
「ああ。もしかして、また一緒にいられるのか?」
「うん。皆に会えるの、楽しみにしてたんだ。圭君、元気そうで良かった!」
「ああ、………って、俊は相変わらずな感じだけどな」
「ふふ、言われてるよ?お兄ちゃん」
「………」
嬉しそうに話す彼女の名は架山弥月(かやま みつき)。
その隣に佇んでいるのは、その兄の架山俊(かやま しゅん)。
小学生の頃、親の転勤で引っ越していった幼馴染だった。
懐かしさに二人は話に夢中になってる中、俊は一人ぼんやりと圭を見つめて、そのまま何も言わず家の中へと入って行ってしまう。
「………って、おい俊。流石に何も言わずに去るのはどうかと思うぞ?」
「………」
一瞬立ち止まるが、やはり何も言わずにそのまま家の中へ入っていく俊に、圭が訝しげに見つめていると、弥月は何故か悲しそうな顔をして「お兄ちゃん…」と呟いた。
「………多分、疲れてたんだよ。もともとお兄ちゃん、あまり話さないし、………ね」
フォローするかのように、弥月の言葉に「そっか………」と返し、未だ引っ越し作業の途中だったことを思い出して、圭は「じゃあまた今度ゆっくり話そう」といい、自宅へと自転車を走らせた。
(あいつ、何か向こうであったのかな………?)
そんな疑問を抱きつつ、圭は二人が帰ってきたことを嬉しくも思い、家に着いてから早く新学期が来ないかと、胸を躍らせていた。
4月。
新学期を迎え、誰もがそわそわしていた。
小さな町なので中学が一つだけしかなく、この地域の子達はほとんどがこの四葉台中学に通っている。
慣れ親しんだ仲間達と仲を深めたり、別の小学校だった新たな友人関係を築いたり、それぞれに不安と期待で胸がいっぱいだった。
3年になる圭達もまた、進路や将来に向けて、不安と期待に胸をざわつかせていた。
そして迎えた新学期初日。
今日は午前中に始業式と簡単な連絡事項だけを行い、午後から入学式があるという。
入学式はあらかじめ決まった在校生が出席するので、とりあえず連絡事項だけを聞きそのまま帰宅することになっていた。
そして、全ての連絡事項を終え、皆が帰宅の準備をする中で、早速、好奇心旺盛な生徒が、俊に話しかけ始めた。
中には、昔一緒だった小学校の子達も混ざって、「久しぶり」と挨拶を交わす。
俊は緊張しつつも笑顔で「ただいま」と返すと、クラスメイトはその表情にほんわかした雰囲気を漂わせていた。
外見が華奢で中性的な顔立ちなこともあって、女子の間では早速話題になっていたのだ。
その後も、クラスメイト達からあれこれ質問責めにあうが、ちょうど同じクラスになった圭が仲裁に入り、「こいつあまり責め立てると萎縮するから、加減してやってくれ」と言うと、女子達がブーブー文句を言いつつも「あまり迷惑かけちゃ悪いからね」とそのまま引き下がってくれた。
しかし翌日以降、クラスメイトは俊が教室に来ないことに気付いたのは、2~3日経ってからのことだった。
実は俊は教室へは行かずに、毎日保健室にいる。
所謂、保健室登校をしているのだった。
そのことを知らなかった圭も疑問に思い、ちょうど登校してきた弥月にそれとなく聞くが、なぜか口を濁らせてはっきりと答えてはくれなかった。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる