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序章 なんでも探偵団始動編
時に笑ってはいけない状況もある
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「あー死体見るのなんか久しぶりだな~、遺体の司法解剖なんてここ最近やってなかったから、失敗しないように気を付けよう…」
「いやいやなんで弁護士だけじゃなく、司法解剖もできるんですか!?設定おかしすぎでしょ!?」
「大丈夫、ちゃんと事前に鑑定処分許可状貰ってるから」
いつも通り俺は事あるごとに鑑太郎さんにツッコミをいれる。
そしていつものように鑑太郎さんは説明をする。
「司法解剖って、一応それを行う者の資格について詳細な規定はないから、法的には、専門知識を有しかつ捜査当局の嘱託を受けた者なら誰でも司法解剖が可能なんだよ、まあでも、医師免許は基本必須なんだけどな」
「やっぱりそうですよね…て!?鑑太郎さん医師免許も持ってるんですか!?」
「あれ?言ってなかったっけ?一旦法曹界から退いた後、医学部の大学に進学卒業して医師免許取ったけど」
「聞いてないです!一体どうやったら弁護士資格と医師免許取れるんですか!?超神童と呼ばれた河○玄○くらいにすごいですよ!」
衝撃の事実に驚きながらも俺は鑑太郎さんに問う、でも鑑太郎さんは聞いてなかったのかそのままスルーである。
「以外ですね、でもそれは警察からの絶大な信頼がないとできないですよね、一体どうやってこの案件を貰えたんですか?」
「それはまあ…ちょっとした縁だよ、うん、透、時には知らない方が幸せな時もあるのだよ」
「なんですかそれ!?知るの怖くなってきたじゃないですか!!」
「いいか!世の中はな、知らない方がいいことだってたくさんあるからな、だいだいそれで世界の秩序が保たれてるようなものだからな」
「あんた一体どのくらいの範囲まで知っちゃってるんですか!?」
そうこう言ってるうちに依頼の警察病院に着いた、院内に入るとそこに二人、警察官(いや刑事かな?)と思しき人と白衣を着た男性が立っていた。
「おっす、久しぶりだなとっつあん、少し老けたか?」
「初っ端から失礼ですよ鑑太郎さん、いくら知ってる人だからって、あととっつあんは銭〇警部に対してだけですよ」
そうこう言ってると、警察官と思われる人がこちらに近づいたかと思ったら突然鑑太郎さんの顔面にグーパンをくらわした。
「いってえ!お前そんなだから離婚されるんだよ!傷害で訴えるぞ!」
「うっせえ鑑太郎、あと俺はまだ老けてねえわ!年上に対して礼がなってないぞ」
「いつの時代だそんな時代遅れなクソ思想はよお!」
二人が揉めてると白衣を着た男性が「二人とも落ち着いて」と言って止めに入る。
俺も二人のケンカの止めに入る。
「いい加減にしてください、いい大人がみっともないですよ」
俺と白衣の男性で二人をなんとか宥め、依頼の本題に移る。
―5分後
「鑑太郎、とりあえずお前にはこの遺体の司法解剖をしてもらいたい、望月、布を」
「はい、では…」
白衣の男性こと望月さんが纏った白い布を取ると中年男性の遺体が台に置かれていた、死亡してからかなり時間が経っていたのか、肌が青白く生気を感じず、このご遺体には申し訳ないが、少し腐敗臭がして一瞬つい鼻をつまんでしまった。
「もしかして、そちらの方は遺体を拝見するのは初めてですか?」
「はい、遺体を見るのは今日で初めてです」
「最初その反応をしてしまうのは当たり前です、中にはその場で吐いてしまう方もいますので、お気になさらず」
そう言って望月さんは解剖の器具を用意し、一つ一つを丁寧に揃える。
一方の警察官こと前田さんはこの遺体の詳細の説明を始めた。
「名は市茂津須木、市茂は自宅で死亡してるのを発見された、死亡推定日は2ヵ月前の5月1日~15日の間と思われる」
「んで、そのときの遺体はどんなだったか?」
「遺体を観察したところ、市茂の遺体には股間以外外傷と呼べるものはなかった」
「股間以外?それはどういう―」
鑑太郎さんが前田さんに聞こうとするのを前田さんが遮り、説明を続けた。
「市茂の遺体には…ち〇こが削ぎ取られていたんだ」
「……ち〇こが?」
「ああ、ち〇こだ」
「そうか…ち〇こか」
「そう、ち〇こ」
「ち〇こ…」
「いやあんたらち〇こち〇こうるせえよ!ただ言いたいだけだろそれ!」
すると望月さんが俺の肩に手を置いて首を横に振っていた
「二人は…そういう人なんです…」
この人若干諦めてる感じのようだった。
そして、望月さんは鑑太郎さんのところに向かい話しかける。
「眞田さん、更衣室は室内を出て右側にあります、そこに解剖衣がありますので解剖お願い致します」
「おけおけ、わかったよ、まあでも一応解剖する前に遺体を一回り確認しとくか」
鑑太郎さんはそう言って遺体の観察から始める。
観察を終えた後、遺体を解剖室に移され、鑑太郎さんと望月さんは解剖衣に着替えて解剖室に入っていった。
―翌日
あのあと鑑太郎さんによると、股間を削ぎ取られた部分から見てどうやらノコギリで切断したとみて間違いないとのことだった、それを知った俺は想像しただけで自身の股間がゾッとする感じがした。
市茂さん、痛かっただろうな、でも、なぜち〇こを切断されたんだろう。
この件については事件を視野に入れて捜査をしているとのことだ、一方俺と鑑太郎さんは前田さんの運転するパトカーで警察署へ向かっている、一応言っておくが、別に俺たちは捕まってるわけではない。
「いいか鑑太郎、これから向かう霊安室に市茂津須木の遺族もいるから、失礼のないようにな」
「言われなくてもわかっとるわとっつあん」
警察署に着いた俺たちは市茂津須木の遺体が安置されている霊安室へと向かう。
霊安室の扉付近には遺族と思われる二人が椅子に腰かけていた。
「すみません、市茂津須木さんのご家族でしょうか?」
「あ…はい」
「私、警視庁捜査一課の前田と申します、市茂津須木さんについてお聞きしたいことがありますが…その前にまずは…こちらの霊安室にて確認をお願い致します」
「わかりました…」
家族を突如失ったからか、二人からは生気が感じられず、寝なかったのか二人共目元にクマができていた。
「では、お入りください」
今思ったけど、前田さん、鑑太郎さんの時は口悪かったのに遺族の前だと結構口調が丁寧なんだな。
霊安室に入ると、すぐ右側には仏壇のような装飾品が置いてあり、そして白い布で纏られた遺体が置かれていた。
「では、布をお取りしますので、お顔のご確認お願い致します」
「はい…」
前田さんが遺体の顔付近のみに纏った白い布を取ると、二人の遺族のうち母親と思われる人が泣き出してしまった。
一方の父親と思われる人は下を向いたまま無言だった。
それから10分くらいが経った後、無言だった男性が前田さんに聞いてくる。
「あの、刑事さんから聞いたのですが、その…股間が削がれたまま発見されたと聞きまして…しかもその部分が今も見つかってないと…」
「はい、ご存じのとおりです」
「そこも…確認してもいいでしょうか?」
「はい、構いません、では私が布をめくりますので……ぶふっ!」
前田さんが白い布を途中までめくった瞬間、突如前田さんが吹き出した。
まるで、何かに対して笑いを堪えるかのように。
「あの、何かありましたか刑事さん」
「いや、あのこれは違くて…いえ、なんでもありません」
そう言って白い布をめくるのを中断させ、鑑太郎さんのところへと向かう。
「おい鑑太郎、ちょっと俺の代わりに布をめくってくれないか?」(小声)
「おいおい、なんで俺だよ、てかなんで途中中断するんだよ」(小声)
「いいからやれ、マジで」(小声)
鑑太郎さんが前田さんの代わりに白い布を途中までめくった瞬間、鑑太郎さんまでも噴き出していた。
「ぶふっ!ええこれ、そりゃないって…」
鑑太郎さんまで噴き出してしまい、場が凍る。
遺族の視線が鑑太郎さんの方に向かれる。
すると、鑑太郎さんが俺の所に近づき、俺に耳打ちしてきた。
「なあ透、悪いがお前が股間部分の布取ってくれないか?」(小声)
「ええ、俺がですか?前田さんも鑑太郎さんもなんか変ですよ」(小声)
「いいからやれよ、お前もあれ見ればわかるから、な?」(小声)
鑑太郎さんにそう言われ、俺は「わかりました」と答える。
そして俺は遺体に近づき、股間部分の白い布をどかそうと白い布を捲る。
「え!?ぶふっ!」
俺が見たその光景に驚きと笑いを堪えることでいっぱいになった。
市茂津須木さんの股間にはまあまあ大き目のひまわりが咲いていた、まるで股間をひまわりでモザイク代わりに隠してるかのように。
な!?なんでこんな所にひまわりが!?これどう遺族に説明すればいいんだ!?いやこれマジでどうしよう…、いたずらとかじゃないよな?
予想外のあまり、俺はそのひまわりを凝視しながら体が凍り付くように動けなかった。
「おいおい、この空気で笑うとか失礼だぞ透、遺族に申し訳ないとか思わないのか」
あんたが言うな!お前もこれ見て笑っただろ!
「そうだぞ柳崎、ご遺体と遺族の方の前で笑うなんて不謹慎だぞ」
おい前田!その口二度と喋れなくしてやろうかクソ野郎!なに自分は棚に上げてんだごら!
「あのう…何か見せられないものとかがありましたでしょうか?」
まずい!遺族が俺たちを疑ってる!もういっその事これ見せるか…いやダメだ!あんなところにひまわりだなんて逆に笑うよりも不謹慎すぎる!てかこれ元々付いてたのかこれ!?
どうすればいいか困惑する中、突如ドアが開く。
ドアの方に視線を移すとそこには望月さんが立っていた。
「すいません、先日お伝えし忘れたことがありまして…あ!そちらの方は市茂津須木さんのご遺族の方ですか?」
「はい…そうですが」
父親と思われる遺族がそう答えると、望月さんは遺体の詳細について説明しながら股間部分の白い布を思いっ切り捲った。
「こちらの股間部分に付いてたひまわりについてですが…」
おいおいおいおい!!それ遺族に見せて大丈夫なの!?ひまわりだよ!?しかも股間にだよ!?
俺と鑑太郎さん、前田さんが凍り付く中、市茂津須木の両親が共に「ぶふっ!!」と噴き出した。
結局ご両親も笑うんかい。
一方の望月さんは淡々と股間に付いたひまわりの説明を続ける。
「発見された当時、この状態と同じように自宅にて倒れていました、死因は股間をそぎ落とされたことによる出血死です」
「あのう、どうしてその…息子の股間に…ひまわりが?」
遺族からの疑問に望月さんは答える。
「死亡後、犯人は市茂津須木さんの股間にひまわりの種を植えたと考えられます」
すると鑑太郎さんが望月さんに詰め寄って聞いてきた。
「ちょっと待て望月!俺が司法解剖した時は、股間にひまわりなんてなかったぞ!」
「あれは、解剖の妨げになりますので、一旦ひまわりのみを移動させました」
「いやせめて移動したままにしろよ!なんで元に戻す!?」
「一応発見当時のまま維持するのが規則ですので」
「じゃあ事前に俺にも説明しろよ!こんな大事なこと!」
「それは忘れてました、すいません」
鑑太郎さんへの問いに答えた後、望月さんは遺族の方へと視線を向ける。
「一応ご確認なのですが、このひまわりは撤去することも可能ですが、いかがいたしますか?」
望月さんがそう言うと、両親が少し考えた後、市茂津須木の父親が望月さんに言った。
「撤去お願いします、さすがにひまわりが股間にあるままですと、ぶふっ!葬式の時、参列者にとっては困ると思いますので…いろんな意味で、ぶふっ!!すいません、股間にひまわりがあるのは予想外でしたので」
その後俺たちは、簡単な手続きや遺体の管理についてなどを説明し終え、遺族が帰ると同時に俺と鑑太郎さんも事務所へと帰った。
「やっぱ股間にひまわり植えるなんて、犯人は変な趣味をお持ちのようだな」
「股間にひまわりはさすがにないですよね、笑い堪えるの必死でしたから」
「ご遺体の前で笑うのはタブーだから気をつけろよ」
「鑑太郎さんがそれ言う!?」
こうして俺たちは無事?依頼をこなした、めでたしめでたし、うん、たぶん…。
次回、”嘘をついて何が悪い!”だそうです。
「いやいやなんで弁護士だけじゃなく、司法解剖もできるんですか!?設定おかしすぎでしょ!?」
「大丈夫、ちゃんと事前に鑑定処分許可状貰ってるから」
いつも通り俺は事あるごとに鑑太郎さんにツッコミをいれる。
そしていつものように鑑太郎さんは説明をする。
「司法解剖って、一応それを行う者の資格について詳細な規定はないから、法的には、専門知識を有しかつ捜査当局の嘱託を受けた者なら誰でも司法解剖が可能なんだよ、まあでも、医師免許は基本必須なんだけどな」
「やっぱりそうですよね…て!?鑑太郎さん医師免許も持ってるんですか!?」
「あれ?言ってなかったっけ?一旦法曹界から退いた後、医学部の大学に進学卒業して医師免許取ったけど」
「聞いてないです!一体どうやったら弁護士資格と医師免許取れるんですか!?超神童と呼ばれた河○玄○くらいにすごいですよ!」
衝撃の事実に驚きながらも俺は鑑太郎さんに問う、でも鑑太郎さんは聞いてなかったのかそのままスルーである。
「以外ですね、でもそれは警察からの絶大な信頼がないとできないですよね、一体どうやってこの案件を貰えたんですか?」
「それはまあ…ちょっとした縁だよ、うん、透、時には知らない方が幸せな時もあるのだよ」
「なんですかそれ!?知るの怖くなってきたじゃないですか!!」
「いいか!世の中はな、知らない方がいいことだってたくさんあるからな、だいだいそれで世界の秩序が保たれてるようなものだからな」
「あんた一体どのくらいの範囲まで知っちゃってるんですか!?」
そうこう言ってるうちに依頼の警察病院に着いた、院内に入るとそこに二人、警察官(いや刑事かな?)と思しき人と白衣を着た男性が立っていた。
「おっす、久しぶりだなとっつあん、少し老けたか?」
「初っ端から失礼ですよ鑑太郎さん、いくら知ってる人だからって、あととっつあんは銭〇警部に対してだけですよ」
そうこう言ってると、警察官と思われる人がこちらに近づいたかと思ったら突然鑑太郎さんの顔面にグーパンをくらわした。
「いってえ!お前そんなだから離婚されるんだよ!傷害で訴えるぞ!」
「うっせえ鑑太郎、あと俺はまだ老けてねえわ!年上に対して礼がなってないぞ」
「いつの時代だそんな時代遅れなクソ思想はよお!」
二人が揉めてると白衣を着た男性が「二人とも落ち着いて」と言って止めに入る。
俺も二人のケンカの止めに入る。
「いい加減にしてください、いい大人がみっともないですよ」
俺と白衣の男性で二人をなんとか宥め、依頼の本題に移る。
―5分後
「鑑太郎、とりあえずお前にはこの遺体の司法解剖をしてもらいたい、望月、布を」
「はい、では…」
白衣の男性こと望月さんが纏った白い布を取ると中年男性の遺体が台に置かれていた、死亡してからかなり時間が経っていたのか、肌が青白く生気を感じず、このご遺体には申し訳ないが、少し腐敗臭がして一瞬つい鼻をつまんでしまった。
「もしかして、そちらの方は遺体を拝見するのは初めてですか?」
「はい、遺体を見るのは今日で初めてです」
「最初その反応をしてしまうのは当たり前です、中にはその場で吐いてしまう方もいますので、お気になさらず」
そう言って望月さんは解剖の器具を用意し、一つ一つを丁寧に揃える。
一方の警察官こと前田さんはこの遺体の詳細の説明を始めた。
「名は市茂津須木、市茂は自宅で死亡してるのを発見された、死亡推定日は2ヵ月前の5月1日~15日の間と思われる」
「んで、そのときの遺体はどんなだったか?」
「遺体を観察したところ、市茂の遺体には股間以外外傷と呼べるものはなかった」
「股間以外?それはどういう―」
鑑太郎さんが前田さんに聞こうとするのを前田さんが遮り、説明を続けた。
「市茂の遺体には…ち〇こが削ぎ取られていたんだ」
「……ち〇こが?」
「ああ、ち〇こだ」
「そうか…ち〇こか」
「そう、ち〇こ」
「ち〇こ…」
「いやあんたらち〇こち〇こうるせえよ!ただ言いたいだけだろそれ!」
すると望月さんが俺の肩に手を置いて首を横に振っていた
「二人は…そういう人なんです…」
この人若干諦めてる感じのようだった。
そして、望月さんは鑑太郎さんのところに向かい話しかける。
「眞田さん、更衣室は室内を出て右側にあります、そこに解剖衣がありますので解剖お願い致します」
「おけおけ、わかったよ、まあでも一応解剖する前に遺体を一回り確認しとくか」
鑑太郎さんはそう言って遺体の観察から始める。
観察を終えた後、遺体を解剖室に移され、鑑太郎さんと望月さんは解剖衣に着替えて解剖室に入っていった。
―翌日
あのあと鑑太郎さんによると、股間を削ぎ取られた部分から見てどうやらノコギリで切断したとみて間違いないとのことだった、それを知った俺は想像しただけで自身の股間がゾッとする感じがした。
市茂さん、痛かっただろうな、でも、なぜち〇こを切断されたんだろう。
この件については事件を視野に入れて捜査をしているとのことだ、一方俺と鑑太郎さんは前田さんの運転するパトカーで警察署へ向かっている、一応言っておくが、別に俺たちは捕まってるわけではない。
「いいか鑑太郎、これから向かう霊安室に市茂津須木の遺族もいるから、失礼のないようにな」
「言われなくてもわかっとるわとっつあん」
警察署に着いた俺たちは市茂津須木の遺体が安置されている霊安室へと向かう。
霊安室の扉付近には遺族と思われる二人が椅子に腰かけていた。
「すみません、市茂津須木さんのご家族でしょうか?」
「あ…はい」
「私、警視庁捜査一課の前田と申します、市茂津須木さんについてお聞きしたいことがありますが…その前にまずは…こちらの霊安室にて確認をお願い致します」
「わかりました…」
家族を突如失ったからか、二人からは生気が感じられず、寝なかったのか二人共目元にクマができていた。
「では、お入りください」
今思ったけど、前田さん、鑑太郎さんの時は口悪かったのに遺族の前だと結構口調が丁寧なんだな。
霊安室に入ると、すぐ右側には仏壇のような装飾品が置いてあり、そして白い布で纏られた遺体が置かれていた。
「では、布をお取りしますので、お顔のご確認お願い致します」
「はい…」
前田さんが遺体の顔付近のみに纏った白い布を取ると、二人の遺族のうち母親と思われる人が泣き出してしまった。
一方の父親と思われる人は下を向いたまま無言だった。
それから10分くらいが経った後、無言だった男性が前田さんに聞いてくる。
「あの、刑事さんから聞いたのですが、その…股間が削がれたまま発見されたと聞きまして…しかもその部分が今も見つかってないと…」
「はい、ご存じのとおりです」
「そこも…確認してもいいでしょうか?」
「はい、構いません、では私が布をめくりますので……ぶふっ!」
前田さんが白い布を途中までめくった瞬間、突如前田さんが吹き出した。
まるで、何かに対して笑いを堪えるかのように。
「あの、何かありましたか刑事さん」
「いや、あのこれは違くて…いえ、なんでもありません」
そう言って白い布をめくるのを中断させ、鑑太郎さんのところへと向かう。
「おい鑑太郎、ちょっと俺の代わりに布をめくってくれないか?」(小声)
「おいおい、なんで俺だよ、てかなんで途中中断するんだよ」(小声)
「いいからやれ、マジで」(小声)
鑑太郎さんが前田さんの代わりに白い布を途中までめくった瞬間、鑑太郎さんまでも噴き出していた。
「ぶふっ!ええこれ、そりゃないって…」
鑑太郎さんまで噴き出してしまい、場が凍る。
遺族の視線が鑑太郎さんの方に向かれる。
すると、鑑太郎さんが俺の所に近づき、俺に耳打ちしてきた。
「なあ透、悪いがお前が股間部分の布取ってくれないか?」(小声)
「ええ、俺がですか?前田さんも鑑太郎さんもなんか変ですよ」(小声)
「いいからやれよ、お前もあれ見ればわかるから、な?」(小声)
鑑太郎さんにそう言われ、俺は「わかりました」と答える。
そして俺は遺体に近づき、股間部分の白い布をどかそうと白い布を捲る。
「え!?ぶふっ!」
俺が見たその光景に驚きと笑いを堪えることでいっぱいになった。
市茂津須木さんの股間にはまあまあ大き目のひまわりが咲いていた、まるで股間をひまわりでモザイク代わりに隠してるかのように。
な!?なんでこんな所にひまわりが!?これどう遺族に説明すればいいんだ!?いやこれマジでどうしよう…、いたずらとかじゃないよな?
予想外のあまり、俺はそのひまわりを凝視しながら体が凍り付くように動けなかった。
「おいおい、この空気で笑うとか失礼だぞ透、遺族に申し訳ないとか思わないのか」
あんたが言うな!お前もこれ見て笑っただろ!
「そうだぞ柳崎、ご遺体と遺族の方の前で笑うなんて不謹慎だぞ」
おい前田!その口二度と喋れなくしてやろうかクソ野郎!なに自分は棚に上げてんだごら!
「あのう…何か見せられないものとかがありましたでしょうか?」
まずい!遺族が俺たちを疑ってる!もういっその事これ見せるか…いやダメだ!あんなところにひまわりだなんて逆に笑うよりも不謹慎すぎる!てかこれ元々付いてたのかこれ!?
どうすればいいか困惑する中、突如ドアが開く。
ドアの方に視線を移すとそこには望月さんが立っていた。
「すいません、先日お伝えし忘れたことがありまして…あ!そちらの方は市茂津須木さんのご遺族の方ですか?」
「はい…そうですが」
父親と思われる遺族がそう答えると、望月さんは遺体の詳細について説明しながら股間部分の白い布を思いっ切り捲った。
「こちらの股間部分に付いてたひまわりについてですが…」
おいおいおいおい!!それ遺族に見せて大丈夫なの!?ひまわりだよ!?しかも股間にだよ!?
俺と鑑太郎さん、前田さんが凍り付く中、市茂津須木の両親が共に「ぶふっ!!」と噴き出した。
結局ご両親も笑うんかい。
一方の望月さんは淡々と股間に付いたひまわりの説明を続ける。
「発見された当時、この状態と同じように自宅にて倒れていました、死因は股間をそぎ落とされたことによる出血死です」
「あのう、どうしてその…息子の股間に…ひまわりが?」
遺族からの疑問に望月さんは答える。
「死亡後、犯人は市茂津須木さんの股間にひまわりの種を植えたと考えられます」
すると鑑太郎さんが望月さんに詰め寄って聞いてきた。
「ちょっと待て望月!俺が司法解剖した時は、股間にひまわりなんてなかったぞ!」
「あれは、解剖の妨げになりますので、一旦ひまわりのみを移動させました」
「いやせめて移動したままにしろよ!なんで元に戻す!?」
「一応発見当時のまま維持するのが規則ですので」
「じゃあ事前に俺にも説明しろよ!こんな大事なこと!」
「それは忘れてました、すいません」
鑑太郎さんへの問いに答えた後、望月さんは遺族の方へと視線を向ける。
「一応ご確認なのですが、このひまわりは撤去することも可能ですが、いかがいたしますか?」
望月さんがそう言うと、両親が少し考えた後、市茂津須木の父親が望月さんに言った。
「撤去お願いします、さすがにひまわりが股間にあるままですと、ぶふっ!葬式の時、参列者にとっては困ると思いますので…いろんな意味で、ぶふっ!!すいません、股間にひまわりがあるのは予想外でしたので」
その後俺たちは、簡単な手続きや遺体の管理についてなどを説明し終え、遺族が帰ると同時に俺と鑑太郎さんも事務所へと帰った。
「やっぱ股間にひまわり植えるなんて、犯人は変な趣味をお持ちのようだな」
「股間にひまわりはさすがにないですよね、笑い堪えるの必死でしたから」
「ご遺体の前で笑うのはタブーだから気をつけろよ」
「鑑太郎さんがそれ言う!?」
こうして俺たちは無事?依頼をこなした、めでたしめでたし、うん、たぶん…。
次回、”嘘をついて何が悪い!”だそうです。
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