心の傷は残り続ける

濃霧

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5 心の爆弾

疑惑

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 それにしても、自分たちが今どこにいるのか分からない状況でこのような行動を犯人がとるのは非常に危険なはずだ。ばったり放送室に来た自分たちと遭遇してしまうかもしれない。それほどのリスクを冒してまで、犯人は自分たちに恐怖を与えようとしたのだろうか。いや、或いは自分たちをこの放送室におびき寄せようとしたのかもしれない。
自分が犯人の大胆な行動に恐れている中、放送室の中で小沼さんが何か床に落ちているものを見つけた。
 「なんか落ちてる」
「プリントみたいだね」
小沼さんの隣にいた柿沼さんがしゃがんでそのプリントを拾った。そのプリントはB5サイズの片面のみ印刷されているプリントであった。印刷されている面が床についており、私たちから見える面は単に真っ白の紙にすぎない。一体何のプリントだったのか分からなかったが、小沼さんがそのプリントを拾い上げたときに見えたその印刷面に印字されていたものは、何やら見覚えがあるものだった。そう、先週自分たちの受けた物理の授業のときに使われたプリントと全く同じプリントだった。
 まさか、あの物理の先生が・・・・・・誰もがそう思った。この八人のメンバーの唯一の共通点ともいえる、同じ物理の授業を受けていたという点。よって、八人の立場からすれば、そう考えるのが極めて自然である。
 ただ、本当に物理の先生が犯人なのかという点においては疑問が残る。まず、物理の授業を受けているのは自分たちのクラスだけでなく他のクラスもそうだ。なぜ、自分たちだけが閉じ込められなければならないのかが分からない。次に、あの几帳面な物理の先生がこのようなミスをするのだろうか。確かに、人間だれしもミスや失敗はするものであり、別にそれだけで物理の先生が犯人ではないと断定はできないが、可能性としてはやや考えにくい。もしかしたら、誰か別の犯人が物理の先生に濡れ衣を着せるためにそのような作為的なことを行っているかもしれない。
 ただ、物理の先生が何らかにかかわっている可能性は否定しきれないため、ひとまず職員室に行って物理の先生の机の周りを調べることにした。もしかしたら、放送室に落ちていたあのプリントの件にもあったように、職員室周りにも何か物証があるかもしれない。
 犯人がまだ近くに潜んでいるかもしれない。「どうせ誰もいないんじゃないの」という犯人の存在自体を疑っていたついさっきとは打って変わって、誰しもが「近くにいるかもしれない」という危惧を抱いたまま放送室から職員室へと向かっていった。
 その厳粛な雰囲気は表情だけでなく行動にも表れていた。誰も何も一言も発することなく、自分たちは職員室にたどり着いた。職員室へ来るのはこれで三回目だろうか。ただ、雰囲気は一回目に来たときと二回目に来たときと何ら変わりはないだろう。
 職員室に来るたびに気になってしまう担任の机上の隅においてあるあの写真。その写真を見たいという気持ちはあったが、それをこらえて物理の先生の机を見ることにした。こういう場面において、個人の感情に引っ張られるような軽率な行動は慎まなければならない。団体行動に対する圧迫感を抱くときもあるにはあるが、こういった危機に冒されている状況において団体行動の大切さを感じる。
 物理の先生の机と担任の机はかなり離れている。物理の先生の机は、さっき湖さんと荻原さんが調べてくれたとおり、特に何も変化はなく、机がきちんと整理整頓されていた。これといった収穫はなく、ただ時間のみが過ぎていった。
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