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楽園-ベッド・イン-(7)
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リクは最近になって、このスイートルームを借りた。そして、ここに住みながら仕事もしている。
自分のことではないのに、すごく心配になる。リクのことだから、もちろん費用についてはちゃんと計算しているのだろうけれど。
リクは大学卒業後すぐに会社を興し、早四年。今の地位を築いた。
事業内容はよく知らない。たまに手伝ってくれる仕事のパートナーはいるらしいけれど、会ったこともないし、どんな人なのかすら知らなくて謎だらけ。あまりずけずけと踏み込むのも悪いと思い、仕事のことを尋ねたことはほとんどなかった。
リクから聞かされているのはM&Aやサイト売買。あとほかにもあるらしいけど……。
「葉月はなにも心配することないって」
シャンパンからミネラルウオーターに切り替えたリクが、ペットボトルに口をつける。あれだけ動いたから喉が渇いていたらしい。勢いよく半分ほど飲んだ。
「必要経費でどれだけ落ちるんだろう?」
「税理士に相談してみる。まあ全額は無理だろうけど」
と言いつつ、ぜんぜん気にしていない様子。三割だろうが六割だろうが、リクにとってはどうでもいいことなのだ。
大金を動かしているわりには、自分の手もとに残る利益に執着がない。興味はそこじゃないのか、それとも……。
「有り余るお金ってことか」
次元が違い過ぎる。もはやわたしの頭も麻痺してきているようで、そんなものかなんて思っている始末。
「金は動かさないと自分にもまわってこないもんだよ。この部屋を借りることだって、仕事に有益だと思ったから借りたまでだから」
信用ということだろうか。
こことは別に都内にタワーマンションの一室も持っていて、それまではそこを仕事の拠点にしていた。
あの部屋もかなりグレードの高い部屋なのだけれど、それ以上にこのスイートルームは訪れた人を全員魅了させるはずだ。
部屋は四部屋。
とんでもなく広いリビングとベッドルームはプライベート用。そして豪華絢爛の応接室は仕事関係者との打ち合わせなどに使う。残りの部屋はリク専用の仕事部屋だ。
「もしかして、仕事部屋はわざわざ改装したの?」
リビングの隣が仕事部屋になっている。ホテルに着いてすぐ部屋を案内してもらったとき、ちょっとだけ覗かせてもらっていた。
「だめもとでホテルに打診したら、いいですよって言うから」
「大胆だよね。できて間もないホテルのスイートルームの内装をぶち壊しちゃう度胸は見習いたいよ」
「金払ってんのに。悪いかよ?」
「そうじゃないけど。当時、このお部屋のデザインをした人や施工した人たちが知ったら、きっと涙目だよ。相当、苦労して完成させたのにってね」
「そんなの、知るかよ」
リクの話によると、仕事部屋のみ内装を変え、家具も入れ替えたそうだ。
最初に見たとき、仕事部屋だけ雰囲気が違うなと思った。モダンな書棚やデスクが置かれていたのは、そういうことだったのだ。
ハイスペックのPCが整然と並べられた仕事部屋は、部屋全体が綿密に計算されて、足りないものはもちろん、無駄なものもひとつもない。
おそらく自然光の入り込む角度や空調設備の位置もリクの頭になかにはしっかりと入っている。部屋の空気の流れも読んでいると思わせるレイアウトだった。
全体的な印象は、無機質で少しだけ冷たい。グレーや白、黒といった色ばかりのせいか、ぬくもりは一切感じられなかった。
でもリクらしい。仕事をしているリクはそんな感じだから。
仕事のときは恐ろしい鬼となる。ほんの少しの気の緩みで莫大な損失を被る可能性もあるのだから、それは当然のことだ。
自分のことではないのに、すごく心配になる。リクのことだから、もちろん費用についてはちゃんと計算しているのだろうけれど。
リクは大学卒業後すぐに会社を興し、早四年。今の地位を築いた。
事業内容はよく知らない。たまに手伝ってくれる仕事のパートナーはいるらしいけれど、会ったこともないし、どんな人なのかすら知らなくて謎だらけ。あまりずけずけと踏み込むのも悪いと思い、仕事のことを尋ねたことはほとんどなかった。
リクから聞かされているのはM&Aやサイト売買。あとほかにもあるらしいけど……。
「葉月はなにも心配することないって」
シャンパンからミネラルウオーターに切り替えたリクが、ペットボトルに口をつける。あれだけ動いたから喉が渇いていたらしい。勢いよく半分ほど飲んだ。
「必要経費でどれだけ落ちるんだろう?」
「税理士に相談してみる。まあ全額は無理だろうけど」
と言いつつ、ぜんぜん気にしていない様子。三割だろうが六割だろうが、リクにとってはどうでもいいことなのだ。
大金を動かしているわりには、自分の手もとに残る利益に執着がない。興味はそこじゃないのか、それとも……。
「有り余るお金ってことか」
次元が違い過ぎる。もはやわたしの頭も麻痺してきているようで、そんなものかなんて思っている始末。
「金は動かさないと自分にもまわってこないもんだよ。この部屋を借りることだって、仕事に有益だと思ったから借りたまでだから」
信用ということだろうか。
こことは別に都内にタワーマンションの一室も持っていて、それまではそこを仕事の拠点にしていた。
あの部屋もかなりグレードの高い部屋なのだけれど、それ以上にこのスイートルームは訪れた人を全員魅了させるはずだ。
部屋は四部屋。
とんでもなく広いリビングとベッドルームはプライベート用。そして豪華絢爛の応接室は仕事関係者との打ち合わせなどに使う。残りの部屋はリク専用の仕事部屋だ。
「もしかして、仕事部屋はわざわざ改装したの?」
リビングの隣が仕事部屋になっている。ホテルに着いてすぐ部屋を案内してもらったとき、ちょっとだけ覗かせてもらっていた。
「だめもとでホテルに打診したら、いいですよって言うから」
「大胆だよね。できて間もないホテルのスイートルームの内装をぶち壊しちゃう度胸は見習いたいよ」
「金払ってんのに。悪いかよ?」
「そうじゃないけど。当時、このお部屋のデザインをした人や施工した人たちが知ったら、きっと涙目だよ。相当、苦労して完成させたのにってね」
「そんなの、知るかよ」
リクの話によると、仕事部屋のみ内装を変え、家具も入れ替えたそうだ。
最初に見たとき、仕事部屋だけ雰囲気が違うなと思った。モダンな書棚やデスクが置かれていたのは、そういうことだったのだ。
ハイスペックのPCが整然と並べられた仕事部屋は、部屋全体が綿密に計算されて、足りないものはもちろん、無駄なものもひとつもない。
おそらく自然光の入り込む角度や空調設備の位置もリクの頭になかにはしっかりと入っている。部屋の空気の流れも読んでいると思わせるレイアウトだった。
全体的な印象は、無機質で少しだけ冷たい。グレーや白、黒といった色ばかりのせいか、ぬくもりは一切感じられなかった。
でもリクらしい。仕事をしているリクはそんな感じだから。
仕事のときは恐ろしい鬼となる。ほんの少しの気の緩みで莫大な損失を被る可能性もあるのだから、それは当然のことだ。
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