勇者断罪物語

#13 2話「優秀な部下ほど、メガネ属性」Part4

グツグツと煮込まれたハンバーグから、ハギが唾を飲み込むほどの香りが漂っている。

食事会が開催されているモナ・リザ1号店内に、階段側から客人が訪れた。


「食欲を刺激する香りが充満していますね。これから、会議じゃなかったんですか？」


拠点から扉を通じて移動してきたクラウス博士が、カウンターに着席しながら、呼び出した張本人に向けて話しかけた。


「そのつもりだったんだが。お前遅いんだもん！何時間待ったと思っているんだか。」


と煮込まれたハンバーグの具合を確認しながら、サイトがカウンターに向けて声をかける。


「む？ もう、そんな時間になっていたのですか。研究に没頭し過ぎました。反省致しますね」


その発言を聞いたサイトは、(ぜってぇー反省してねぇだろ。こいつ・・・・。お前の分だけ、激辛ハンバーグにしてやろうか～？)と、激辛ハンバーグを口に運んで、火を噴く姿を頭に浮べるのであった。



◇



煮込みハンバーグ。それは勇者がもたらした食文化の革命。ハンバーグは存在していたこの世界には、何故かハンバーグの発展系である作品が無かった。そこで、料理好きの勇者が王族相手に提供したのが、煮込みハンバーグである。その後、食した王族が宮廷付き料理人の役職を勇者に与えたのは、有名な話だ。



本当は、王族以外に提供出来ない代物であったはずだが、ある日、関係各所にレシピが漏れたおかげで、またたく間に一般庶民でも、手が出せる食となった。



今、ハギ達が食しているのは、公開されたレシピをアレンジした作品である。

ハンバーグ割ると、ホワイトソースが流れ出るビックリ箱形式になっており、デミグラスソースと合わさることで、皿の中に調和が生まれる。


(このひと皿に世界が詰まっていると言っても過言ではない！)と、先程よりも表現豊かになる耳と尻尾が特徴的な青白短髪メイド。


その横では、ピンク長髪メイドが、瞳の中にハートを描き、サイトに向けて発射している風に見つめている。皿はソースまで、舐め取られていた。


ソウは、一口一口を味わい時間をかけている。オーナーの手作りを食す！という宝くじを引いた彼にとっては、これが人生最後の運！とみて舌と脳に情報を定着させようと頑張っているのだ。見習いであるがゆえの必死さが滲み出ている。


クラウス博士は、何も話さず、表情も変えずに淡々と煮込みハンバーグを口へと運んでいた。栄養摂取だけの為に食事をしているようだ。相変わらず、不気味である。


(ほんと、表情変えねぇなあいつ。マジで激辛食わしてみようか？)と本気で考え始めるオーナー。だが、淡々と胃にぶっ込んでいくクラウスをみて、口から火を噴くイメージが消えていく。いや、ほんと、想像できないのだ。


・・・・俺の料理って受けない人には受け入れてくれないのかな？と不安な気持ちに陥ってしまう。各自それぞれの個性を発揮しながらの食事会。時間がゆっくりと過ぎていった。