31 / 62
6.慣れない恋人関係
031
しおりを挟む
店に戻ると、塔子さんに冴島さんからジュエリーショップの生け込みの仕事を紹介してもらったことを伝えた。
塔子さんはブランド名を聞いて大興奮。なんでも有名なブランドらしく、そういうのに疎いわたしは塔子さんから教えてもらい、ようやく自分が思っていた以上に大きな仕事なのだと認識できた。
「失敗したらどうしよう。わたし、うまくできるかな?」
「いつものようにやればいいのよ」
「そうだよね。一生懸命がんばるしかないよね」
「だけど、がんばりました、努力しましただけじゃだめなのよ。先方がどんなものを求めているのかをしっかり把握して期待に応えなさい」
「それ、お父さんがよく言ってたセリフじゃない」
「あら、そうだった?」
塔子さんがおどけるように言った。
仕事をしているときの父はストイックだった。普段は穏やかでやさしい人なのに、花に向き合っているときはまるで人が変わる。
わたしが高校生のとき、店内のディスプレイのアレンジメントをやらせてもらったことがあったのだけれど。何度もだめ出しされて、やり直しをさせられた。
──「自分が作りたいものを上手に作ればいいってもんじゃないんだ」
結局、わたしの作ったものは採用されず、飾られることもなかった。
つくづく思う。あの頃のわたしはなにもわかっていなかったのだなあと。
自己満足だけでは商売は成り立たない。つまり、自分本位のきれいや可愛いだけじゃだめなんだって。お客様が喜んでくださるもの、満足してもらえるものを作ることが大事なのだと思う。
「大丈夫、咲都はいいものを作ることができるわよ。なんてたってお父さんの血を受け継いでいるんだから」
なんだかんだ言っても、塔子さんに励まされると元気が出てくる。わたしを紹介してくださった冴島さんにも迷惑がかからないよう、しっかり務め上げなければ。
先方から電話がかかってきたのはその日の夕方だった。さっそく冴島さんが連絡を入れてくれたのだ。彼に感謝しながら、簡単なコンセプトの説明と打ち合わせ日程を決めて、その日は電話を終えた。
「どうだった?」
塔子さんが電話の内容を気にして尋ねてきた。
「あさって、打ち合わせに伺うことになったの」
レセプションは九日後。来週木曜日の夕方から。思ったよりも急なスケジュールだけれど問題はない。
塔子さんに電話の内容を簡単に説明すると、「店の心配はいらないからね」と言ってくれて心強く思った。
なんだかワクワクしてくる。さっきまでの不安が嘘のように吹き飛び、期待に胸がふくらんだ。
塔子さんはブランド名を聞いて大興奮。なんでも有名なブランドらしく、そういうのに疎いわたしは塔子さんから教えてもらい、ようやく自分が思っていた以上に大きな仕事なのだと認識できた。
「失敗したらどうしよう。わたし、うまくできるかな?」
「いつものようにやればいいのよ」
「そうだよね。一生懸命がんばるしかないよね」
「だけど、がんばりました、努力しましただけじゃだめなのよ。先方がどんなものを求めているのかをしっかり把握して期待に応えなさい」
「それ、お父さんがよく言ってたセリフじゃない」
「あら、そうだった?」
塔子さんがおどけるように言った。
仕事をしているときの父はストイックだった。普段は穏やかでやさしい人なのに、花に向き合っているときはまるで人が変わる。
わたしが高校生のとき、店内のディスプレイのアレンジメントをやらせてもらったことがあったのだけれど。何度もだめ出しされて、やり直しをさせられた。
──「自分が作りたいものを上手に作ればいいってもんじゃないんだ」
結局、わたしの作ったものは採用されず、飾られることもなかった。
つくづく思う。あの頃のわたしはなにもわかっていなかったのだなあと。
自己満足だけでは商売は成り立たない。つまり、自分本位のきれいや可愛いだけじゃだめなんだって。お客様が喜んでくださるもの、満足してもらえるものを作ることが大事なのだと思う。
「大丈夫、咲都はいいものを作ることができるわよ。なんてたってお父さんの血を受け継いでいるんだから」
なんだかんだ言っても、塔子さんに励まされると元気が出てくる。わたしを紹介してくださった冴島さんにも迷惑がかからないよう、しっかり務め上げなければ。
先方から電話がかかってきたのはその日の夕方だった。さっそく冴島さんが連絡を入れてくれたのだ。彼に感謝しながら、簡単なコンセプトの説明と打ち合わせ日程を決めて、その日は電話を終えた。
「どうだった?」
塔子さんが電話の内容を気にして尋ねてきた。
「あさって、打ち合わせに伺うことになったの」
レセプションは九日後。来週木曜日の夕方から。思ったよりも急なスケジュールだけれど問題はない。
塔子さんに電話の内容を簡単に説明すると、「店の心配はいらないからね」と言ってくれて心強く思った。
なんだかワクワクしてくる。さっきまでの不安が嘘のように吹き飛び、期待に胸がふくらんだ。
1
あなたにおすすめの小説
愛してやまないこの想いを
さとう涼
恋愛
ある日、恋人でない男性から結婚を申し込まれてしまった。
「覚悟して。断られても何度でもプロポーズするよ」
その日から、わたしの毎日は甘くとろけていく。
ライティングデザイン会社勤務の平凡なOLと建設会社勤務のやり手の設計課長のあまあまなストーリーです。
契約から始まる真実の愛
空見原 禄乃
恋愛
借金と父親の病気に追い詰められた佐藤美優の前に現れたのは、日本有数の投資会社の若き後継者・神崎一馬。彼が彼女に持ちかけたのは、驚くべき「契約結婚」の話だった。
「2年間、私の妻として振る舞ってほしい。報酬として、君の借金を全額返済する」
祖父の遺言で結婚しなければ莫大な遺産と経営権を失う一馬。美優にとっては父親を救う唯一の道。二人は冷静な契約関係として結婚生活をスタートさせる。
「不必要な接触はしない。感情的にならない。お互いのプライベートには干渉しない」
しかし、日々の生活の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていく。冷徹だと思っていた一馬の優しさに触れ、美優の心は揺れ始める。一方、一馬も誰にも見せなかった素顔を彼女の前でだけ見せるようになっていた。
そんな二人の前に立ちはだかるのは、一馬の元婚約者である園田麗子。彼女は二人の「契約結婚」の秘密を暴こうと企む。
2人が迎える結末とはーーーー。
FLORAL《番外編》『敏腕社長の結婚宣言』
さとう涼
恋愛
『FLORAL-敏腕社長が可愛がるのは路地裏の花屋の店主』の番外編です。
本編の続きとなり、いくつかのエピソードで構成されています。
咲都、冴島などのキャラそれぞれの視点で時系列に話が進んでいきます。
甘め&溺愛系のエピソードもご用意しました。糖度はあくまでも当社比です…。
☆『FLORAL-敏腕社長が可愛がるのは路地裏の花屋の店主』
第14回恋愛小説大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございました。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
けいこ
恋愛
密かに想いを寄せていたあなたとのとろけるような一夜の出来事。
好きになってはいけない人とわかっていたのに…
夢のような時間がくれたこの大切な命。
保育士の仕事を懸命に頑張りながら、可愛い我が子の子育てに、1人で奔走する毎日。
なのに突然、あなたは私の前に現れた。
忘れようとしても決して忘れることなんて出来なかった、そんな愛おしい人との偶然の再会。
私の運命は…
ここからまた大きく動き出す。
九条グループ御曹司 副社長
九条 慶都(くじょう けいと) 31歳
×
化粧品メーカー itidouの長女 保育士
一堂 彩葉(いちどう いろは) 25歳
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する
花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家
結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。
愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる