MARVELOUS ACCIDENT

荻野亜莉紗

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一巻 未知の始まり  第一章 始まりの時

04

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「だからー、その子は飛華流の部屋のクローゼットを通じて異世界から来た子だって言ったでしょっ! それなのに、誰にこの子を助けてもらうつもり? ……とりあえず、一晩くらい泊めてあげてもいいでしょ? 丁度、空き部屋もあるんだから……ねっ?」

 直志に負けず、守莉はそう言い返した。けれど、守莉を直志は全く尊重しようとはしない。

「いや、それは違う。そんな判断を、簡単にしない方がいい……もうお前もいい年した大人なんだから、子供と一緒になってあんな事を信じるなよ」

「もうっ! 何で理解できないのっ! 飛華流だって、あれはどこかから自分のクローゼットにやって来た子だって、はっきり言ってたのに……パパはさ、頭が固すぎるんだよ」
 
 頑固な直志に、守莉は腹を立てた。

「いやいや、お前の発想が幼稚すぎるんだよ。俺は、オカルトなんて信じないから」

「あのね……世の中には、化学では証明できない不思議な事だって起こるの。目に見えるモノだけが、全てだと思ってるなら大間違いだからね……そんな事、本当は分かってるくせに」
 
 どんどんとエスカレートしていく二人の言い争いは、廊下まではっきりと聞こえていた。

 そんな親の会話を、子供達は部屋の前でひっそりと耳にしていた。

「……なあ、あのまま二人で解決できると思うか?」
 
 うんざりとした様子で歩き出し、真誠は飛華流に尋ねた。

「うーん……まあ、後は二人に任せるしかないね。僕ら子供には、どうする事も出来ないんだし」
 
 ため息交じりにそう言って、飛華流はのろのろと階段を上がっていく。彼の後を追いながら、真誠も深いため息を吐く。

「……俺はさ、パパに賛成なんだ。だって、確かにクローゼットの中から人間が出てくる訳ないだろ……ハア」

 ほんのりと豆電球が光る、暗がりの部屋の中――飛華流は布団をかぶり、ベッドで横になっていた。――どうして、こんな事態になったんだろう。
 
 散々、学校でいじめられ、いつもの様に泣いていたら――突然、クローゼットの中から謎の少女が現れた。フィクションの世界でしか起こらない様な摩訶不思議な出来事が、こうして実際に起きてしまっている。
 
 これは、夢なんじゃないか? 何度か飛華流は自分の頬をつねってみるが、ちゃんと痛みを感じられた。それで、現実である事を確かめた。


 
 子供達が、自室で眠りについた頃――二人はこんな話をしていた。

「ねえ、パパ……あの事って、隠しておく必要あったのかな?」
 
 少女に腰を突かれながら、守莉は直志に問う。

「それはそうでしょ。あんな話をしたら、二人を混乱させちゃうが……飛華流は特にね」

「まあ、そうだけどさ……どうせ、いつかは事実を伝えるんでしょ? だったら、質問されたあの時を話すきっかけにすれば良かったのに……」
 
 ソファーに染み込んだ汚れを拭きながら、直志は守莉に強く反対する。

「そんなん駄目だわさ。今は、話すにはまだ時期が早いって。精神的なダメージも、きっと大きいだろうよ。そもそも、これを子供達に知らせるべきなのかっていう判断も難しいし……俺自体、その事態をよく分かっってないからね」

「あっ……ねえ、あの魔女の女の子にまた会えないかなー。……確か、エミナーちゃんだっけ? この子の事は、エミナーちゃんに相談してみようよ」
 
 ほとんど全て、守莉の意見を無視してきた直志だったが、これについては首を縦に振る。

「うん……下手に警察に行くより、それが良いかもしれないね」

「それなら決まりだね……あの子は凄く優しい子だから、この事を知れば絶対に助けてくれるはずだよ」

「そうなんだけど……一番の問題は、会えるかって所だよね。前だって、あれは奇跡だったし……マジで今でも信じられんもん」
 
 飲みかけのコーヒーをすする直志に、守莉は面白そうに言う。

「あっれー? パパってば……非科学的なモノは信じないんじゃなかったのー? 思いっきり、魔法に頼ろうとしてるじゃーん」

「それはそうだよ……基本的にはね。でも、あれは例外だ。実際にあの子が、魔法で事を解決した姿を目の当たりにしたからね……俺だって、見れば信じるよ」
 
 守莉と目を合わせる事無く、直志はサラッとこう発した。
 
 もうしばらく、こんな幼稚で天然な夫婦の話し合いは続いたのであった――




 一年D組、帰りの会の時間――

一宝いっぽう中学校、三年C組の男子生徒が行方不明になりました。ここ数年、この町ではそういった事件が多発していますね。残念な事に、うちの学校でもついに、一人目の被害者が出てしまいました。ですので、寄り道せず、気をつけて帰りなさい」
 
 顔面ニキビだらけの男性教師が真剣な顔をして、生徒達にそう警告した。何かが腐った様な異臭を教室へ放つ教師は、このクラスの担任の加藤葉かとうよう
 
 身近な人間が被害に遭う事で、事件がより身近なものに感じる。

 浮かない顔をし、自分の席に座っている飛華流と同じく、ここに居る全ての人間が――これは、他人事ではないと思った。

「えっ? その人、俺の部活の先輩なんだけど……」

「まじか……誰かに誘拐されたのか?」

「いや、殺人事件かもよ?」

「遺体が、どこかに隠されてたりして……怖すぎる―」


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