我輩は人類を蹂躙する。~どんなに勇者を転生させても無駄だ。《全知全能最強無敵絶対優位》の我輩がすべて返り討ちにして世界を滅ぼしてやるわ!~

日和崎よしな

文字の大きさ
6 / 34

第06話 我輩 VS. スローライフ勇者

しおりを挟む
 我城にまた来訪者が現れない。まただ。

 新しい転生勇者が、本来の自分の役目を放棄して自分勝手に生きている。

 それの何が悪いかって?

 こいつらは人類を侵略する魔王を倒すことを条件に、死んだところを転生させてもらい、女神からギフト《何でも一つだけ願いを叶えられる力》を与えられているのだ。

 つまり、大恩を無視して約束を一方的に破っているということだ。

 我輩も好き勝手やってはいるが、少なくとも当時の魔王は倒した。我輩はもう使命を果たしたと言える。
 ただその後に我輩が魔王と似たような行動を取っているだけのこと。

 我輩が奴らを見下す何よりもの要因は、奴らは使命を放棄しているくせに善人ぶっているところだ。
 我輩はしっかりと悪と自覚して人類を滅ぼそうとしている。

 我輩はこのサボり勇者も殺すことにする。

 もっとも、その理由は勇者が使命を放棄したからではない。我輩が気に食わないからだ。
 我輩は悪であって、正義のために他人を処罰することなどない。

「モフ、おまえは留守番な」

 我輩はE国に出向いた。E国の上空に瞬間移動し、そこから地上を見下ろす。

 新しい勇者はのどかな農村にいた。旅の途中で立ち寄ったのではない。この村に住み着いているのである。

 我輩は畑を眺めている勇者の後ろに降り立った。

「ほうほう。ここの土地はうるおっとんなぁ」

「そうだろう? 僕の自慢の畑さ」

「そうかぁ……って、なに勇者の使命を投げ出しとんねん! 正しい役目で働かんかい!」

 我輩は勇者の頭をバシンと叩いた。あくまで軽くだが。

「イテッ、何すんだ!」

「なーにが自慢だ。おまえは何もしてねーじゃねえか。全部手下にやらせてからに」

 畑で作業しているのは勇者自身ではなく、勇者がテイムしたモンスター、つまり手懐てなずけ、飼い慣らしたモンスターたちだった。
 ゴブリンという小鬼や、木偶でく魔人という動く木の魔物たちが畑を耕し、それからスライムが土の水分調整をしている。

 この勇者が女神のギフト《何でも一つだけ願いを叶えられる力》で望んだのは、《万能コミュニケーション力》である。
 この能力により、あらゆる生命と会話でき、そして仲良くなることができる。
 簡単に言うと、この勇者は植物、動物、魔物とどんな生命でもテイムすることができるのだ。《万能》とはそういうことである。

 ただ、こいつは国王とはほとんど直接の会話ができなかったために、国王からの信頼があまり得られなかった。
 コミュ力が取り柄の勇者ということで、国王からあまり期待されず粗末な扱いを受けたため、ねて使命を放棄したのである。身勝手だよねぇ。

「彼らは僕がテイムしたモンスターたちだ。彼らの仕事は僕の仕事に等しい。だから畑仕事に関して文句を言われるいわれはないよ」

「能力でテイムしたんだから、洗脳して奴隷にした奴らに働かせているのと同じなんだけど、それを自慢されたら普通は気分が悪くなるだろ」

 そもそも、この勇者が自分の称号を勇者に設定しているところが気に食わない。使命を放棄したこいつは、もはや勇者でも何でもない。ただの農家だ。

 こいつの持つシステムでは称号を設定できる。
 勇者の称号を獲得したときにはすぐに称号を勇者に設定したくせに、農家の称号を獲得しても称号を変更しなかった。

「だいたい、あんたは何なんだ?」

 見ているだけのくせに一丁前に農夫の格好をしている勇者は、顔をしかめて我輩を睨んできた。

「我輩はおまえが倒すべき存在だ。つまり、魔王に取って代わった者だ」

「へぇ、それはそれは。その新魔王様がこんな辺境の地まで何をしに?」

「おまえを殺しに来たに決まってんだろ!」

 我輩が親切に殺気を飛ばしてやると、ようやく事態を把握した勇者は警戒心をあらわにしてモンスターたちを呼び寄せた。

「おまえが手下を使うなら、我輩も手下を使おうかな」

 モンスターたちが耕していた畑の隣の畑から、ニンジンが魔物化してはい出てきた。他の畑からも、ダイコン、カブ、ゴボウが次々に魔物化して出てきた。
 野菜の魔物たちは根を足にして走ってきて、我輩の前に整列した。

「手下って、まさか……」

「おまえの畑に埋まっていた野菜どもだ。我輩が魔物化して手下にした」

「そんな馬鹿な! おい、みんな! ニンジン、ダイコン、カブ、ゴボウ! 僕が愛情を込めて育てた野菜たち、僕との絆を思い出してくれ!」

 勇者が魔物野菜たちに熱く語りかける。
 しかし魔物野菜は無反応だ。当然だ。我輩の手下が我輩に逆らうわけがない。

「愛情を込めて育てただ? 馬鹿なの? どうせ食ったり売ったりするんだろうが。そんな奴との間に絆なんてあるわけないだろ。そもそも育てたのはおまえじゃなくてモンスターたちだけどな」

「くっ、仕方ない。だが戦力はこちらも十分にある。僕は負けないぞ」

 ゴブリン、木偶魔人、スライムが勇者の前に並んだ。その後ろで勇者が我輩に敵意をむき出しにしている。

 このまま勇者のモンスターと魔物野菜を戦わせてもいいのだが、この勇者はテイムドモンスターが味方についているから、まだ優位に立っている気でいる。気に食わないなぁ。

「モンスターたちよ、我輩のしもべとなれ」

 我輩の声を聞いた三種のモンスターたちは、我輩の前に移動して魔物野菜たちと並んで勇者に対して構えた。

「なっ!? そんな馬鹿な!」

「じゃあそろそろ……」

 魔物野菜とモンスターたちが勇者へとにじり寄っていく。
 勇者は一歩、二歩と後退するしかない。

「待って、待ってくれ! 話をしよう」

「おいおい、どの立場で物を申しているんだぁ?」

「は、話を、させてください……。お願いします……」

 勇者はおずおずと頭を下げた。
 我輩が冷ややかに見下ろしていると、さらに腰も曲げた。

「はぁ。少しくらい時間を取ってやってもいいが、おまえの能力で我輩と仲良くはなれんぞ」

 顔を上げた勇者はけ反りながら目を見開いた。

「何なんだ、あんたは。何でも知っているし、何でもできる。まるで神様みたいじゃないか。あんたはいったい何者なんだ」

「我輩は《全知全能最強無敵絶対優位なる者》だ。だからおまえに勝ち目はない。生き残るすべもない」

「全知全能!? そんな馬鹿な! そんなのが存在するはずないじゃないか。だったら……、だったらあんたは自分よりも強い存在を生み出せるのか? 全能なんだろ?」

 こういう理屈っぽい性質は万能なコミュニケーション能力ゆえか。
 いいだろう。それにも少し乗ってやろう。

「なるほど。パラドックスね。もし我輩がおまえの言葉どおりに我輩より強いとされる全知全能最強無敵絶対優位の存在を生み出したとしたら、この世界に矛盾が発生してしまう。我輩の性質が嘘になってしまうのだからな。その場合、どうなると思う? 答えは、その原因が消滅するのだ。我輩が先に存在していて、我輩より後に出てきたものが原因となるのだから、後に出てきたほうの存在が消滅する」

「じゃあ後から生まれても消滅しないものは生み出せないのか? それだと全能ではないということにならないか?」

「その場合、そのきっかけを作った存在が消滅し、そういう事態が起こらないことになる。つまり、そのときに消えるのはおまえの存在だ。試してみるか?」

 勇者は言葉を詰まらせた。迂闊うかつなことを言えば自分が消滅するのだから、無闇に言葉を発することすら恐ろしいのだ。

 そんな農民勇者に与える時間はもう十分だろう。
 さっさと終わらせよう。

「あのな、我輩は全知だし、絶対優位なの。おまえがどんなにコミュ力が高かろうが、どんな頭脳で理論武装しようが、我輩には絶対に勝てないの。もう消えろ」

 消えろと言ったが、パッと消すわけではない。我輩は魔物野菜とモンスターたちに勇者を襲わせた。
 会話力しか取り柄のない勇者は、自分が絆を結んでいたと勝手に思い込んでいたモンスターや野菜たちに水分を吸われたり肉を食われたりして、最後には骨をガシガシとかじられた。

 我城に戻った我輩は、E国をかたどった二十キロの高さを有する黒色物体たるモノリスをE国に落とした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...