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第14話 我輩 VS. 最強無敵のダークヒーロー
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我城に来訪者が現れた。
我輩の目の前に男が立っている。
黒革のジャケットにズボン、黒くて角ばった甲虫のようなヘルメット、そして赤いマフラーという奇妙な格好の男だ。
「我は最強無敵のダークヒーロー。悪を葬るためなら悪にもなろう。毒をもって毒を制す!」
はぁ、嫌だなぁ。悪を名乗るとか我輩とキャラが被ってんだよなぁ。
しかも最強無敵って、我輩の完全下位互換じゃん。
こいつは自分でかっこいいと思っているようだが、ただ空回りして滑り散らかしているナルシストでしかないんだよなぁ。
「で、ご用件は? 早くお引き取り願いたいんだけど、息を」
「ん? ああ、なるほど。早く帰れと言ったように見せかけて、息を引き取れ、つまり死ねと言ったのだな?」
「へぇ、馬鹿でも分かるもんだねぇ。頭が悪そうだから理解できないと思ったよ」
まぁ、これは単なる煽りだ。
こいつが言う言葉も、こいつの用件も、全知の我輩はすべて知っている。
「言ってくれる! だが貴様の言葉は軽い! 我の言葉の重さを知るがいい! 暴君よ、爆ぜろ!」
ナルシスト男が我輩に手のひらを向けて高らかに叫んだ。
こいつは女神のギフト《何でも一つだけ願いを叶えられる力》で《自分の言葉を真実に変える能力》を得た。
つまり、こいつが言ったことは何でもそのとおりになるということだ。こいつが他人に死ねと言えば、そいつは死ぬ。
要するに言霊使いだ。
そして、こいつは自分のことを最強無敵と言ったから最強無敵になった。
もっとも、「我輩の次に」という隠れた前提条件が付いているが、こいつはそれを知らない。
なぜなら我輩は《全知全能最強無敵絶対優位なる者》であり、最強無敵の存在として絶対優位にあるので、我輩のほうが強いのだ。
「無理だよ。おまえにはどう足掻いても我輩を倒せない。逆に我輩はおまえを簡単に屠れるけどね。たとえどんなに無敵を連呼しようとも」
我輩は全能なのだ。ナルシスト男の無敵を無視してダメージを与えることも可能である。
なんなら最強無敵を剥がすこともできるし、言葉の能力を消すこともたやすい。
「そんな馬鹿な……」
ナルシスト男は我輩を殺そうといろんな殺意の言葉を叫ぶ。
だが我輩には死ねと言われようが消えろと言われようがいっさい通用しない。
「おまえさぁ、なんで自分で悪を名乗ってんの?」
「我は社会の法で裁けない姑息な悪党を裁く者。そのためには法も犯そう。それゆえ悪とは名乗れても正義とは名乗れないのだ」
「嘘だね。かっこつけで名乗ってるだけじゃん。何ならモテたいとかファンが付いてほしいとか思ってんのもお見通しだよ。おまえさぁ、かっこつけで悪を名乗るのやめてもらえる?」
「さっきから偉そうに、何なんだ、貴様は!」
さすがにクールぶった態度も剥がれてきた。こういうプライドの高い手合いは煽りに弱いのだ。
「我輩は《全知全能最強無敵絶対優位なる者》だよ」
「何だと!? にわかには信じがたいが、我の能力が及ばないということは、それもありえないことではなさそうだ。だからといって、貴様に我を侮辱する権利などないぞ!」
「やっぱり馬鹿だなぁ。権利っていうのは人間社会の内側で定めたものでしょ。我輩は人間社会の外側にいる存在だから、そもそも権利っていう概念自体が我輩とは関係のないものなんだよね」
「はぁ? 何を言っているかさっぱり分かんねーよ」
「そりゃおまえ馬鹿だもん。それとね、ついでだからおまえに善悪の真理を教えてやるよ。この世界には絶対的な善も悪も存在しない。なぜなら、善や悪というのは人間の主観で定義された概念でしかないからだ。我輩が悪と名乗っているのは、人間の価値観に合わせてやっただけの話。本来、我輩は善でも悪でもないし、我輩の行為に善も悪もないわけ。我輩が何をしたって、ただその事実がそこにあるだけ。だから自分が悪であることにこだわりを持っているおまえは、中身がからっぽの薄っぺらい人間なんだよね」
ナルシスト男は顔を真っ赤にして怒っている。
黒いヘルメットでバレないと思っているようだが、全知の我輩には筒抜けなのだ。
ナルシスト男はゴリ押しでは我輩に勝てないと分かっているため、どうにか平静さを取り戻して我輩に勝つ方法を考えた。
そして出した答えがこれだった。
「貴様が《全知全能最強無敵絶対優位なる者》であるのなら、我はさらにその上をいく。我は《全知全能最強無敵絶対優位なる者よりさらに優位なる者》となる!」
あーあ。言っちゃった。
我輩が絶対優位と言っている以上、それより優位な者は存在し得ない。存在してしまったら、絶対優位の「絶対」が嘘になってしまう。
つまり矛盾が生じるのだ。
絶対にあり得ない矛盾が生じてしまった場合、その原因が消滅することになる。
今回の場合は最強無敵のダークヒーローことナルシスト男君だ。
ナルシスト男はパッと消滅してしまった。
「口は災いの元。言葉の重みを誰よりも知っているはずのおまえが自分の言葉で身を亡ぼすとは、やっぱり馬鹿なんだよなぁ」
それから我輩はナルシスト男の出身国であるM国に、国の形をした高さ二十キロメートルの黒い塊たるモノリスを落とした。
ちなみに言っておくが、我輩がいつも来訪者の出身国にモノリスを落としているのは、我輩に敵意を向けた来訪者やそれを送り込んできた国に報復するためではない。
すべては女神への腹いせのためだ。
よって、来訪者がどんなに腰を低くして我輩を持ち上げようとも、我輩は関係なくそいつを殺すし、残ったどこかしらの国にモノリスを落とす。
毎回モノリスの標的が来訪者の出身国になっているのは、単に来訪者が我城に現れたことで我輩の思考にその出身国が写り込むからである。
要するに、コンビニのレジに並んでいたらレジ横に肉まんが置いてあったから、「今日の晩飯は肉まんでいっか」となっているだけってことね。
我輩の目の前に男が立っている。
黒革のジャケットにズボン、黒くて角ばった甲虫のようなヘルメット、そして赤いマフラーという奇妙な格好の男だ。
「我は最強無敵のダークヒーロー。悪を葬るためなら悪にもなろう。毒をもって毒を制す!」
はぁ、嫌だなぁ。悪を名乗るとか我輩とキャラが被ってんだよなぁ。
しかも最強無敵って、我輩の完全下位互換じゃん。
こいつは自分でかっこいいと思っているようだが、ただ空回りして滑り散らかしているナルシストでしかないんだよなぁ。
「で、ご用件は? 早くお引き取り願いたいんだけど、息を」
「ん? ああ、なるほど。早く帰れと言ったように見せかけて、息を引き取れ、つまり死ねと言ったのだな?」
「へぇ、馬鹿でも分かるもんだねぇ。頭が悪そうだから理解できないと思ったよ」
まぁ、これは単なる煽りだ。
こいつが言う言葉も、こいつの用件も、全知の我輩はすべて知っている。
「言ってくれる! だが貴様の言葉は軽い! 我の言葉の重さを知るがいい! 暴君よ、爆ぜろ!」
ナルシスト男が我輩に手のひらを向けて高らかに叫んだ。
こいつは女神のギフト《何でも一つだけ願いを叶えられる力》で《自分の言葉を真実に変える能力》を得た。
つまり、こいつが言ったことは何でもそのとおりになるということだ。こいつが他人に死ねと言えば、そいつは死ぬ。
要するに言霊使いだ。
そして、こいつは自分のことを最強無敵と言ったから最強無敵になった。
もっとも、「我輩の次に」という隠れた前提条件が付いているが、こいつはそれを知らない。
なぜなら我輩は《全知全能最強無敵絶対優位なる者》であり、最強無敵の存在として絶対優位にあるので、我輩のほうが強いのだ。
「無理だよ。おまえにはどう足掻いても我輩を倒せない。逆に我輩はおまえを簡単に屠れるけどね。たとえどんなに無敵を連呼しようとも」
我輩は全能なのだ。ナルシスト男の無敵を無視してダメージを与えることも可能である。
なんなら最強無敵を剥がすこともできるし、言葉の能力を消すこともたやすい。
「そんな馬鹿な……」
ナルシスト男は我輩を殺そうといろんな殺意の言葉を叫ぶ。
だが我輩には死ねと言われようが消えろと言われようがいっさい通用しない。
「おまえさぁ、なんで自分で悪を名乗ってんの?」
「我は社会の法で裁けない姑息な悪党を裁く者。そのためには法も犯そう。それゆえ悪とは名乗れても正義とは名乗れないのだ」
「嘘だね。かっこつけで名乗ってるだけじゃん。何ならモテたいとかファンが付いてほしいとか思ってんのもお見通しだよ。おまえさぁ、かっこつけで悪を名乗るのやめてもらえる?」
「さっきから偉そうに、何なんだ、貴様は!」
さすがにクールぶった態度も剥がれてきた。こういうプライドの高い手合いは煽りに弱いのだ。
「我輩は《全知全能最強無敵絶対優位なる者》だよ」
「何だと!? にわかには信じがたいが、我の能力が及ばないということは、それもありえないことではなさそうだ。だからといって、貴様に我を侮辱する権利などないぞ!」
「やっぱり馬鹿だなぁ。権利っていうのは人間社会の内側で定めたものでしょ。我輩は人間社会の外側にいる存在だから、そもそも権利っていう概念自体が我輩とは関係のないものなんだよね」
「はぁ? 何を言っているかさっぱり分かんねーよ」
「そりゃおまえ馬鹿だもん。それとね、ついでだからおまえに善悪の真理を教えてやるよ。この世界には絶対的な善も悪も存在しない。なぜなら、善や悪というのは人間の主観で定義された概念でしかないからだ。我輩が悪と名乗っているのは、人間の価値観に合わせてやっただけの話。本来、我輩は善でも悪でもないし、我輩の行為に善も悪もないわけ。我輩が何をしたって、ただその事実がそこにあるだけ。だから自分が悪であることにこだわりを持っているおまえは、中身がからっぽの薄っぺらい人間なんだよね」
ナルシスト男は顔を真っ赤にして怒っている。
黒いヘルメットでバレないと思っているようだが、全知の我輩には筒抜けなのだ。
ナルシスト男はゴリ押しでは我輩に勝てないと分かっているため、どうにか平静さを取り戻して我輩に勝つ方法を考えた。
そして出した答えがこれだった。
「貴様が《全知全能最強無敵絶対優位なる者》であるのなら、我はさらにその上をいく。我は《全知全能最強無敵絶対優位なる者よりさらに優位なる者》となる!」
あーあ。言っちゃった。
我輩が絶対優位と言っている以上、それより優位な者は存在し得ない。存在してしまったら、絶対優位の「絶対」が嘘になってしまう。
つまり矛盾が生じるのだ。
絶対にあり得ない矛盾が生じてしまった場合、その原因が消滅することになる。
今回の場合は最強無敵のダークヒーローことナルシスト男君だ。
ナルシスト男はパッと消滅してしまった。
「口は災いの元。言葉の重みを誰よりも知っているはずのおまえが自分の言葉で身を亡ぼすとは、やっぱり馬鹿なんだよなぁ」
それから我輩はナルシスト男の出身国であるM国に、国の形をした高さ二十キロメートルの黒い塊たるモノリスを落とした。
ちなみに言っておくが、我輩がいつも来訪者の出身国にモノリスを落としているのは、我輩に敵意を向けた来訪者やそれを送り込んできた国に報復するためではない。
すべては女神への腹いせのためだ。
よって、来訪者がどんなに腰を低くして我輩を持ち上げようとも、我輩は関係なくそいつを殺すし、残ったどこかしらの国にモノリスを落とす。
毎回モノリスの標的が来訪者の出身国になっているのは、単に来訪者が我城に現れたことで我輩の思考にその出身国が写り込むからである。
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