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そしてB型は惹かれ会う
60.策士策に溺れる
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「冗談ですよ。もはやこんな話題にもならないことは記事にはしませんって」
涼しげな笑顔を浮かべ、新聞部部長、朝日はこともなげに言い放った。
「……あんたらが一度取り上げたからな! あの写真消せよ!」
強の眉間には深く皺が寄っていた。怒りに噛みしめた奥歯が小さく軋む。
かつて新聞部が掲載した記事は、事実の芯を誇張と虚飾で包み込み、まるで強が公然と発言したかのような扱いで紙面を飾った。それが彼の記憶に刻まれている。
今、自由を得た彼は迷わず新聞部の前に立ち塞がる。かつての誤報を根に持っていた。
「まぁまぁ、そんな怖い顔しないで下さい。今日はですね、新しい部活の発足祝いに参りました。是非、独占インタビューをお願いしたくて」
手を広げて柔らかく笑う朝日の姿にはどこか余裕があった。あんな記事を上げた後でインタビューを受けられると思っているのか、その目がチラリと皆人の方へ向いた。
聞けば、次号の一面に金敷部(仮)を据えるつもりだという。そのために各メンバーに話を聞きに来たらしい。
強は呆れつつも相手の言葉選びに少なからず反応していた。
普通なら『独占』という響きに胸が高鳴るはずだ。だが、目の前の朝日には信を置けなかった。
「嫌だ」
短くも断固とした拒絶だった。
年上であろうが、伝統ある部であろうが、そんなものは関係ない。
強は自分の感情に素直であった。
「今日は……ゴシップ部と広報部は来ないんですか?」
横から桐人が疑問を挟む。引っかかるものを感じたのだろう。
あの一件の後なら牽制し合いながら三部連名で来ると思っていたからだ。
だが朝日は少し首を傾げ、含み笑いを口元に浮かべた。
「ゴシップ部はね、出回っていないネタが大好きだから。君達の件はあの放送で世間に知れ渡ったでしょう? あれで彼女達の興味は冷めたのよ」
なるほど、と皆人は内心で納得する。噂を餌にする部活だからこそ見知った題材は扱わない。
「広報部はまぁ……気分屋だから。たぶん、ホームページに載せるほどじゃないと判断したのよ。だけど――」
朝日は瞳を煌めかせた。
「私は違うわ。見る目があるから。君達の部は間違いなく話題になる。だからこそ取材させてほしいの」
「いや、いいです」
どこまでも拒む強。彼の言葉は軽くも迷いもなかった。何をどう並べられても信用は戻らない。
むしろゴシップ部や広報部の方が全然マシだった。あの件で新聞部は地の底まで評価が落ちている。
「あたしは別に良いわよ」
桜が飄々とそう言い、ローズもそれに続く。
「わたくしも構いませんことよ。宣伝になるなら願ったりですわ」
二人共屈託なく賛同する。敵ではないはずの仲間からの意外な発言に強は一瞬目を丸くする。
まさか裏で賄賂でも渡されたんじゃないか? そんな冗談めいた疑念すら過ぎった。
これで賛成二、反対一。民主主義のルールに従えば、このまま多数決でインタビューは受け入れられてしまう。
強は慌てて他の仲間へ目配せを送った。
頼む、止めてくれ――そんな無言の願いを込めて。
「……俺はあんまり気乗りしないな。インタビューとか苦手だし」
口火を切ったのは鉄将だった。やや眉をひそめ、視線を逸らしながら、しかししっかりと反対の意を示す。
「僕はどっちでもいいかな」
「私も同じ。どっちでも構わないわ」
桐人と美月はどちらにも傾かず、中立のまま票を投じた。
ムックに至っては反応すらないがたぶん二人と同じく関心は薄いのだろう。
現在、賛成二、反対二。残されたのは皆人のみだ。
全員の視線が彼に集まる。選ばれし最後の審判者であるかのように。
「……すいませんが、先輩。お帰りください」
皆人は無表情で静かに告げた。朝日の脇を通り抜け、扉に手をかける。
そして開かれた出口を見据えて、強が声ならぬ歓声をあげていた。
しかし――。
朝日はノートを静かに閉じるとゆっくりと深い息を吐き、出口に向かう足を進めた。
皆人とすれ違う刹那、その足を止め、ふと彼の顔を覗き込む。
「……新聞部ってね、思っているより部員が多いのよ。それぞれが自由に題材を探して、情報を集めてくるの」
何が言いたいのか。皆人は眉をわずかに動かす。
「最近ね、吹奏楽部にあることを聞きに行った子がいたらしいの。でも、誰に聞いても知らないって言うのよ。しかも、その特徴も新聞部の誰とも一致しないって」
空気が張り詰めた。皆人の胸の鼓動が激しく高鳴る。
「まるでね……新聞部の名を騙って情報を集めてる奴がいるみたいなの。知ってる? その話」
言葉の終わりに潜ませた毒はまるで蛇のようにねっとりと、皆人の心臓を締め上げた。
あの時、自分が吹奏楽部から情報を引き出すためについた嘘。
咄嗟の機転のつもりだったその行動がこうして仇となって跳ね返ってきたのだ。
だが朝日の目は冷たくも鋭くもない。
むしろ、条件次第で不問にしてやる、という余地を秘めていた。
皆人は小さく唇を噛み、扉を閉じる。
そして背後にいる強へ振り返り、掌を開いて見せた。
「やっぱり新聞部さんにちゃんと宣伝してもらわないとですね!」
笑顔は引き攣っていた。だがそれでも賛成の意を示したのだ。
これで票は動き、インタビューは決定された。
皆人の保身によって新聞部の独占取材が叶ったのだ――皆人の皮肉と共に。
涼しげな笑顔を浮かべ、新聞部部長、朝日はこともなげに言い放った。
「……あんたらが一度取り上げたからな! あの写真消せよ!」
強の眉間には深く皺が寄っていた。怒りに噛みしめた奥歯が小さく軋む。
かつて新聞部が掲載した記事は、事実の芯を誇張と虚飾で包み込み、まるで強が公然と発言したかのような扱いで紙面を飾った。それが彼の記憶に刻まれている。
今、自由を得た彼は迷わず新聞部の前に立ち塞がる。かつての誤報を根に持っていた。
「まぁまぁ、そんな怖い顔しないで下さい。今日はですね、新しい部活の発足祝いに参りました。是非、独占インタビューをお願いしたくて」
手を広げて柔らかく笑う朝日の姿にはどこか余裕があった。あんな記事を上げた後でインタビューを受けられると思っているのか、その目がチラリと皆人の方へ向いた。
聞けば、次号の一面に金敷部(仮)を据えるつもりだという。そのために各メンバーに話を聞きに来たらしい。
強は呆れつつも相手の言葉選びに少なからず反応していた。
普通なら『独占』という響きに胸が高鳴るはずだ。だが、目の前の朝日には信を置けなかった。
「嫌だ」
短くも断固とした拒絶だった。
年上であろうが、伝統ある部であろうが、そんなものは関係ない。
強は自分の感情に素直であった。
「今日は……ゴシップ部と広報部は来ないんですか?」
横から桐人が疑問を挟む。引っかかるものを感じたのだろう。
あの一件の後なら牽制し合いながら三部連名で来ると思っていたからだ。
だが朝日は少し首を傾げ、含み笑いを口元に浮かべた。
「ゴシップ部はね、出回っていないネタが大好きだから。君達の件はあの放送で世間に知れ渡ったでしょう? あれで彼女達の興味は冷めたのよ」
なるほど、と皆人は内心で納得する。噂を餌にする部活だからこそ見知った題材は扱わない。
「広報部はまぁ……気分屋だから。たぶん、ホームページに載せるほどじゃないと判断したのよ。だけど――」
朝日は瞳を煌めかせた。
「私は違うわ。見る目があるから。君達の部は間違いなく話題になる。だからこそ取材させてほしいの」
「いや、いいです」
どこまでも拒む強。彼の言葉は軽くも迷いもなかった。何をどう並べられても信用は戻らない。
むしろゴシップ部や広報部の方が全然マシだった。あの件で新聞部は地の底まで評価が落ちている。
「あたしは別に良いわよ」
桜が飄々とそう言い、ローズもそれに続く。
「わたくしも構いませんことよ。宣伝になるなら願ったりですわ」
二人共屈託なく賛同する。敵ではないはずの仲間からの意外な発言に強は一瞬目を丸くする。
まさか裏で賄賂でも渡されたんじゃないか? そんな冗談めいた疑念すら過ぎった。
これで賛成二、反対一。民主主義のルールに従えば、このまま多数決でインタビューは受け入れられてしまう。
強は慌てて他の仲間へ目配せを送った。
頼む、止めてくれ――そんな無言の願いを込めて。
「……俺はあんまり気乗りしないな。インタビューとか苦手だし」
口火を切ったのは鉄将だった。やや眉をひそめ、視線を逸らしながら、しかししっかりと反対の意を示す。
「僕はどっちでもいいかな」
「私も同じ。どっちでも構わないわ」
桐人と美月はどちらにも傾かず、中立のまま票を投じた。
ムックに至っては反応すらないがたぶん二人と同じく関心は薄いのだろう。
現在、賛成二、反対二。残されたのは皆人のみだ。
全員の視線が彼に集まる。選ばれし最後の審判者であるかのように。
「……すいませんが、先輩。お帰りください」
皆人は無表情で静かに告げた。朝日の脇を通り抜け、扉に手をかける。
そして開かれた出口を見据えて、強が声ならぬ歓声をあげていた。
しかし――。
朝日はノートを静かに閉じるとゆっくりと深い息を吐き、出口に向かう足を進めた。
皆人とすれ違う刹那、その足を止め、ふと彼の顔を覗き込む。
「……新聞部ってね、思っているより部員が多いのよ。それぞれが自由に題材を探して、情報を集めてくるの」
何が言いたいのか。皆人は眉をわずかに動かす。
「最近ね、吹奏楽部にあることを聞きに行った子がいたらしいの。でも、誰に聞いても知らないって言うのよ。しかも、その特徴も新聞部の誰とも一致しないって」
空気が張り詰めた。皆人の胸の鼓動が激しく高鳴る。
「まるでね……新聞部の名を騙って情報を集めてる奴がいるみたいなの。知ってる? その話」
言葉の終わりに潜ませた毒はまるで蛇のようにねっとりと、皆人の心臓を締め上げた。
あの時、自分が吹奏楽部から情報を引き出すためについた嘘。
咄嗟の機転のつもりだったその行動がこうして仇となって跳ね返ってきたのだ。
だが朝日の目は冷たくも鋭くもない。
むしろ、条件次第で不問にしてやる、という余地を秘めていた。
皆人は小さく唇を噛み、扉を閉じる。
そして背後にいる強へ振り返り、掌を開いて見せた。
「やっぱり新聞部さんにちゃんと宣伝してもらわないとですね!」
笑顔は引き攣っていた。だがそれでも賛成の意を示したのだ。
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