未来はハッピーウェディング?

さとう涼

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番外編(6) 不安の中で

023

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「そういえば、うちの水嶋課長が愚痴ってたな」

「愚痴?」

「宮原さんに対してじゃないよ。深見課長にだよ」

「うちの部署、なんかしたか?」

「なんでも深見課長が宮原さんを店舗開発課にほしいって言ってきたらしくてさ。あっ、でも水嶋課長は即効断ったって言ってたけど」

「なるほどねえ」

 水嶋課長の気持ちはよくわかる。大事に育てた部下を横取りされるのは困るだろう。

「深見課長も本気で言ったわけじゃないんだろうけど」

 飯島はそう言うが……。

「そうか? 深見課長は仕事に関しては中途半端なことを言わないひとだよ」

 半年ほど前に店舗開発課にいたアシスタントの女性社員が寿退職した。要領よく仕事をこなすなかなか優秀な子で、彼女が会社を辞めてしまったことはうちの部署にとってかなりの痛手で文字通り全員が頭を抱えた。
 そのため、すぐに新しいアシスタントスタッフが配属されるものだと思っていた。しかし一向に誰もきてくれない。

 深見課長は人事部に相談していたみたいだが、人事部が動いてくれないのか、それとも適当な人材がいないのか……。
 おそらく後者なんだろう。深見課長は妥協を許さないひとだ。アシスタント的な役割といっても有益な人間しか採用しないはずだから、慎重に人選をしているんだと思う。

 そんななかで、つぐみが候補に挙がっていたわけだ。あの深見課長が冗談でよその部署の責任者に、おたくのスタッフがほしいなんて言うはずがない。だめ元ではあったと思うが、水嶋課長への打診はおそらく本気だったに違いない。

「宮原さんは来月から3年目だもんなあ。水嶋課長にとってはようやくって感じなんだろうし。そりゃあ手放すはずないよな」

「だろうな。これから少しずつステップアップさせていくつもりなんだろうな」

 ということは、結婚のタイミングはなおさら今じゃないような気がする。もう少し先がいいんだろうな。少なくとも2年かそこら……。それぐらいなら俺にとってもつぐみにとっても年齢的に問題ない。だけどなあ……。それを俺自身が納得しているかと言えばそういうわけでもない。
 長いよなあ、2年というのは。
 つぐみの将来を考えているつもりなのに、考えれば考えるほど昇華できない鬱憤うっぷんが溜まっていって、ため息が出る。

「何、暗い顔してんだよ?」

「別に」

「なんか本間らしくないなあ。早めに仲直りしとけよ」

「さっきと言ってることが逆なんだけど」

「言っとくけど本間のためじゃないからな。本間が自己嫌悪に陥って仕事でミスしようが、落ち込んで不眠症になろうが、俺にとってはどうでもいいんだよ。あくまでも宮原さんのためだよ」

「ひどい言われようだな、俺」

 逆にどれだけつぐみのことを想っているのかがわかる。
 悔しいけど、飯島はいい男だ。

「そりゃそうだよ、原因は本間にあるんだから。どうせいつも仕事を理由に寂しい思いをさせてるんだろう?」

「しょうがないだろう。会いたいって言われても仕事が忙しいのは事実だし、不満をぶつけられてもこればっかりはどうにもなんないんだから。飯島ならわかるだろう?」

「仕事って……。あのなあ……」

「なんだよ?」

「……いや、いい。とにかく、宮原さんの辛そうな顔を見ていられないんだよ。最近特にそういう顔してること多いし」

 心当たりがありすぎて何も言えない。最近のつぐみは情緒不安定なことが多くて、ケンカを翌日まで持ち越したこともあった。何に怒っているのかよくわからないときもあるくらいだし、これまでの不満がだいぶ溜まっているんだろう。

「おまえ、宮原さんが怒る理由をちゃんと考えたことないだろう?」

「それは女の子絡みだったり、仕事が忙しくてデートをドタキャンしたりしたからだろう? ──って、違うのか?」 

「自分で考えろよ。俺はそこまでお人好しじゃないし、本間の味方でもない」

 なんだよ、それ。親友だと思っているのは俺だけなのか?
 それにしても、つぐみが怒っている本当の理由とはいったいなんなのだろう。俺は何を間違えているんだろうか。

 たとえばさっきのこと。あれは俺が秘書課の美咲に食事に誘われていたのが気に入らなかったんじゃないのか? だからあんな強気で言い返してきたんだと思ったんだが……。

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