姉の婚約者と結婚しました。

黒蜜きな粉

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番外編・8

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「まあ、旦那さま。何かご用でしょうか?」

 エラと玄関で別れ、ソフィアのあとを追いかけて彼女の部屋までやってきた。
 彼女はイーサンの姿を見るなりすぐに笑顔を浮かべたが、やはりどこか冷たい気がする。

「……用事があるわけではないが、夕食の準備ができるまで話がしたいと思ってな」

「あら、お話ですか。どんなお話をいたしましょうか?」

「…………な、何でもいいのだが……」

 エイナルからソフィアとの会話が少なすぎると言われた。
 イーサンとしては、すでに以前よりも多く話をするようになったと思っていたのだが、まったく足りないらしい。
 エイナル曰く、会話をしている時間ではなく内容が重要なのだそうだ。

 ――どうして何を話すべきかまでは教えてくれないのだ。とりあえず追いかけてきたものの、どう話題を振ればよいのかまったくわからないぞ。

「…………まあ、よろしいですわ。ルイース、お茶を淹れてちょうだいな」

「かしこまりました」

 侍女がお茶を淹れるために部屋を出て行った。
 彼女の視線が恐ろしかったので、イーサンはついほっとして肩の力を抜く。すると、それに気が付いたソフィアが首を傾げた。

「もしかして、ルイースが何か失礼をいたしましたか?」

「――っい、いや……! 失礼なことは何も……」

「そうですか? 今あきらかに安堵した顔をしておられましたわよ」

 ソフィアが不安げな顔をする。
 これはまずいと思った。正直に思っていることを伝えるべきかどうか悩む。

 ――魔術師が怖い言ってしまえば、ソフィアのことも恐れているのだと思われるよな? 今は彼女のことを恐れてなどいないが、どう話せばきちんと伝わるのだ……。

 イーサンが黙って考え込んでしまうと、ソフィアの表情がますます曇っていく。

「では、私が失礼をいたしましたか? もしかして、さきほどの玄関でのやり取りでしょうか……」

「ち、違う! あ、あれは、はっきりとしなかった私が悪いのだ。君は何も悪くない」

「では、何でございましょうか?」

 肩を落としてしょんぼりと落ち込むソフィアを前にして、イーサンの心が痛む。
 このまま黙っていることが駄目なことはわかるが、本音を伝えてもよいものかどうかわからない。 

「…………か、彼女が失礼をしているとかではない。私は……、私はただ………………」

「私は?」

 その後の言葉がすぐに出てこない。
 ソフィアは不安げな顔をしながらも、辛抱強く待ってくれている。
 イーサンは覚悟を決めた。何も話さないよりはマシだと信じることにした。

「こ、怖いのだ。…………ただ、恐ろしいと、思ってしまって……」

「恐ろしい? 何が恐ろしいのですか」

 ソフィアは訳が分からないという顔をする。

「…………ま、魔術師が怖いのだ」

 イーサンがやっとのことで本音を告げると、ソフィアは呆気にとられていた。
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