11 / 66
第4章 この恋、完全に終わりました
011
しおりを挟む
今日は月曜日。土日は家でゆっくり過ごして体を休めたはずなのに、朝からだるくて調子が悪い。微熱もある。
念のため今日は会社を休んだ。無理して出勤しても今日は仕事にならないような気がした。
「吐きそう……」
だるさも微熱もこの吐き気も妊娠の初期症状なのかな。おまけに一希と奥田さんの仲睦まじい光景が頭から離れなくて、こういうのも身重の体にはよくないんだろうなと不安が大きくなる。
だから余計に怖かった。自分の体なのに自分だけのものじゃないことが。
これまでだったら放っておいてもじきに治るだろうと軽く考えられたのに今はそうはいかない。わたしがあれこれ考えている間もお腹の子が成長していて、わたしの食べたものや精神的なことの影響を受けているんだと思ったら、いてもたってもいられなくなった。
「よし!」
先延ばしにしたって何も変わらない。わたしはようやく産婦人科に行く決意をした。
*
病院帰りに訪れたのは最寄り駅からさほど遠くない場所にあるカフェ。ヴィンテージ感のあるブラウンのテーブルとチェアがとてもおしゃれで落ち着いた雰囲気だ。
わたしは大学時代からの友人であるりっちゃんこと、小出律子ちゃんとこのカフェに来ていた。
ふたりでアイスココアを頼み、りっちゃんにすべてを打ち明けた。
「赤ちゃんができたことを今すぐ言うべきだよ」
「そうだよね。わかってるんだけど……」
「何を遠慮しているの? 男にだって責任があるんだから、これからどうするかふたりで話し合うべきだよ」
ごもっともですと心の中でつぶやいて縮こまった。この状況を相談すれば誰だってそう答えるだろう。
りっちゃんは妊娠6か月。
今日、産婦人科の待合室で偶然に会った。
そもそもその産婦人科にりっちゃんが通っていることを知った上でその病院を選んだので、この偶然は想定内。いずれいろいろと相談しようと思っていた。
というのは、りっちゃんもかつて今のわたしと似た境遇だったからだ。
りっちゃんは都内の会社に勤めていて、妊娠がわかったとき未婚だった。今は結婚し、幸せな家庭を築いている。
「りっちゃんの旦那さんは当時どういう反応だった?」
「妊娠したって話したとき?」
「うん」
「びっくりはしてたけど喜んでくれたよ。ぼちぼち結婚の話もしていた頃だったし、旦那も子どもが好きだから」
「結婚の話題が出てたのか。わたしと一希の間にはそういうのはなかったからなあ」
結婚どころか、会うのもままならなかった。それに一希は結婚願望も強そうには思えない。わたしという彼女の存在があろうがなかろうが女の子に人気があるし、本人もそういうのを自覚しているから、結婚はしばらく先のことと思っているような気がする。
「一希さんなら大丈夫だよ。つぐみと赤ちゃん、ふたりとも受け入れてくれるって」
「ふたりともか……。子どものことは考えてくれると思うんだけど、わたしのことはどうかな?」
「でも産むって決めたんでしょう?」
産婦人科で妊娠7週目と言われた。エコー写真ももらい、改めてお腹の子を実感しているところ。
正直、びっくりした。もうあんなにはっきりと存在が確認できるくらいに成長している。
この子はちゃんとここにいる。生命として宿っているんだ。だからもう迷ってはいられない。
「うん、決めたよ。わたし産む!」
妊娠検査薬で陽性判定が出た日は、自分がどうしたいのかわからなくてパニックに陥っていたのに、今ではわたしの意志はかたまっていた。
「なら今日にでも話し合いなよ」
「そうだね。連絡してみる」
今一番に考えなきゃならないのはお腹の子のこと。一希の答えがどんなものであってもわたしの気持ちは変わらない。
わたしは産みたい。産んで、この子の成長をそばで見ていきたい。
念のため今日は会社を休んだ。無理して出勤しても今日は仕事にならないような気がした。
「吐きそう……」
だるさも微熱もこの吐き気も妊娠の初期症状なのかな。おまけに一希と奥田さんの仲睦まじい光景が頭から離れなくて、こういうのも身重の体にはよくないんだろうなと不安が大きくなる。
だから余計に怖かった。自分の体なのに自分だけのものじゃないことが。
これまでだったら放っておいてもじきに治るだろうと軽く考えられたのに今はそうはいかない。わたしがあれこれ考えている間もお腹の子が成長していて、わたしの食べたものや精神的なことの影響を受けているんだと思ったら、いてもたってもいられなくなった。
「よし!」
先延ばしにしたって何も変わらない。わたしはようやく産婦人科に行く決意をした。
*
病院帰りに訪れたのは最寄り駅からさほど遠くない場所にあるカフェ。ヴィンテージ感のあるブラウンのテーブルとチェアがとてもおしゃれで落ち着いた雰囲気だ。
わたしは大学時代からの友人であるりっちゃんこと、小出律子ちゃんとこのカフェに来ていた。
ふたりでアイスココアを頼み、りっちゃんにすべてを打ち明けた。
「赤ちゃんができたことを今すぐ言うべきだよ」
「そうだよね。わかってるんだけど……」
「何を遠慮しているの? 男にだって責任があるんだから、これからどうするかふたりで話し合うべきだよ」
ごもっともですと心の中でつぶやいて縮こまった。この状況を相談すれば誰だってそう答えるだろう。
りっちゃんは妊娠6か月。
今日、産婦人科の待合室で偶然に会った。
そもそもその産婦人科にりっちゃんが通っていることを知った上でその病院を選んだので、この偶然は想定内。いずれいろいろと相談しようと思っていた。
というのは、りっちゃんもかつて今のわたしと似た境遇だったからだ。
りっちゃんは都内の会社に勤めていて、妊娠がわかったとき未婚だった。今は結婚し、幸せな家庭を築いている。
「りっちゃんの旦那さんは当時どういう反応だった?」
「妊娠したって話したとき?」
「うん」
「びっくりはしてたけど喜んでくれたよ。ぼちぼち結婚の話もしていた頃だったし、旦那も子どもが好きだから」
「結婚の話題が出てたのか。わたしと一希の間にはそういうのはなかったからなあ」
結婚どころか、会うのもままならなかった。それに一希は結婚願望も強そうには思えない。わたしという彼女の存在があろうがなかろうが女の子に人気があるし、本人もそういうのを自覚しているから、結婚はしばらく先のことと思っているような気がする。
「一希さんなら大丈夫だよ。つぐみと赤ちゃん、ふたりとも受け入れてくれるって」
「ふたりともか……。子どものことは考えてくれると思うんだけど、わたしのことはどうかな?」
「でも産むって決めたんでしょう?」
産婦人科で妊娠7週目と言われた。エコー写真ももらい、改めてお腹の子を実感しているところ。
正直、びっくりした。もうあんなにはっきりと存在が確認できるくらいに成長している。
この子はちゃんとここにいる。生命として宿っているんだ。だからもう迷ってはいられない。
「うん、決めたよ。わたし産む!」
妊娠検査薬で陽性判定が出た日は、自分がどうしたいのかわからなくてパニックに陥っていたのに、今ではわたしの意志はかたまっていた。
「なら今日にでも話し合いなよ」
「そうだね。連絡してみる」
今一番に考えなきゃならないのはお腹の子のこと。一希の答えがどんなものであってもわたしの気持ちは変わらない。
わたしは産みたい。産んで、この子の成長をそばで見ていきたい。
10
あなたにおすすめの小説
ベンチャーCEOの想い溢れる初恋婚 溺れるほどの一途なキスを君に
犬上義彦
恋愛
『御更木蒼也(みさらぎそうや)』
三十歳:身長百八十五センチ
御更木グループの御曹司
創薬ベンチャー「ミサラギメディカル」CEO(最高経営責任者)
祖母がスイス人のクオーター
祖父:御更木幸之助:御更木グループの統括者九十歳
『赤倉悠輝(あかくらゆうき)』
三十歳:身長百七十五センチ。
料理動画「即興バズレシピ」の配信者
御更木蒼也の幼なじみで何かと頼りになる良き相棒だが……
『咲山翠(さきやまみどり)』
二十七歳:身長百六十センチ。
蒼也の許嫁
父:咲山優一郎:国立理化学大学薬学部教授
『須垣陸(すがきりく)』
三十四歳:百億円の資金を動かすネット投資家
**************************
幼稚園教諭の咲山翠は
御更木グループの御曹司と
幼い頃に知り合い、
彼の祖父に気に入られて許嫁となる
だが、大人になった彼は
ベンチャー企業の経営で忙しく
すれ違いが続いていた
ある日、蒼也が迎えに来て、
余命宣告された祖父のために
すぐに偽装結婚をしてくれと頼まれる
お世話になったおじいさまのためにと了承して
形式的に夫婦になっただけなのに
なぜか蒼也の愛は深く甘くなる一方で
ところが、蒼也の会社が株取引のトラブルに巻き込まれ、
絶体絶命のピンチに
みたいなお話しです
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛
春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した茉莉は、雨の夜に思わず人生の終わりを願ってしまう。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
解けない魔法を このキスで
葉月 まい
恋愛
『さめない夢が叶う場所』
そこで出逢った二人は、
お互いを認識しないまま
同じ場所で再会する。
『自分の作ったドレスで女の子達をプリンセスに』
その想いでドレスを作る『ソルシエール』(魔法使い)
そんな彼女に、彼がかける魔法とは?
═•-⊰❉⊱•登場人物 •⊰❉⊱•-═
白石 美蘭 Miran Shiraishi(27歳)…ドレスブランド『ソルシエール』代表
新海 高良 Takara Shinkai(32歳)…リゾートホテル運営会社『新海ホテル&リゾート』 副社長
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる