煉獄の森~EZAM~

結城朔夜

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第五幕:聖夜の夢

vision:ⅩⅩⅤ カウントダウン~そして訪れる目覚めの刻~

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運命の歯車は
もう廻り始めた

もう引き返せない
もう巻き戻せない

どんなに抗おうとも
時間は待ってくれない

その運命の日まで、残された時間は………

――――――――――
食堂へ戻ると、美彩の発作が少し治まってきたのか、仮宥愛は精霊の力を解いて介抱していた。

「薬、持ってきた」
「ありがとうございます。さあ美彩さん、これを飲んで下さい」

結翔から薬を受け取り、仮宥愛が美彩に飲ませようとして口元に薬瓶を近づける。
美彩はゆっくりと薬を飲み、空になった瓶を見つめて「すみません、ありがとうございます………」と弱々し声で呟いていた。

「一旦、部屋へ戻りましょうか。今日はたくさん働いてくれたので疲れたのでしょう。ゆっくり休んでください」

仮宥愛は美彩を抱き抱えて、部屋へと連れて行く。
結翔は補助として付き添い、私も心配だったので一緒に付き添うことにした。

美彩の部屋へ着くと、仮宥愛は美彩をベッドまで運び寝かせると、何かを話しかけていた。
そして結翔が何かに気付いたようで、声を漏らした。

「…………あれ?美彩姉、ブレスレットは?」
「あ………、そう言えば。あの時外してたから、たぶん食堂に置いたままになっているかも………」
「ブレスレットって、いつも付けていたのですよね?だったら私が取りに行ってきますよ」
「すみません、お願いできますか?」
「わかりました。ちょっと待っててください」

そう言って私は美彩のブレスレットを取りに食堂へと戻り、テーブルの上にあるのを確認するとそれを持って再び美彩の部屋へと向かった。
部屋に戻ると、仮宥愛と美彩がまた何かを話しているようで、小声で「持ってきました」と言うと、結翔が受け取り、ブレスレットを見つめていた。
じっとブレスレットを見つめている結翔に、何かあったのかと想い尋ねると「加護の力が弱まってる」と答えた。

「加護の力?それって、ブレスレットの?」
「うん、本来はただの装飾品なんだけど、これは仮宥愛に加護の力を込めてもらっている特別な物。此処にいる子は皆、何かしらの加護の力を付与された物を持ってる。美彩姉はこのブレスレットだけど、僕はアンクレットを付けてる」
「そうだったんだ………。あれ?でも、皆がそれぞれ持ってるって言ってたけど、見た感じそう言うモノは付けていなかったようだけど………?」
「身につけるタイプは僕と美彩姉だけ。奏音達のものは、そこまで強い加護は必要ないから、ポケットにでも入れているんだと思う」
「………強い、加護?それって………」
「精霊の力に関係しているのですよ。力を与えられている分、闇の影の影響を受けやすくなるので、加護の付与も強い物に成るのです」

仮宥愛が補足として説明してくれたが、いまいちわからないことがあったので、それとなく聞いてみた。

「闇の影の影響って、どういうものなのですか?」
「そうですね、簡単に説明するのは難しいのですが………。此処にいる皆さんは、心に何かしらの傷を持っている子達ばかりです。先日の未遊夢たちが良い例でしょう。あの子達のように、それぞれいろんな過去があってここに来ています。その為、精神的に不安定な部分があるのですが、闇の影はそういった心の弱さに引き寄せられて現れるのだと言われています。だから、不安定な部分を少しでも安定させるために、加護の力を付与した装飾品を身につけてもらっているのです。ちなみに、私もネックレスを付けてますが、普段は服の中に入れているので気付かれなかったのかもしれませんね」
「全然、気がつきませんでした………」
「そうでしょうね。あまり人に見せるモノで付けているわけではないので、割とわかりづらい部分もあるかと思います。ですがこれを身につけていることで、闇の影の影響を受けにくくなるのと、精神の安定にも成っているので、なくてはならない物ですね」

そう言って、仮宥愛は服の中に入れていたペンダントを取り出して、みせてくれた。
良く見ると、美彩のブレスレットに刻まれている文字のような、記号のような模様がそのペンダントにもあるのが見えた。

「これって、何か刻まれてますけど、なんの模様ですか?」
「よく気がつきましたね。これは神の御辞で『汝、加護を受けし者。闇の力を祓い賜え』と書かれているのですよ。元々はただの装飾品ですが、この御辞を刻み神への祈りを捧げ、月の光に照らすことで加護の力を付与することが出来るのです」
「へぇ………。なんだか、お守りみたいですね」
「確かに、お守りに近いかもしれませんね。ですが、付与の力が弱まってくることもあるので、一度限りのモノであるのは確かですけどね」

そう言いながら、美彩のブレスレットを見て「これもだいぶ力が弱まってきてますね………」と呟き、美彩へ視線を向けると、体力を消耗していたからか美彩は小さな寝息を立てて眠っていた。

「すぐに新しい物を用意しますので、少し待っててください」

と美彩へ話しかけ、そっと髪を撫でた。

その後、仮宥愛は暫く美彩に付き添っているというので、私と結翔は一旦部屋を出て食堂へと戻ってきた。
先ほどまで、美彩と結翔は片付けをしていた途中だったらしく、作業を中断していたので、その続きをすることにした。
洗い物を済ませ、食器や調理器具を片付け終えると、結翔は小さくあくびをして。

そう言えば、結翔も力を使って体力をかなり消耗していたはずだ。
そう思い出して、結翔に「もう休んでいいよ」と告げるが「美彩姉の分の薬の調合、またしておかないと………」と小さく呟いて。
あまり無理はして欲しくなかったので「明日でも良いんじゃない?」と言うと「………じゃあ、そうする」と少し眠たそうな声で返事をしていた。

なんとなく心配だったので、結翔を部屋まで付き添ってベッドまで連れて行くと、倒れ込むように体を横にした。
結翔を支えるような体制だったため、私も一緒にベッドに横になるカタチになったが、起き上がろうとそっと結翔から離れようとして、不意に服の裾を引かれているのに気付いた。

「結翔………?」
「………」

声を掛けても返事はなく、僅かに息が荒いことに気付いて。
力を使った代償だろうか?
先ほどまで何ともなかったのに、糸が切れたかのように急に疲れが出たのだろう。
「大丈夫?」と声を掛けると、僅かに服の裾をぎゅっと握りしめるような仕草をして。
そしてゆっくりと目を開け、起き上がったかと思うと、まるで幼子が甘えるように、私に縋り付くように顔を埋めてきたのだった。

結翔がこんな風に私に対して弱っている姿を晒していることが不思議で。
アタフタする私はまだ息が荒い結翔を見て、一度深呼吸し心を落ち着かせると、そっと頭を撫でた。

今までなら、決して他人に弱みを見せることなどなかったはずなのに。
例え疲れていても、気丈に振る舞って平然を保っていた結翔が、今はこんなにも弱々しい姿を見せることに驚きを隠せなくて。
それと同時に、結翔もこんな風に甘えることもあるのだということに、何処か母性本能を感じて。
しばらくはそのままの状態で、ふと窓の外を見ると、またチラチラと雪が降っているのが見えた。

ーーーホワイト・クリスマスだな。

そんなことを考えながら、不意にまた昔のことを思い出していた。

あの日も、また雪が降っていた。
クリスマスのプレゼントを受け取り、無邪気にはしゃいでいたあの頃。
優しい両親と、姉と私。
4人家族で暖かなクリスマスを過ごしていたあの頃。

そして、もう二度と戻れないあの頃。

無垢な笑みを浮かべていた私は、もう何処にも居ない。
”あの日”に全てが壊れてしまったから………。

「ん………」

結翔の呻く声に我に返ると、私はそっと結翔に視線を戻した。
呼吸は落ち着いているが、表情はまだ苦しそうで。
もしかすると、先ほどの私の感情を流し込んでしまったのではないかと不安になったが、結翔はゆっくりと目を開けて、「ごめん、もう大丈夫………」と言って、腕から離れると今度は照れ隠しなのか俯いたまま、もう一度「ごめん………」と呟いた。

「私の方こそ、ごめん。色々思い出してたから、もしかしたら不安な気持ちが伝わったかと思ったけど………」
「うん、ちょっとは流れてきたけど、でもそれよりも触れていた温もりの方が温かかったから………。逆に安心できた、かも」
「………そう?」
「………うん」

互いになんとなく気恥ずかしくて、たどたどしい会話になってしまうが、視線を合わせるとどちらからとも無く笑みを浮かべていた。

「少し寒くなってきたから、一旦暖炉で暖まる?」
「そうだね」

そう言って結翔は毛布を持って暖炉の方へと行き、火を焼べて、二人で暖炉の傍で暖まっていた。
暫く暖まっていると、結翔がまた私の肩に頭を乗せるように寄り掛かってきて。
なんだか今日は随分と甘えん坊だなと見つめていると、すごく安心した表情で目を閉じているようだった。

ーーー弟が居たらこんな感じなのかな?
ふと、そう思ってしまう。

私には3つ上の姉がいるが、下に弟妹は居なくて。
年齢的にも、結翔は私の弟に近い。
奏音も妹に近いのかもしれないけれど、二人とも意思がしっかりあって、年齢を感じさせない雰囲気を持っているからか、普段は思わなかったけれど。

(普通に学校行っていれば、まだ中学生と小学生なんだよね………)
(未遊夢と未幸姫に関しては、幼稚園くらいかな?)

まだ私より、こんなに幼いのに………皆しっかりしてる。
ここに来るまで、いろんな事を経験していたからかもしれないけれど。
などと想い耽っていると、不意に結翔が目を開けてこちらに視線を向けた。

「どうかした?」
「ううん………。なんか、千紗都っていつも何かを考えてるなって。誰だって悩みはあるかもしれないけれど、いつも何かを考えてる千紗都は、ちゃんとそれに向き合えてるんだなって」
「そう、かな?自分ではそんな風に思ったことはないけど。でも、確かに考えなきゃいけないコトはたくさんあるからね。でも、結翔も私より年下なのに、しっかりしてると思うよ?」
「え?そう、なの?」
「うん。だって、医学に関しては私より知識もしっかりしてるし。なによりあれだけの量の薬草を全部覚えてて、自分で管理してるんだから。普通、結翔くらいの年齢の子だったら、そこまで出来ない方が多いと思うよ?」
「う~ん………。そう言われても、自分じゃよく分からないかも」
「確かに、自分じゃよく分からないこともあるからね。こうして誰かと話をし合って、お互いに気付かせ合う存在になってるって、結構良い感じだと思うよ?」
「………ん~。そう、なのかな?」

そんな話をしていると、ふと暖炉の火がぱちぱちと音を立てて弾けて。
先ほどより少し火の勢いが弱まったみたいで、結翔は火かき棒を取り、薪を焼べて行く。
少ししてまた暖かさが戻ってきたので、火かき棒を脇に置いて毛布に包まると、フウッと大きく息を吐いて。
暫く二人無言で燃える火を見つめていた。

その後しばらくして、美彩の容態が安定したのか仮宥愛が結翔の部屋に訪れた。
その際私が一緒に部屋の中にいることに気付いて、少し驚いたような表情をしていたが、すぐに微笑ましく笑みを浮かべた。

「千紗都さんもこちらにいたのですね。これを渡そうと思って居たので、丁度良かったです」

そう言ってポケットから小さな小箱を取り出し、私へ差し出した。
その小箱には、リストバンドが入っていた。

「少し早いですが、誕生日のプレゼントとして用意させていただきました」
「誕生日、もうすぐなの?」
「うん、ちょうどクリスマスの3日後なんだ。仮宥愛さんには話してたから………」
「本当はもっと、装飾品として相応しい物を選びたかったのですが、千紗都さんはあまり着飾ったりする方ではないかと思いまして。それと、今付けているものが多少ほつれていたようだったので、新しい物を用意してみました。いかがですか?」
「ありがとうございます。ちょうど私も新しいのに買えなきゃって思って居たので、よかったです」
「どういたしまして。千紗都さんはもう、私たちの家族と同じような存在ですから、ね」
「家族………」
「………仮宥愛、夕食はまだ?」
「ああ、もう少しで用意できるようです。今日は未遊夢達が一番頑張っていたので、 そのお祝いも兼ねてまたパーティ仕様みたいですよ?」
「そうなんですね。お疲れ様って気持ちで、未遊夢達にはいっぱい食べて欲しいな」

さりげなく結翔が話題を逸らしてくれたことは気付いていたが、私は敢えてそれに便乗して。
私の本当の家族はもう………と、またネガティブな感情に囚われそうに成りそうで、大きく深呼吸をして気持ちを切り替えた。
そんな話をしていると、従者の人が夕食の準備ができたと声を掛けてきて、食堂へと向かった。

それから皆で夕食パーティをして楽しんだあと、各自の部屋に戻った。
私も部屋に戻りふと白く曇った窓を見ると、またちらほらと降る雪が見えた。

あと3日ーーー。
あと3日で、私の18歳の誕生日が来る。

ーーー18歳。
子供と大人の境目の歳。
地域によっては、18歳で成人を迎える場所もあるようで。
私は、出来ることならまだ子供のままでいたいと思っていた。
でもそれは、現実からの逃避でしかないのだとわかっていて。
これもただの我儘なのだろうかと、ふと思い耽っていた。

そしてふと、仮宥愛からもらったリストバンドを見つめていると、あることに気付いた。
リストバンドの内側に刺繍が施されていて、それは仮宥愛たちが持っている装飾品に刻まれた文字と同じ物だった。
仮宥愛のさりげない優しさが、また感じられた。

「………ありがとうございます、仮宥愛さん」

小さくそう呟いて、腕に付けていたリストバンドをそっと外し、隠していた傷跡を見つめた。

最後に傷を付けたのはいつだっただろうか?
この世界に来てからは、気付けばしなくなっていた。
それでも、この腕に刻まれた傷痕は、まだ癒えずにその存在を主張している。

静かにそっと目を閉じて、深く深呼吸をして。
少し早いプレゼントだが、嬉しかったのは確かで。
私は微かな笑みを浮かべながら、リストバンドを付け替えた。

こんな風に傷を隠したところで、根本的な解決にはならないとわかっているけれど。
それでも、心に受けた痛みを和らげるのであれば、なんだってよかった。
息つく場所が、ただ欲しかったのだから………。

と、またそんなコトを考えても仕方がないとわかっていても、考えてしまう。
いつからか求めていた居場所を、今は見つけられたと思ったから。

そして、此処にいる皆も誰が目に見えない傷を抱えていると言うことを、改めて思い知って。
同時に、あることが頭を過ぎった。
孤児は他にもいるはずなのに、なぜ館の住人として居るのは彼らだけなのだろうかと。
以前にも感じた違和感が、また浮上し始めて。

何か、引っかかる。

それがなんなのかはわからないが、この世界は何処か不自然なところがある。
まるで作り物の箱庭の中にいるような感覚だ。
でも確かに、窓の外の雪は白く、空気も息が白くなるほどに冷たく感じる。
暖炉に火を灯せば、暖かさも感じられる。
こんなにも感覚的にはリアルすぎるのに、何かが不自然に思えて。

ふと、部屋に置かれたドレッサーの鏡に視線を向けると、不安げな表情で見つめる自身の姿が映っている。
ドレッサーの前に立ち鏡に手を添え、ゆっくりと目を閉じそして再び開くと、その姿がまた中学の頃の自身の姿に見えて。
昏い瞳でこちらを見つめ返す過去の自分。
彼女は何を伝えたくて、こうして姿を見せるのか?
無言のまま、静かに見つめる過去の自分に、私は静かに問い掛けた。

「ねぇ………、何が視えるの?」

その昏い瞳は私ではなく、何処か別の物を見つめているように感じて。
彼女は何も話さず、ただ無言で何処かを見つめていて、そしてゆっくりとその目を閉じると………。

『………もう、戻れない………』

そう呟いた。

―――何が戻れないのか?
再び問い掛けようとして、声を出そうとした瞬間、彼女はまっすぐに私を見つめて言った。

『同じ過ちは、もう繰り返せない。これ以上、犠牲には出来ない。………だから、此処で終わりにするの』
『あなたも、もう気づいているはずよ。自分がなぜそこに居るのか。なぜ、引き寄せられたのかを』
『早く目覚めなさい。本当をあなたを、取り戻しなさい。そして解放なさい。あなたの、本来の力を………』

そう告げて彼女は姿を消し、代わりにある文字が鏡に浮かび上がった。

『あと、3日………』

それは運命の日までの、カウントダウンの始まりだった―――。

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