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大型ダンジョン いいえ、普通のお城ですよ
第12話
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声は扉の向こう側から聞こえてくるのだと気がついた。
早くここを立ち去ってやるべきことがあるのに、どうにも足がうまく動かない。動かせない。
扉の向こう側へ、行きたくてたまらない気持ちになる。
「……資格って、なに?」
湧き上がってくる感情を消し去りたくて、サクラは語気を強めて声の主に問いかけた。
『知りたければこちらへこい』
この声に耳を傾けてはいけない。
そう思う心は残っているのに、サクラはどうしても抗えなかった。
目の前の扉に、もういちど触れてみる。
すると、指先でほんの少し触れただけだというのに、扉が動き出した。重厚そうな扉が、音も立てずにひとりでに開いていく。
『知りたいことがあるのだろう?』
高すぎず低すぎず、ゆったりとした優しい声が耳に届く。
サクラが扉に触れたときの姿勢のまま立ち尽くしていると、あっという間に人がひとり通れる隙間ができた。
サクラは吸い込まれるように、扉の間にからだを滑りこませて部屋の中に足を踏み入れた。
サクラが完全に部屋の中に入ってしまうと、すぐに背後で扉の閉まる気配がした。閉じ込められたかもしれないと思ったが、不思議と焦りは感じない。
『ようこそ。ひさしぶりのお客さんだな』
声は部屋の中央から聞こえてくる。
サクラは部屋の中心にあるものを、じっとりと睨みつけた。
だが、そこには人の姿はない。
「顔を見せてはくれないの?」
『お前が信用するに足る者かもわからないのに、姿をあらわせるとでも思うのか』
「私はあなたを知ってる。この部屋の中に入って、はっきり思い出した」
部屋の中は、全体的に薄く水が張っている。扉の前から一歩先へ進むと、足首まで水に浸かってしまう。
サクラは靴が濡れることになんてかわまず、水音を立てながら部屋の中央へ進んだ。
部屋の中心部分には、サクラの腰の高さほどの小さな木が生えている。
ゲーム内でファストトラベルができる地点は、みな同じような作りになっていた。
きらきらと光り輝く小さな木。そのまわりを囲むように、水が浅く溜まっている。
ゲーム内では、この木に近づくと自動的に操作アイコンが表示された。この木はゲーム内でプレイヤーが死んだときのリスポーン地点にもなっているのだ。
そのため、ここではファストトラベル以外にも、さまざまなことができた。
主人公キャラクターが持ち運ぶアイテムを変えたり、装備品を変えたり、ダンジョン攻略中に貯めた経験値でステータスをあげることも可能だ。
しかし、いまは木に近づいたところで操作アイコンは表示されない。
その木に向かって、サクラは声をかけた。
「嘆きの王子、ベルヴェイク様」
サクラが名前を呼んだ途端、小さな木の中からぬうっと影が飛び出してきた。
淡く光り輝く白い影は、すぐさま人の形になる。
『……声だけで私がわかるとはな。やはり貴様はプレイヤーなのか?』
あらわれた影が長身の男の姿になり、水の張った床に足をついた。
バシャンと大きな水音がする。
その音も、男から発せられる声も、今となってはもう不快としか感じられなかった。
早くここを立ち去ってやるべきことがあるのに、どうにも足がうまく動かない。動かせない。
扉の向こう側へ、行きたくてたまらない気持ちになる。
「……資格って、なに?」
湧き上がってくる感情を消し去りたくて、サクラは語気を強めて声の主に問いかけた。
『知りたければこちらへこい』
この声に耳を傾けてはいけない。
そう思う心は残っているのに、サクラはどうしても抗えなかった。
目の前の扉に、もういちど触れてみる。
すると、指先でほんの少し触れただけだというのに、扉が動き出した。重厚そうな扉が、音も立てずにひとりでに開いていく。
『知りたいことがあるのだろう?』
高すぎず低すぎず、ゆったりとした優しい声が耳に届く。
サクラが扉に触れたときの姿勢のまま立ち尽くしていると、あっという間に人がひとり通れる隙間ができた。
サクラは吸い込まれるように、扉の間にからだを滑りこませて部屋の中に足を踏み入れた。
サクラが完全に部屋の中に入ってしまうと、すぐに背後で扉の閉まる気配がした。閉じ込められたかもしれないと思ったが、不思議と焦りは感じない。
『ようこそ。ひさしぶりのお客さんだな』
声は部屋の中央から聞こえてくる。
サクラは部屋の中心にあるものを、じっとりと睨みつけた。
だが、そこには人の姿はない。
「顔を見せてはくれないの?」
『お前が信用するに足る者かもわからないのに、姿をあらわせるとでも思うのか』
「私はあなたを知ってる。この部屋の中に入って、はっきり思い出した」
部屋の中は、全体的に薄く水が張っている。扉の前から一歩先へ進むと、足首まで水に浸かってしまう。
サクラは靴が濡れることになんてかわまず、水音を立てながら部屋の中央へ進んだ。
部屋の中心部分には、サクラの腰の高さほどの小さな木が生えている。
ゲーム内でファストトラベルができる地点は、みな同じような作りになっていた。
きらきらと光り輝く小さな木。そのまわりを囲むように、水が浅く溜まっている。
ゲーム内では、この木に近づくと自動的に操作アイコンが表示された。この木はゲーム内でプレイヤーが死んだときのリスポーン地点にもなっているのだ。
そのため、ここではファストトラベル以外にも、さまざまなことができた。
主人公キャラクターが持ち運ぶアイテムを変えたり、装備品を変えたり、ダンジョン攻略中に貯めた経験値でステータスをあげることも可能だ。
しかし、いまは木に近づいたところで操作アイコンは表示されない。
その木に向かって、サクラは声をかけた。
「嘆きの王子、ベルヴェイク様」
サクラが名前を呼んだ途端、小さな木の中からぬうっと影が飛び出してきた。
淡く光り輝く白い影は、すぐさま人の形になる。
『……声だけで私がわかるとはな。やはり貴様はプレイヤーなのか?』
あらわれた影が長身の男の姿になり、水の張った床に足をついた。
バシャンと大きな水音がする。
その音も、男から発せられる声も、今となってはもう不快としか感じられなかった。
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