44 / 66
番外編(3) 心の奥にあるもの
009
しおりを挟む
いたって普通の恋愛のはずだ。
初めて彼女ができたのが中3で、相手は同じ塾に通っていた高校生。明るくて利発で綺麗な子だった。自分から告白したのも初めてだった。それまで数えるのが面倒なくらい多くの女子に告白されてきた本間だったが、誰ともつき合うことがなかった。そのため本間に彼女ができたことは学年中の話題になるほどだった。
その後も本間の恋愛スタンスは変わらない。気に入った女性を見つけると自分から声をかけ口説く。しかも自分に気があるような女性を直感的に嗅ぎ分けるのが人一倍秀でていたため、ものの5分でその女性は落ちるのだ。
「本間くんのことだから、百戦錬磨だったんでしょうけど」
「ひとりだけ落ちなかった子がいたよ」
「うわー、すごいねー。さすが本間くん」
「志乃ちゃん、棒読みなんだけど。一応ほめるなら、もっと感情を込めて言ってくれないかな」
「別にほめてないもの」
「相変わらず、思ったことをそのまま口にするよな」
本間はため息混じりに言うが、志乃は悪びれる様子はない。
志乃は今年24歳になる入社2年目の受付嬢。本間の2年後輩にあたるが、入社当時こそ本間に対して丁寧語を使っていたが、今ではすっかりタメ口でかなり気が強い性格。上から目線の発言もしばしばだ。
しかしそれは裏の顔で、あくまでもそれは本間の前だけである。
頭のいい志乃は世渡り上手。会社では本来の性格を隠し、おしとやかで上品な会社の顔である受付嬢を演じている。それだけでも男性社員に注目されるのに、かなりの美人ときたものだから男性社員の間で断トツの人気だ。
「本間くん、そろそろ落ち着いたら?」
「突然なんだよ? てか俺、まだ26なんだけど」
「年齢のことを言ってるんじゃないよ。もうさんざん遊んできたんだから満足でしょう?」
「言い方きつくない? 志乃ちゃん、俺のこと嫌いなの?」
満足とかそういうことじゃないと反論したいところだが、言ってもどうせわかってもらえないだろうと諦めた。
「そうじゃないよ。これでもわたしは本間くんを応援してるの。早くいいひとが出来るといいなって」
「いいひとねえ……。でも今のところ不自由はしてないからなあ」
「それじゃだめだと思う。わたしは本間くんのおかげで幸せをつかめたと思ってる。だから本間くんにもほんとの幸せ見つけてほしいの」
志乃がいつになく熱弁を振るう。
「心配してくれてありがと。だけど俺が間に入らなくても椎名とはきっとうまくいっていたよ」
椎名とは志乃の恋人。本間の大学時代の2年後輩。有名な商社に勤めており、その会社はR&Pフードサービスに輸入ワインなどの酒類を卸している。ある日、椎名がR&Pフードサービスを訪れ、その際に志乃は椎名と出会った。
そこで志乃がひとめぼれ。
しかし、しばらく進展はなかった。そこで2か月前、志乃が行動を起こす。
椎名から本間が大学時代の先輩だと聞いた志乃が本間に仲を取り持ってもらうよう頼み、3人で食事をした。それが交際のきっかけになった。
「でもわたしからアプローチしていたとき、椎名くん、ちょっと引いてた感じだったんだよね」
「そりゃあ志乃ちゃんみたいな美人に積極的にこられたらびっくりするよ。でも椎名もまんざらでもなかったと思うけどな」
「そうかな?」
おいおい美人の部分は否定しないのか、なんてことをチラリと思うのだが、本間は話を続ける。
「じゃなかったら、椎名は食事会の誘いを受けなかったと思うよ」
「大学の先輩に言われたから渋々だったのかも」
「俺に『そんなことないよ』って言ってほしいの?」
「わたしだって不安になったり、自信をなくしたりすることもあるんだよ」
「志乃ちゃんがそんなこと言うなんて珍しいな」
初めて彼女ができたのが中3で、相手は同じ塾に通っていた高校生。明るくて利発で綺麗な子だった。自分から告白したのも初めてだった。それまで数えるのが面倒なくらい多くの女子に告白されてきた本間だったが、誰ともつき合うことがなかった。そのため本間に彼女ができたことは学年中の話題になるほどだった。
その後も本間の恋愛スタンスは変わらない。気に入った女性を見つけると自分から声をかけ口説く。しかも自分に気があるような女性を直感的に嗅ぎ分けるのが人一倍秀でていたため、ものの5分でその女性は落ちるのだ。
「本間くんのことだから、百戦錬磨だったんでしょうけど」
「ひとりだけ落ちなかった子がいたよ」
「うわー、すごいねー。さすが本間くん」
「志乃ちゃん、棒読みなんだけど。一応ほめるなら、もっと感情を込めて言ってくれないかな」
「別にほめてないもの」
「相変わらず、思ったことをそのまま口にするよな」
本間はため息混じりに言うが、志乃は悪びれる様子はない。
志乃は今年24歳になる入社2年目の受付嬢。本間の2年後輩にあたるが、入社当時こそ本間に対して丁寧語を使っていたが、今ではすっかりタメ口でかなり気が強い性格。上から目線の発言もしばしばだ。
しかしそれは裏の顔で、あくまでもそれは本間の前だけである。
頭のいい志乃は世渡り上手。会社では本来の性格を隠し、おしとやかで上品な会社の顔である受付嬢を演じている。それだけでも男性社員に注目されるのに、かなりの美人ときたものだから男性社員の間で断トツの人気だ。
「本間くん、そろそろ落ち着いたら?」
「突然なんだよ? てか俺、まだ26なんだけど」
「年齢のことを言ってるんじゃないよ。もうさんざん遊んできたんだから満足でしょう?」
「言い方きつくない? 志乃ちゃん、俺のこと嫌いなの?」
満足とかそういうことじゃないと反論したいところだが、言ってもどうせわかってもらえないだろうと諦めた。
「そうじゃないよ。これでもわたしは本間くんを応援してるの。早くいいひとが出来るといいなって」
「いいひとねえ……。でも今のところ不自由はしてないからなあ」
「それじゃだめだと思う。わたしは本間くんのおかげで幸せをつかめたと思ってる。だから本間くんにもほんとの幸せ見つけてほしいの」
志乃がいつになく熱弁を振るう。
「心配してくれてありがと。だけど俺が間に入らなくても椎名とはきっとうまくいっていたよ」
椎名とは志乃の恋人。本間の大学時代の2年後輩。有名な商社に勤めており、その会社はR&Pフードサービスに輸入ワインなどの酒類を卸している。ある日、椎名がR&Pフードサービスを訪れ、その際に志乃は椎名と出会った。
そこで志乃がひとめぼれ。
しかし、しばらく進展はなかった。そこで2か月前、志乃が行動を起こす。
椎名から本間が大学時代の先輩だと聞いた志乃が本間に仲を取り持ってもらうよう頼み、3人で食事をした。それが交際のきっかけになった。
「でもわたしからアプローチしていたとき、椎名くん、ちょっと引いてた感じだったんだよね」
「そりゃあ志乃ちゃんみたいな美人に積極的にこられたらびっくりするよ。でも椎名もまんざらでもなかったと思うけどな」
「そうかな?」
おいおい美人の部分は否定しないのか、なんてことをチラリと思うのだが、本間は話を続ける。
「じゃなかったら、椎名は食事会の誘いを受けなかったと思うよ」
「大学の先輩に言われたから渋々だったのかも」
「俺に『そんなことないよ』って言ってほしいの?」
「わたしだって不安になったり、自信をなくしたりすることもあるんだよ」
「志乃ちゃんがそんなこと言うなんて珍しいな」
10
あなたにおすすめの小説
ベンチャーCEOの想い溢れる初恋婚 溺れるほどの一途なキスを君に
犬上義彦
恋愛
『御更木蒼也(みさらぎそうや)』
三十歳:身長百八十五センチ
御更木グループの御曹司
創薬ベンチャー「ミサラギメディカル」CEO(最高経営責任者)
祖母がスイス人のクオーター
祖父:御更木幸之助:御更木グループの統括者九十歳
『赤倉悠輝(あかくらゆうき)』
三十歳:身長百七十五センチ。
料理動画「即興バズレシピ」の配信者
御更木蒼也の幼なじみで何かと頼りになる良き相棒だが……
『咲山翠(さきやまみどり)』
二十七歳:身長百六十センチ。
蒼也の許嫁
父:咲山優一郎:国立理化学大学薬学部教授
『須垣陸(すがきりく)』
三十四歳:百億円の資金を動かすネット投資家
**************************
幼稚園教諭の咲山翠は
御更木グループの御曹司と
幼い頃に知り合い、
彼の祖父に気に入られて許嫁となる
だが、大人になった彼は
ベンチャー企業の経営で忙しく
すれ違いが続いていた
ある日、蒼也が迎えに来て、
余命宣告された祖父のために
すぐに偽装結婚をしてくれと頼まれる
お世話になったおじいさまのためにと了承して
形式的に夫婦になっただけなのに
なぜか蒼也の愛は深く甘くなる一方で
ところが、蒼也の会社が株取引のトラブルに巻き込まれ、
絶体絶命のピンチに
みたいなお話しです
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛
春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した茉莉は、雨の夜に思わず人生の終わりを願ってしまう。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
解けない魔法を このキスで
葉月 まい
恋愛
『さめない夢が叶う場所』
そこで出逢った二人は、
お互いを認識しないまま
同じ場所で再会する。
『自分の作ったドレスで女の子達をプリンセスに』
その想いでドレスを作る『ソルシエール』(魔法使い)
そんな彼女に、彼がかける魔法とは?
═•-⊰❉⊱•登場人物 •⊰❉⊱•-═
白石 美蘭 Miran Shiraishi(27歳)…ドレスブランド『ソルシエール』代表
新海 高良 Takara Shinkai(32歳)…リゾートホテル運営会社『新海ホテル&リゾート』 副社長
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる