奴隷鬼の少女とやさしい黒騎士

志人

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序章:鬼虐人尊国家 日の国

壱話:奴隷の鬼

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鬼は人を喰い弄び殺し猛威をふるい人を支配した。だかそれは五百年も前のこと。五百年前突如現れた12の神器は人のみに絶対なる力を与えた。
そのうちの1本を手にした男は全ての人間をまとめあげ、鬼のすみか、鬼ヶ島に攻め込み伝説の鬼の首を刈った。
その12の神器は未来永劫、人を守り、悪行を繰り返した鬼を抑制したとさ。

桃太郎伝説より

1

子供の笑い声が空に響く。麦は一面に広がり人が飢えることはないだろう。

人は。
人にはとても生きやすい国だ。


首が痛い。正確には首から肩が痛い。 
私につけられた首輪が合ってないのだ。私の首に対して、この首輪は大きすぎる。そんなことをこの首輪をつけた人間に言える筈もなく、ただうつむいて、この道を歩くしかない。。
この首輪の大きさなら、頑張れば頭を通せるだろうか、いや通せたとしてもここから逃げられない。捕まって鞭で叩かれるのがオチだろう。

以前、手錠を上手く外し、人間を殺してひとりで逃げた鬼の女がいる。私の母親だ。
その鬼は捕まり、裸に剥かれ、健を切られたあと男共の玩具にされた。その程度のことは女の鬼にはよくされることだが、その後縄で馬に縛られ、死ぬまで引きずられた。
死体は磔にされて、みせしめにされた。
そんな母の姿を今でも繊細に私は覚えているのだ。
浅黒い鬼の肌より、もっと赤くて黒い血が全身にこびりついてた。長かった髪の毛は引きちぎられて、頭の頭皮が剥き出しになっている。

私もいつかはこうなるのだろうか。
こんな、苦痛に満ちた顔で死ぬのだろうか。鬼として生まれたなら、醜く死ぬしかないのだろう。私も、私達も。

「もっと早く歩け鬼共」
 
人間の男が鎖を強く引く。そのせいで私の前にいたまだ幼い男の子の鬼がよろめき倒れてしまう。
 
「構わん。そのまま引きずれ」

私を含めた鬼達はなんの反応も反論もしないままその命令に従う。反抗すれば、ろくなことにはならないと身に染みて知ってるからだ。
今歩いている地面は石造りだから、肉が削られて痛いだろうが、鬼はこの程度じゃ死なない。死ねない。

あぁ、ここでは、どんなことをされるんだろう。どこの街でも同じようなことをされてきたのに、ここでは優しくされるのではないかと、期待してしまう。
期待は持たない方がいい、裏切られた時ほど、辛く帰ってくるから。

その瞬間頭に衝撃がはしる。この感覚は知ってる。石を投げられたんだ。
まだ幼い子供が私に向かって石をなげたのだ。
頭から私の鮮血が地面に垂れる。痛みだけしかこない。
石を投げた子供の母親はくすくすと嗤うばかり。
そんなことをされても、もう痛みしか感じることはなかった。

2

街に入る前にすることが川で汚れを落とす事だった。私はボロい服を脱がされ、服を持って川に入る。他の鬼たちも同じようにそうする。
まだ梅雨明けの川は冷たく、入ってと気持ちのいいものではない。
身体と服を洗う。川に入れれば、小さな砂や泥が水によって落ちるのを確認する。
川の水も飲む。水では鬼の乾きは無くならないが、飲まないよりましである。急いで飲んだから、牙で口の中を切ってしまった。

「さっさとしろ!これからお前達を買って下さる領主様の元へいく!しっかりと汚れを落とせ!」


3
街に入れる大きな門の前。
「次。」
鬼達は裸にされ列に並び門番の前で列を成す。
「次。」
恥ずかしさはない。もうみんな慣れてるのだ。
「次。」
必ず領主の元に行く前にこの点検をするのだ。
「次。」
私の番で止まった。
「胸の烙印が消えかかっている。上書きしてやれ」
「ッ!!」
私がこいつらの検問でひっかかったのだ。
本番の後ろに居た男が鉄の焼きごてを持ってきて私の左の露骨より少し下の所に当てる。
「ぐぅっっ!!」
熱い熱い熱いくて痛いくて辛い。
ジュウッと音がして煙がたつ。皮膚の水分が焼きごての熱で蒸発しているのだ。そのせいで私の胸は真っ赤に腫れている。

隷という漢字が赤く浮かびあがっている。
暫くしたらこんどは黒くなってきて、なかなか消えない。
鬼は傷の治癒力が高いからそれでも、薄くなっていくのだ。その奴隷である刻印を上書きするのがこいつらの仕事なのだ。
「あ、ありがとう、ございます・・・」と言ってしまう。子供の頃にそう躾られてしまったのだ。
私は小走りで渡されたボロ布を羽織り、門をくぐっていった。

4

領主の城へ入り、領主の前で私達は跪かされる。
城は今まで見てきたなかでも、豪華なもので、この領主の権力が解る。
 
領主と呼ばれた男はよく肥えて、完全に禿げている。
豪華な着物が腹の辺りで膨れ上がっている。
「ご苦労であった。こ奴らは将軍様の言いつけ通り儂がこの鬼を使ってやる。お主らはそこの者について行け。当分の食料と資金そして馬車を用意してある。」
「はっ!ありがとうございます!」
私達を連れてきた隊の隊長はいい返事をして、部下を引き連れ、この部屋から退出した。

「さぁて、お前達には明日、見世物になってもらう。みせしめにもなってもらう。」

私達鬼に悪意の無い声でそう言い放った。

5
この街はなんでも毎年15匹の鬼を磔にして、剣で少しずつ解体してゆくという行事があるらしい。私達はなかなか死ねないから、誰が一番長く生きていられるか、そういう賭けもするのた。

そのことを今聞いた。今から解体されるからだ。
私達鬼は十字架に磔にされて、その前に屈強な人間が剣を片手に1人ずつ立っている。 
鬼の中には小さな男の子供から、痩せほせた大人の鬼までいる。私は1番左端の方に磔にされ、横を見れば全ての鬼が同じように、今から起こる事に恐怖を感じている。もちろん私の中にもこれまで以上の恐怖がうまれている。


怖い。痛いのは嫌だ。痛くてもいいから死にたくない。
抑えようのない涙が溢れ出る。そんな、姿を見て観客である人間はわくわくするのだろう。

「それでは一刀めを始めー!」

無情な領主の合図で剣が私達の左手を切り落とす。

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!イタイ!イタイ!
痛過ぎて、痛みが消えるなんてことはなく左手に激痛がはしる。   
鮮血が止まらず、前の剣をもった男が血まみれになる。こんなにたいりの自分の血なんて見たことがない。剣を持った男はまた剣を振り上げる。
観客は歓声をあげ、私達鬼は悲鳴をあげる。

「二刀目ー!!」

嫌だいやだ嫌だいやだ嫌だいやだ嫌だいやだ
そんなことを思っても男は無情である。
次は左腕の肘から先を切り落とす。
肘は骨が複雑に絡み合ってるので、骨を砕くようにして切り落とす。

汗が滝のように出る。
鬼の中には助けを求めるものさえいた。
自分が何を叫んでいるのかさえ解らない。

三刀目

左肩を切り落とす。

血をおおく失い過ぎたのか意識が薄れていくが、失うわけではない。

もう

殺して

そう思った時に目の前に黒い人影が視界を横切った。

6

「■■■■■■ー―■■■―■■■■■■■■■■■■■■■■■―■■■■■■■ッ!!!!!!!!!」

まるで

この世の全てを憎むかのような獣の咆哮を聞いた。


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