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4章.鳴門の渦のように‥(足利鳴門)
2.鳴門と喜和と喜和の二人の兄弟。
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と言っても、昔から僕がこんなに諦めが良かったわけでも、変に悟ってたわけでもない。
昔は、ちょっとうらやましいと同時に憎らしかったってのもあるんだ。
だから、ね、ちょっとした嫌がらせをした。
嫌がらせっていうか‥嫌がらせもあったけど‥アレだ。
‥ぶっちゃけ、調子に乗ってた。
僕が、「喜和ちゃんにぶたれた~」って泣いたら、喜和ちゃんの兄さんたちが喜和ちゃんを怒ってくれる‥それが
嬉しかったんだ。
喜和ちゃんより、僕の方が喜可愛がられてる!
って結構本気で思って‥思い上がってたんだ。
‥だから、別に叩かれたのなんて痛くも無いのに‥わざと泣いたりして‥あの頃の僕は子供だったよ‥。
思えば、あの頃から喜和ちゃんは大人だった。
普通だったら、「そんなこと位で泣くから、僕が兄さんたちに怒られたじゃないか」って(兄さんたちがいないときに)怒ってきたり、「もう遊ばない! 」って言ってもおかしくなかっただろうに‥だ。
喜和ちゃんは、兄さんたちにボコられても、次の日は、相変わらず僕と遊んでくれてたんだ‥。
喜和ちゃんの兄さんたちに対する憧れも‥少しはあったんだろうね。
だって、二人は誰から見てもイケメンだったから。
それも、タイプの違うイケメン。
上のお兄さんの義直様は、ホントに「頼りがいがある真面目なお兄さん」って感じなんだ。眼光鋭い強面タイプ。毎日鍛錬欠かさない「ザ真面目」ってタイプ。折り目正しい「きちんとした大人」で、毎日パリッとした道着を着こなす清潔な人。
もう一人のお兄さんの直史様は、見た目から義直様とはちょっと違ってて、一見「チャラい」って感じに見えた。
話してみると穏やかでしっかりした人だから、あくまで見た目だけね。
黒髪で剛毛短髪の義直様とは違って、茶髪猫っ毛だから余計にそう見えたのかも? 茶髪っていって、染めてるんじゃない。色素が全体的に薄いんだ。彼らの父親もそうだから、遺伝なんだろう。
笑顔がさわやかで、人当たりもよくって、明るく優しい「女ウケする」色男の直史様と、真面目で誠実、親切で「頼りがいのある」色男義直様。
そんな二人は、昔っから(勿論今でも)里の女の子たちのアイドルだ。
‥今は、それに成長株の喜和ちゃんが加わって「徳川さん家のイケメン三兄弟」って呼ばれてるみたいだ。
義直様と喜和ちゃんは6つ離れているけど、直史様と喜和ちゃんは2つしか離れていない。
だから、年の離れた兄弟を心配する義直様と違って、直史様の喜和ちゃんに対する扱いはもっと「近しい」ものだった。
直史様は、昔
「喜和ってば鳴門ちゃんにいいとこ見せたいってカッコつけすぎたよね~。そういうとこは子供っぽいよね~。だけど、カッコだけで、実力は伴ってないの。刀なら模倣刀って感じだね! 当てても人は殺せないって感じ」
て言って、喜和ちゃんを揶揄ってた。
だけど、喜和ちゃんがいないところでは「兄さんの顔」で微笑み
「でも、いいことだと思うよ。
カッコつけたい、いいとこ見せたい。強く見せたい。そういうのは、努力の原動力になる。
喜和のいいところは、(鳴門にいいところをみせたいという)目的の為とは言え、努力ができるところだよね」
って喜和ちゃんのこと、認めてた。
「だけどアイツのヤバいところは、今の状態が所詮模倣刀だってことに気付いてなくって‥満足しちゃってるところだよね。
俺、練習しなくても初めからできてるとか‥天才じゃね? とか思ってそう‥。
そういうところは、徹底的に叩き潰して‥伸びた「天狗の鼻」はへし折っとかないとね♡」
‥て付け加えたりもしてたけど。
で、「喜和ちゃんの天狗の鼻をへし折る為」色々と理由(イチャモン)つけては喜和ちゃんをボコってた。(義直さんと二人で)
思えば、僕の「喜和ちゃんに叩かれた~」って訴えは、その理由にもってこいだったんだろう。
「鳴門ちゃんを叩いたね? お前、いつの間にそんな悪人になったんだ? 」
ってね。
僕の為なんかじゃなく、弟の(躾の)為。
だけど、当時の僕はそんなこと気付きもしなかった。
ただ、ホントのお兄ちゃんが出来たみたいで嬉しかった。ホントのお兄ちゃんが自分の為に怒ってくれてるみたいで‥嬉しかった。
あの時はね。
だけど、途中で気付いたんだ。
「だけど、二人は僕のホントの兄じゃない。‥二人にとって大事なのはホントの弟の喜和ちゃんだけなんだ」
って。
「二人は弟の為に、僕を理由に弟を叱ってるに過ぎないんだ」
って‥。
その時だ。
「ああ、‥憧れても、望んでもこれは「絵の中の餅」と同じで、決して手に入らないものなんだ」
って気付いたのは‥。
虚しかったし、悲しかったし‥今までの自分が急に恥ずかしくなった。
勘違いしてたことに気付くってホント恥ずかしいよね?
でも、
あの時、気付いてよかった。
あのままじゃ、僕喜和ちゃんに嫌われてたよ!
‥僕が「これはダメだ」「これは違う」って気付いたのが先なのか、喜和ちゃんが「こんなことしてたら兄たちにボコられて嫌だ」って思って僕にちょっかいかけるのをやめたのが先だったのか‥それはよくわからない。(ホントに「こんなことして‥馬鹿みたい」って気付いたのかもしれないけどね‥)
気が付けば、喜和ちゃんは僕にちょっかいを出してこなくなったし、義直様も直史様も(喜和ちゃんと僕の関係が良好だから)気が付けば、僕の事を守ってくれなくなった。(※ 単に(鳴門を好きだって自覚した)喜和に近づかせてもらえなくなっただけ)
二人は忙しいから仕方が無いんだけど、‥何か寂しいね。
時々、昔の事を思い出して懐かしく、寂しい気がするのは二人には内緒だ。
そんな‥自分が余計に「可哀そうで」惨めになる言葉をわざわざ口にするほど、僕は自虐的じゃない。
ノスタルジーに浸るほどの年でもない。
自分でどう足掻いても手に入らない欲しいものを嘆くより、足掻けば手に入る欲しいものの為に努力した方がいいい。
肉親はどうにもならないけど、血は繋がらなくても、「信じ愛しあえる」関係を結んでいくことはこれから先きっと出来る。‥別に僕は「一生独身! 」って決めてるわけでは無い。愛し愛され、信じあえる人が現れたらぜひ結婚もしたい。(結婚生活に憧れがあるわけでもないが)
既にいる「兄弟たち」との関係の修復をしないでもいいってことでもない。(寧ろしなければいけない)
実力を見込まれてスカウトされてきた兄弟たちと違って、自分は今のままでは当主の肉親だという理由だけでここに居る役立たずのおまけでしかないから‥。
憧れの為、自尊心の為。僕はないものねだり‥「絵の中の餅」に涎をたらし、足を止めてる暇なんかないんだ。
昔は、ちょっとうらやましいと同時に憎らしかったってのもあるんだ。
だから、ね、ちょっとした嫌がらせをした。
嫌がらせっていうか‥嫌がらせもあったけど‥アレだ。
‥ぶっちゃけ、調子に乗ってた。
僕が、「喜和ちゃんにぶたれた~」って泣いたら、喜和ちゃんの兄さんたちが喜和ちゃんを怒ってくれる‥それが
嬉しかったんだ。
喜和ちゃんより、僕の方が喜可愛がられてる!
って結構本気で思って‥思い上がってたんだ。
‥だから、別に叩かれたのなんて痛くも無いのに‥わざと泣いたりして‥あの頃の僕は子供だったよ‥。
思えば、あの頃から喜和ちゃんは大人だった。
普通だったら、「そんなこと位で泣くから、僕が兄さんたちに怒られたじゃないか」って(兄さんたちがいないときに)怒ってきたり、「もう遊ばない! 」って言ってもおかしくなかっただろうに‥だ。
喜和ちゃんは、兄さんたちにボコられても、次の日は、相変わらず僕と遊んでくれてたんだ‥。
喜和ちゃんの兄さんたちに対する憧れも‥少しはあったんだろうね。
だって、二人は誰から見てもイケメンだったから。
それも、タイプの違うイケメン。
上のお兄さんの義直様は、ホントに「頼りがいがある真面目なお兄さん」って感じなんだ。眼光鋭い強面タイプ。毎日鍛錬欠かさない「ザ真面目」ってタイプ。折り目正しい「きちんとした大人」で、毎日パリッとした道着を着こなす清潔な人。
もう一人のお兄さんの直史様は、見た目から義直様とはちょっと違ってて、一見「チャラい」って感じに見えた。
話してみると穏やかでしっかりした人だから、あくまで見た目だけね。
黒髪で剛毛短髪の義直様とは違って、茶髪猫っ毛だから余計にそう見えたのかも? 茶髪っていって、染めてるんじゃない。色素が全体的に薄いんだ。彼らの父親もそうだから、遺伝なんだろう。
笑顔がさわやかで、人当たりもよくって、明るく優しい「女ウケする」色男の直史様と、真面目で誠実、親切で「頼りがいのある」色男義直様。
そんな二人は、昔っから(勿論今でも)里の女の子たちのアイドルだ。
‥今は、それに成長株の喜和ちゃんが加わって「徳川さん家のイケメン三兄弟」って呼ばれてるみたいだ。
義直様と喜和ちゃんは6つ離れているけど、直史様と喜和ちゃんは2つしか離れていない。
だから、年の離れた兄弟を心配する義直様と違って、直史様の喜和ちゃんに対する扱いはもっと「近しい」ものだった。
直史様は、昔
「喜和ってば鳴門ちゃんにいいとこ見せたいってカッコつけすぎたよね~。そういうとこは子供っぽいよね~。だけど、カッコだけで、実力は伴ってないの。刀なら模倣刀って感じだね! 当てても人は殺せないって感じ」
て言って、喜和ちゃんを揶揄ってた。
だけど、喜和ちゃんがいないところでは「兄さんの顔」で微笑み
「でも、いいことだと思うよ。
カッコつけたい、いいとこ見せたい。強く見せたい。そういうのは、努力の原動力になる。
喜和のいいところは、(鳴門にいいところをみせたいという)目的の為とは言え、努力ができるところだよね」
って喜和ちゃんのこと、認めてた。
「だけどアイツのヤバいところは、今の状態が所詮模倣刀だってことに気付いてなくって‥満足しちゃってるところだよね。
俺、練習しなくても初めからできてるとか‥天才じゃね? とか思ってそう‥。
そういうところは、徹底的に叩き潰して‥伸びた「天狗の鼻」はへし折っとかないとね♡」
‥て付け加えたりもしてたけど。
で、「喜和ちゃんの天狗の鼻をへし折る為」色々と理由(イチャモン)つけては喜和ちゃんをボコってた。(義直さんと二人で)
思えば、僕の「喜和ちゃんに叩かれた~」って訴えは、その理由にもってこいだったんだろう。
「鳴門ちゃんを叩いたね? お前、いつの間にそんな悪人になったんだ? 」
ってね。
僕の為なんかじゃなく、弟の(躾の)為。
だけど、当時の僕はそんなこと気付きもしなかった。
ただ、ホントのお兄ちゃんが出来たみたいで嬉しかった。ホントのお兄ちゃんが自分の為に怒ってくれてるみたいで‥嬉しかった。
あの時はね。
だけど、途中で気付いたんだ。
「だけど、二人は僕のホントの兄じゃない。‥二人にとって大事なのはホントの弟の喜和ちゃんだけなんだ」
って。
「二人は弟の為に、僕を理由に弟を叱ってるに過ぎないんだ」
って‥。
その時だ。
「ああ、‥憧れても、望んでもこれは「絵の中の餅」と同じで、決して手に入らないものなんだ」
って気付いたのは‥。
虚しかったし、悲しかったし‥今までの自分が急に恥ずかしくなった。
勘違いしてたことに気付くってホント恥ずかしいよね?
でも、
あの時、気付いてよかった。
あのままじゃ、僕喜和ちゃんに嫌われてたよ!
‥僕が「これはダメだ」「これは違う」って気付いたのが先なのか、喜和ちゃんが「こんなことしてたら兄たちにボコられて嫌だ」って思って僕にちょっかいかけるのをやめたのが先だったのか‥それはよくわからない。(ホントに「こんなことして‥馬鹿みたい」って気付いたのかもしれないけどね‥)
気が付けば、喜和ちゃんは僕にちょっかいを出してこなくなったし、義直様も直史様も(喜和ちゃんと僕の関係が良好だから)気が付けば、僕の事を守ってくれなくなった。(※ 単に(鳴門を好きだって自覚した)喜和に近づかせてもらえなくなっただけ)
二人は忙しいから仕方が無いんだけど、‥何か寂しいね。
時々、昔の事を思い出して懐かしく、寂しい気がするのは二人には内緒だ。
そんな‥自分が余計に「可哀そうで」惨めになる言葉をわざわざ口にするほど、僕は自虐的じゃない。
ノスタルジーに浸るほどの年でもない。
自分でどう足掻いても手に入らない欲しいものを嘆くより、足掻けば手に入る欲しいものの為に努力した方がいいい。
肉親はどうにもならないけど、血は繋がらなくても、「信じ愛しあえる」関係を結んでいくことはこれから先きっと出来る。‥別に僕は「一生独身! 」って決めてるわけでは無い。愛し愛され、信じあえる人が現れたらぜひ結婚もしたい。(結婚生活に憧れがあるわけでもないが)
既にいる「兄弟たち」との関係の修復をしないでもいいってことでもない。(寧ろしなければいけない)
実力を見込まれてスカウトされてきた兄弟たちと違って、自分は今のままでは当主の肉親だという理由だけでここに居る役立たずのおまけでしかないから‥。
憧れの為、自尊心の為。僕はないものねだり‥「絵の中の餅」に涎をたらし、足を止めてる暇なんかないんだ。
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