未来はハッピーウェディング?

さとう涼

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第9章 わたしの隣にいてください

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「産休はいつから?」

「11月初旬からです。余っている有給休暇を使って少し早めに入らせてもらおうかと。育休は子どもが1歳になるまで取らせていただく予定です」

 以前はお金のために仕事を続けなきゃという思いだった。でも今は少し違う。広報課にずっといられるとは限らないけれど、この仕事を究めてみたくなった。
 現在、企画書作成などを水嶋課長をはじめ、広報課のひとたちに教わっているところ。アシスタントからレベルアップできるよう、もっとたくさん勉強をしてみんなと肩を並べて仕事ができるようになれたらいいな。
 もし部署が異動になっても、その場所で全力を尽くしていこうと思う。どんな形であれ、この会社に携わっていきたいと思うようになった。

 それに仕事を続けることを一希がすごく喜んでくれた。どうやら、それが一希の希望だったみたいで……。
 せっかくうちの会社に入社して広報課に配属されたのだから仕事を続けるべきだと言ってくれた。なんでもわたしのように新入社員の段階でいきなり広報課に配属されるのはかなりのレアケースらしい。うちの会社の場合、別の部署で数年間働いてから広報課に異動になるのが通例ということだった。

「まだ少し先のことだが、休んでいる間は寂しくなるな」

「深見課長にそう言ってもらえるなんて光栄です」

 他の女子社員が知ったらさぞかしびっくりするだろう。冷淡で「仕事の鬼」と言われている深見課長にそんなことを言ってもらえる女子社員は今のところわたしぐらいだと思う。

「今、戻りました」

 そのとき背後から聞こえてきた声に胸が弾む。
 この瞬間、ほっとする。今回も無事に帰ってきてくれたって。

 一希は4日前から四国に出張していた。今日戻る予定ではあったけれど帰宅は遅くなると昨日の夜に電話で話していたので、会社で会えるとは思っていなかった。

「お疲れ様」

 深見課長がいつものように部下を労《ねぎら》う。

「一希! 早かったね」

「つぐみ、こんなところで何さぼってんだよ?」

 キャリーバッグを片手に、一希はちょっとだけ不機嫌そうに言う。
 もしかしてわたしが深見課長と話していたことが気に入らないのかな。一希は意外にやきもち焼きだから。

「さぼってないよ。受付から預かってきた書類を渡してたんだよ。あと披露宴の件で挨拶をと思って」

「そうだぞ、本間。人妻には手を出さないから安心しろ」

「ふ、深見課長!! 別に俺はそんなんじゃなくてですね……」

「おまえ、けっこうわかりやすいよな。さっきも俺らを見るなり、イノシシみたいに突進してきたしな。そんなに心配か?」

 すごい光景だ。ひとをあしらうのが人一倍上手な一希が突っ込まれている。しかもその相手がクール上司の深見課長ときた。

「べっ、別にそういうわけじゃないですよ!」

「やっぱり図星じゃないか」

「あー、もう! そりゃあ心配にもなりますよ。いけませんか? だってつぐみを狙っている男、社内にけっこういたんですよ」

「だからってなあ、おまえの女房は妊婦だ。さすがに口説く男はいないだろう」

「そんなのわかんないじゃないですか。つぐみは性格がいいし、仕事もできるし、最近ますます可愛くなっちゃって。不安にもなるでしょう」

 一希……。やだ、もう見ていられない。人前でよくそこまで言えるよ。そりゃあうれいけど、そういうのはふたりきりのときに言ってってばっ!!

「本間、おまえの気持ちはもうわかったから。少し落ち着けって」

 いつの間にか同じフロアにいるひとたちの注目の的だった。わたしはどうしていいのかわからず立ち尽くし、一希は我に返りあわあわしている。

「なんか俺、久しぶりにつぐみに会って、興奮しちゃったのかな」

 ぼそりとつぶやかれた言葉に胸がきゅんとなった。

「一希……」

「ごめんな」

「ううん。恥ずかしいけどうれかったよ」

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