13 / 13
進章: 崩壊造鉄都市 アマノマ
伍話:私の暗殺
しおりを挟む
1
私が無様に転がり落ちた。
私は急いで辺りを見渡す。
辺りは先程降った剣の雨がこの街の至る所に刺さっている。
男の腹ごと地面に刺さっている刀。
瓦造りの屋根を粉々にし、深々と刺さる刀。
荷を運んでいたであろう男の脳天にさえも。
街の全てから呻き声と悲鳴が聞こえる。
全身を隈無く走る痛みを無視して立ち上がろうとするが、よろめき再び地面に顔を打ち付ける。
あの馬鹿な大名。
自分の治める街を自分で壊してどうする。
「真蒼様・・・!」
こんな街がどうなろうが知ったことではないが、我が主だけが心配。
「そこの忍び装束の女。先程の賊の仲間だな」
とても冷たい声。見上げると背の高い甲冑に身を包んだ侍。
「ただで死ねると思うなよ」
侍の刀が私の肩を突き刺す。
「あ・・・うぅ・・・」
早く早く真蒼様のお元へ向かわなければいけないのに
私は
絶望で視界が暗くなってゆく。
「自分の身を守ることだけ考えよ」
暗闇の中で透き通った言葉が私の脳をさす。
これは真蒼様が私に下さったご命令。
その命令を想うと腹から力が湧いてくる。
「私はっ・・・」
くないを侍の首に投げる。
刺さることは刺さったが、まだ浅い。
「ああっ!」
腕を地面に叩きつけ、侍の首まで私の頭を持ってゆく。
あとはづつきでくないを押した。
「ゲボっロ」
侍の男は鼻と口から血を吐きながら倒れ込む。
逃げないと
くないと引き抜き私は城とは逆の方に走った。
2
もう何時逃げているだろう。
日は完全に沈んだが、タタラ場から出火した火は増すばかり。
鉄を作るには火がどうしても必要となる。
あの剣の雨でタタラ場は崩壊したのだろう。
火を扱う人間が死ねば火は自由となり、辺りを燃やし始める。
血を多く失い過ぎたのかもしれない。
脚に自分で巻いた包帯を見ると血が滲んでいる。
火で傷口を炙って止血したのに。
「居たぞ!ここだ!ここに隠れておる!」
見つかった。侍だ!一人の叫びでぞろぞろとこちらに侍が駆けつける。
こんな現状だというのに、この侍達は火を治めることより、私を見つけることを優先している。
「観念しろ女」
「誰が・・・すると・・・」
血が乾いたくないを構える。
侍は全部で十人。全員が眷属刀を持っている。
「私に力をお貸しください真蒼様」
3
そこからは
侍を蹴ったり、くないで刺したり、
噛み付いたり、目を指で潰してり。
できる全ての力で応戦した。
半時ぐらいで全ての敵を殺せた。
半時も限界の来た身体を動かせ続けたのだ。
私は立つことすら、這うことすらできずただ意識をもつのが精一杯。
そんな中。
「あ、・・・でも一人だけ生きてるよ。よかった・・・」
男の声がした。とてもしんどそうな。
今にも死にそうな声が。
敵・・・?
いや、考えるまでもない。
敵だ。
真蒼様以外の全ては敵だ。
私は身体を起こす。
不思議ともう痛みも疲労も身体を襲わない。
帰るんだ。真蒼様のお元へ
その男の姿はぼやけて見えない。
殺す。ただ殺意だけを胸に私はその男を殺そうとした。
4
目が覚めると視界より先に身体に痛みが走る。
「あう・・・」
私はどうやら横向けの姿勢でいる。
首を傾けられないので目だけを動かし、辺りを見渡す。
「あ、起きたんだ。良かった」
どこかで聞いた声だ。そうだ気を失う前だ。
私は情けをかけられたのか?
いや、動けない私をこの人はどうするか解らない。
「あなたは・・・?いや、ここは?今いつ?」
「ここは天目の空き家。今は月の位置からして丑三つ時ぐらい。俺の名前はアスラ」
阿修羅?いや明日良かも・・・
「君は?」
「私・・・雛菊」
「そっかヒナギクか。可愛らしい名前だね」
この人は真蒼様から頂いた私の名前を褒めてくれた。だからと言って信用できないけど。
今まで甘い言葉をかけて近寄ってきた男の人は沢山いた。
私は身も心も我が主に捧げたので、どんなに言い寄られようと迷惑。
「それからどうしたのその傷?」
この人も私は信じない。
「その背中の傷は刀で刺された傷だし、太ももの傷は鋭利な物が深深と刺さった傷だ。なにがどうしたの?しかもそれは忍び装束だ。」
この人私の身体を調べたんだ。私が気を失ってるあいだに。
傷口はなんなと言って誤魔化せたけど、忍び装束は駄目。
私はくないを探すが、どこにもない。
なんて言い訳しよう。もししくじればこの人は外で巡回してる侍を呼ぶに違いない。
「実は・・・忍びの稽古中に空から刀が降ってきて・・・それをまともに受けてしまったんです」
しまった。空から刀が降ってきたなんて通じる訳がない。しくじってしまった。
「そっか・・・それは災難だったね・・・」
信じるの?
次は何故私があそこで侍と殺しあっていたかの言い訳をしないと
「死にたくなくて逃げ回ってると、侍様方が私に乱暴しようとして・・・それで私・・・どうすればいいのか解らなくて・・・」
しまった!この人は私が何故侍と殺しあってたかは問うてない。
問うてないことをわざわざ説明なんてすれば、裏があると勘ぐくられてしま
「そっか・・・大変だったんだ」
また信じた。
ここまで信じる人を見ると逆に何か裏があるのではないかとこちらが気を張ってしまう。
「すみません。少しあっちを向いて貰ってていいですか?」
「いいけど何かするの?手伝いがいたら遠慮なく言ってね」
「はい。私の様な者に気遣い感謝いたします」
目の前のボサボサの髪の男は私に背を向ける。
この男が私を侍に売らない保証はどこにもない。
もし侍が来たら私は今度こそ死ぬ。くないも回収しなきゃ。
そして何よりもう真蒼様にお会い出来ない。
真蒼様の身の世話を出来ない。
それを阻止する為にはこの人を殺すのが一番いいだろう。
ずっと脇に括り付けていた針を取り出す。
狙うはうなじの上。
ここは頭蓋骨に隙間があり、針が刺さる。
脳を掻き回すから、声も出さずに楽に殺せる。
さようなら。名も知らない人
「ちょっと待ったぁーーーー‼」
「!」
少女の声のする方を見る。
何故か鞄から顔を出す、角の生えた少女。
私の暗殺は鬼の少女によって阻止された。
私が無様に転がり落ちた。
私は急いで辺りを見渡す。
辺りは先程降った剣の雨がこの街の至る所に刺さっている。
男の腹ごと地面に刺さっている刀。
瓦造りの屋根を粉々にし、深々と刺さる刀。
荷を運んでいたであろう男の脳天にさえも。
街の全てから呻き声と悲鳴が聞こえる。
全身を隈無く走る痛みを無視して立ち上がろうとするが、よろめき再び地面に顔を打ち付ける。
あの馬鹿な大名。
自分の治める街を自分で壊してどうする。
「真蒼様・・・!」
こんな街がどうなろうが知ったことではないが、我が主だけが心配。
「そこの忍び装束の女。先程の賊の仲間だな」
とても冷たい声。見上げると背の高い甲冑に身を包んだ侍。
「ただで死ねると思うなよ」
侍の刀が私の肩を突き刺す。
「あ・・・うぅ・・・」
早く早く真蒼様のお元へ向かわなければいけないのに
私は
絶望で視界が暗くなってゆく。
「自分の身を守ることだけ考えよ」
暗闇の中で透き通った言葉が私の脳をさす。
これは真蒼様が私に下さったご命令。
その命令を想うと腹から力が湧いてくる。
「私はっ・・・」
くないを侍の首に投げる。
刺さることは刺さったが、まだ浅い。
「ああっ!」
腕を地面に叩きつけ、侍の首まで私の頭を持ってゆく。
あとはづつきでくないを押した。
「ゲボっロ」
侍の男は鼻と口から血を吐きながら倒れ込む。
逃げないと
くないと引き抜き私は城とは逆の方に走った。
2
もう何時逃げているだろう。
日は完全に沈んだが、タタラ場から出火した火は増すばかり。
鉄を作るには火がどうしても必要となる。
あの剣の雨でタタラ場は崩壊したのだろう。
火を扱う人間が死ねば火は自由となり、辺りを燃やし始める。
血を多く失い過ぎたのかもしれない。
脚に自分で巻いた包帯を見ると血が滲んでいる。
火で傷口を炙って止血したのに。
「居たぞ!ここだ!ここに隠れておる!」
見つかった。侍だ!一人の叫びでぞろぞろとこちらに侍が駆けつける。
こんな現状だというのに、この侍達は火を治めることより、私を見つけることを優先している。
「観念しろ女」
「誰が・・・すると・・・」
血が乾いたくないを構える。
侍は全部で十人。全員が眷属刀を持っている。
「私に力をお貸しください真蒼様」
3
そこからは
侍を蹴ったり、くないで刺したり、
噛み付いたり、目を指で潰してり。
できる全ての力で応戦した。
半時ぐらいで全ての敵を殺せた。
半時も限界の来た身体を動かせ続けたのだ。
私は立つことすら、這うことすらできずただ意識をもつのが精一杯。
そんな中。
「あ、・・・でも一人だけ生きてるよ。よかった・・・」
男の声がした。とてもしんどそうな。
今にも死にそうな声が。
敵・・・?
いや、考えるまでもない。
敵だ。
真蒼様以外の全ては敵だ。
私は身体を起こす。
不思議ともう痛みも疲労も身体を襲わない。
帰るんだ。真蒼様のお元へ
その男の姿はぼやけて見えない。
殺す。ただ殺意だけを胸に私はその男を殺そうとした。
4
目が覚めると視界より先に身体に痛みが走る。
「あう・・・」
私はどうやら横向けの姿勢でいる。
首を傾けられないので目だけを動かし、辺りを見渡す。
「あ、起きたんだ。良かった」
どこかで聞いた声だ。そうだ気を失う前だ。
私は情けをかけられたのか?
いや、動けない私をこの人はどうするか解らない。
「あなたは・・・?いや、ここは?今いつ?」
「ここは天目の空き家。今は月の位置からして丑三つ時ぐらい。俺の名前はアスラ」
阿修羅?いや明日良かも・・・
「君は?」
「私・・・雛菊」
「そっかヒナギクか。可愛らしい名前だね」
この人は真蒼様から頂いた私の名前を褒めてくれた。だからと言って信用できないけど。
今まで甘い言葉をかけて近寄ってきた男の人は沢山いた。
私は身も心も我が主に捧げたので、どんなに言い寄られようと迷惑。
「それからどうしたのその傷?」
この人も私は信じない。
「その背中の傷は刀で刺された傷だし、太ももの傷は鋭利な物が深深と刺さった傷だ。なにがどうしたの?しかもそれは忍び装束だ。」
この人私の身体を調べたんだ。私が気を失ってるあいだに。
傷口はなんなと言って誤魔化せたけど、忍び装束は駄目。
私はくないを探すが、どこにもない。
なんて言い訳しよう。もししくじればこの人は外で巡回してる侍を呼ぶに違いない。
「実は・・・忍びの稽古中に空から刀が降ってきて・・・それをまともに受けてしまったんです」
しまった。空から刀が降ってきたなんて通じる訳がない。しくじってしまった。
「そっか・・・それは災難だったね・・・」
信じるの?
次は何故私があそこで侍と殺しあっていたかの言い訳をしないと
「死にたくなくて逃げ回ってると、侍様方が私に乱暴しようとして・・・それで私・・・どうすればいいのか解らなくて・・・」
しまった!この人は私が何故侍と殺しあってたかは問うてない。
問うてないことをわざわざ説明なんてすれば、裏があると勘ぐくられてしま
「そっか・・・大変だったんだ」
また信じた。
ここまで信じる人を見ると逆に何か裏があるのではないかとこちらが気を張ってしまう。
「すみません。少しあっちを向いて貰ってていいですか?」
「いいけど何かするの?手伝いがいたら遠慮なく言ってね」
「はい。私の様な者に気遣い感謝いたします」
目の前のボサボサの髪の男は私に背を向ける。
この男が私を侍に売らない保証はどこにもない。
もし侍が来たら私は今度こそ死ぬ。くないも回収しなきゃ。
そして何よりもう真蒼様にお会い出来ない。
真蒼様の身の世話を出来ない。
それを阻止する為にはこの人を殺すのが一番いいだろう。
ずっと脇に括り付けていた針を取り出す。
狙うはうなじの上。
ここは頭蓋骨に隙間があり、針が刺さる。
脳を掻き回すから、声も出さずに楽に殺せる。
さようなら。名も知らない人
「ちょっと待ったぁーーーー‼」
「!」
少女の声のする方を見る。
何故か鞄から顔を出す、角の生えた少女。
私の暗殺は鬼の少女によって阻止された。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる