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82.おっさんとボンボン少年のおじいちゃん
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「孫が大変ご迷惑をおかけしてしまって申し訳ありませんでした。ほら、お前も謝りなさいっ」
「ごめんなさい……」
少年ことマルクの顔はどう見ても謝っている顔ではなかった。
小動物が威嚇しているときの顔だ。
「こらっ、ちゃんと謝りなさい!!」
「すみませんでした……」
お祖父さんに拳骨を落とされて、マルクはやっとちゃんと謝る。
この年ごろの子供なんてこんなものだ。
別におっさんは気にしていない。
ただ少しジト目を送っておく。
おっさんのジト目は気持ち悪かろう?
「そういえば、お孫さんからなにやら物騒な話を聞きました。勇者に脅されているとか?」
「いやはや、お恥ずかしい話です。お客様がご所望される商品のひとつも調達できないとは」
「いやいや、腐竜の心臓なんて取って来いと言われてはいどうぞと取ってこられるものではありませんよ。私には勇者のほうが無茶を言っているように思えます」
「それもそうなのですが、年寄りの見栄というやつですかね……」
マルクの祖父はそう言って遠い目をする。
なんだか長い話が始まりそうな予感がしたので俺は強制的に話を変える。
「しかしそのムルガ共和国の勇者は水を浄化するための魔道具を作ろうとしているようですが、いったい何をやろうとしているんです?」
「ええ、それがムルガ共和国の辺境の町に下水道施設を造ろうとしているようでして……」
下水道か。
異世界人が作りそうな施設だな。
そういえばキムリアナには下水道と下水浄化施設があった。
なるほど、あんな感じの施設を造るのに腐竜の心臓を欲しているというわけか。
しかし人に迷惑をかけてまで作ろうとしているのが下水道とは。
別に水を浄化する魔道具は腐竜の心臓を使った物だけではないのだから、もう少し自分で材料を調達できるものにすればいいのに。
たぶん腐竜の心臓とかなにそれかっこいいとかそんなくだらない理由なんだろうけど。
「このことは冒険者ギルドに相談しましたか?支部長補佐の梶原さんなら相談に乗ってくれると思うのですが」
「ええ、相談には乗っていただけました。しかし冒険者ギルドとしても実力の無い冒険者を無理に腐竜に挑ませるわけにはいかないですから。一応カジワラさん自身がもう一度腐竜に挑んでくれたようですが、結果は以前と同じだったようで」
梶原さんは一度負けた腐竜にもう一度挑んでくれたのか。
やっぱりあの人は良い人だ。
だけど結果は芳しくなかった。
もしかしたらバース君もそのために頑張って負傷してしまったのかもしれないな。
「その勇者って、梶原さんよりも強いんですか?」
「いえ、おそらく戦ったら十中八九カジワラさんが勝つでしょう」
「なら、その勇者を亡き者にするというのは?」
「ムルガ共和国が黙ってないでしょう。カジワラさんはギルドの役職持ちです。ドラゴニアだけでなく冒険者ギルドもまたムルガ共和国との間に禍根を作ってしまう。カジワラさんも動きたくても動けない辛い立場なのです」
勇者を殺すのも無しか。
俺が殺してもドラゴニアで勇者が死んだという事実は残る。
結局腐竜を倒して心臓を取ってくるのが一番誰も損をしない選択か。
そうなると、今のドラゴニアには腐竜を倒せる者がいないというのが一番の問題だ。
俺も一度腐竜に挑んでみるとしよう。
冒険者やマルクがそこまで信頼している梶原さんが勝てなかった腐竜に俺が勝てるかはわからないけど。
以前確認したとき、梶原さんの神器は神足の革靴、444マグナム、古の魔導書(水)、時精の腕時計、狂戦士の指輪、スマホの6つだった。
おそらくどこぞの勇者と一度争ったことがあるのだろう。
梶原さんが自分から他の勇者を攻撃して神器を奪うことなんて想像が付かないので、相手のほうから仕掛けてきたのを返り討ちにしたのだと思う。
神足の革靴の能力は脚力の超強化。
脚力だけなら神巻きタバコで増幅された俺の身体能力を上回る。
444マグナムは高威力の銃だ。
銃弾の速度は亜光速。
レールガンみたいな速度で銃弾を飛ばすリボルバー銃。
弾は1日100発まで補充可能らしい。
古の魔導書は、神のスマホと水精の短剣を持っていた拷問好きのサイコ勇者が持っていた火の魔導書の水版だ。
開くだけで水魔法の初級から上級までを使えるようになる神器。
時精の腕時計は10秒間の加速能力。
サイボーグ野郎の奥歯に設置されているような奴よりかは加速度は低く、2倍だ。
クールタイムが1時間あるので10秒後にまた発動すれば永遠に加速していられるようなことも無い。
狂戦士の指輪は身体能力や魔力を20倍くらいまで引き上げてくれる代わりに、思考能力が下がるという神器だ。
なんともリスキーな神器。
そしてスマホはスマホ。
以上が梶原さんの持っている神器だが、見た感じバランスが取れていてかなり強そうだ。
梶原さんはプロフィールを見てもこちらの世界に来てからの行動を見ても人格者なのは間違いなさそうだったので俺はあまり警戒していなかったのだが、その力だけならば十分に警戒するべき人物なのだ。
そんな梶原さんが勝てなかったという腐竜に少し興味が湧いた。
牛鬼と戦って分かったが、神器をもらった勇者だからといってこの世界で最強というわけではないようだ。
この世界の食物連鎖の頂点は人間ではなく、魔物。
人間の中でそこそこ強いからといって、魔物の中でもそうだとは限らないのだ。
俺が倒した牛鬼は魔物の中でもそこそこ強いほうだと思うけれど、もっと強い魔物がいる可能性もあるし牛鬼レベルの魔物が群れで行動している可能性もあるのだ。
そうなれば俺はライオンに狩られるトムソンガゼルのようなもの。
逃げきれなければあっという間に喉笛に噛みつかれておしまいだ。
せいぜい逃げ足でも鍛えておかなければな。
「ごめんなさい……」
少年ことマルクの顔はどう見ても謝っている顔ではなかった。
小動物が威嚇しているときの顔だ。
「こらっ、ちゃんと謝りなさい!!」
「すみませんでした……」
お祖父さんに拳骨を落とされて、マルクはやっとちゃんと謝る。
この年ごろの子供なんてこんなものだ。
別におっさんは気にしていない。
ただ少しジト目を送っておく。
おっさんのジト目は気持ち悪かろう?
「そういえば、お孫さんからなにやら物騒な話を聞きました。勇者に脅されているとか?」
「いやはや、お恥ずかしい話です。お客様がご所望される商品のひとつも調達できないとは」
「いやいや、腐竜の心臓なんて取って来いと言われてはいどうぞと取ってこられるものではありませんよ。私には勇者のほうが無茶を言っているように思えます」
「それもそうなのですが、年寄りの見栄というやつですかね……」
マルクの祖父はそう言って遠い目をする。
なんだか長い話が始まりそうな予感がしたので俺は強制的に話を変える。
「しかしそのムルガ共和国の勇者は水を浄化するための魔道具を作ろうとしているようですが、いったい何をやろうとしているんです?」
「ええ、それがムルガ共和国の辺境の町に下水道施設を造ろうとしているようでして……」
下水道か。
異世界人が作りそうな施設だな。
そういえばキムリアナには下水道と下水浄化施設があった。
なるほど、あんな感じの施設を造るのに腐竜の心臓を欲しているというわけか。
しかし人に迷惑をかけてまで作ろうとしているのが下水道とは。
別に水を浄化する魔道具は腐竜の心臓を使った物だけではないのだから、もう少し自分で材料を調達できるものにすればいいのに。
たぶん腐竜の心臓とかなにそれかっこいいとかそんなくだらない理由なんだろうけど。
「このことは冒険者ギルドに相談しましたか?支部長補佐の梶原さんなら相談に乗ってくれると思うのですが」
「ええ、相談には乗っていただけました。しかし冒険者ギルドとしても実力の無い冒険者を無理に腐竜に挑ませるわけにはいかないですから。一応カジワラさん自身がもう一度腐竜に挑んでくれたようですが、結果は以前と同じだったようで」
梶原さんは一度負けた腐竜にもう一度挑んでくれたのか。
やっぱりあの人は良い人だ。
だけど結果は芳しくなかった。
もしかしたらバース君もそのために頑張って負傷してしまったのかもしれないな。
「その勇者って、梶原さんよりも強いんですか?」
「いえ、おそらく戦ったら十中八九カジワラさんが勝つでしょう」
「なら、その勇者を亡き者にするというのは?」
「ムルガ共和国が黙ってないでしょう。カジワラさんはギルドの役職持ちです。ドラゴニアだけでなく冒険者ギルドもまたムルガ共和国との間に禍根を作ってしまう。カジワラさんも動きたくても動けない辛い立場なのです」
勇者を殺すのも無しか。
俺が殺してもドラゴニアで勇者が死んだという事実は残る。
結局腐竜を倒して心臓を取ってくるのが一番誰も損をしない選択か。
そうなると、今のドラゴニアには腐竜を倒せる者がいないというのが一番の問題だ。
俺も一度腐竜に挑んでみるとしよう。
冒険者やマルクがそこまで信頼している梶原さんが勝てなかった腐竜に俺が勝てるかはわからないけど。
以前確認したとき、梶原さんの神器は神足の革靴、444マグナム、古の魔導書(水)、時精の腕時計、狂戦士の指輪、スマホの6つだった。
おそらくどこぞの勇者と一度争ったことがあるのだろう。
梶原さんが自分から他の勇者を攻撃して神器を奪うことなんて想像が付かないので、相手のほうから仕掛けてきたのを返り討ちにしたのだと思う。
神足の革靴の能力は脚力の超強化。
脚力だけなら神巻きタバコで増幅された俺の身体能力を上回る。
444マグナムは高威力の銃だ。
銃弾の速度は亜光速。
レールガンみたいな速度で銃弾を飛ばすリボルバー銃。
弾は1日100発まで補充可能らしい。
古の魔導書は、神のスマホと水精の短剣を持っていた拷問好きのサイコ勇者が持っていた火の魔導書の水版だ。
開くだけで水魔法の初級から上級までを使えるようになる神器。
時精の腕時計は10秒間の加速能力。
サイボーグ野郎の奥歯に設置されているような奴よりかは加速度は低く、2倍だ。
クールタイムが1時間あるので10秒後にまた発動すれば永遠に加速していられるようなことも無い。
狂戦士の指輪は身体能力や魔力を20倍くらいまで引き上げてくれる代わりに、思考能力が下がるという神器だ。
なんともリスキーな神器。
そしてスマホはスマホ。
以上が梶原さんの持っている神器だが、見た感じバランスが取れていてかなり強そうだ。
梶原さんはプロフィールを見てもこちらの世界に来てからの行動を見ても人格者なのは間違いなさそうだったので俺はあまり警戒していなかったのだが、その力だけならば十分に警戒するべき人物なのだ。
そんな梶原さんが勝てなかったという腐竜に少し興味が湧いた。
牛鬼と戦って分かったが、神器をもらった勇者だからといってこの世界で最強というわけではないようだ。
この世界の食物連鎖の頂点は人間ではなく、魔物。
人間の中でそこそこ強いからといって、魔物の中でもそうだとは限らないのだ。
俺が倒した牛鬼は魔物の中でもそこそこ強いほうだと思うけれど、もっと強い魔物がいる可能性もあるし牛鬼レベルの魔物が群れで行動している可能性もあるのだ。
そうなれば俺はライオンに狩られるトムソンガゼルのようなもの。
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せいぜい逃げ足でも鍛えておかなければな。
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