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114.久しぶりの再会
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王国内に潜入し、王都一番街の豪邸に忍び込んだ俺。
そこには隷属アイテムの首輪を付けられて服従を強制されるかえでちゃんと隼人君がいた。
そして分かりやすく悪そうな貴族がニヤニヤ顔でふんぞり返っていた。
悪い貴族の典型のような男だが、それが王国貴族のスタンダードなので性格や見た目はそれほど気にしないようにしよう。
見たところ貴族自身は戦えるわけではなさそうだし、傍らに立たせている用心棒っぽい男もCランク冒険者くらいの力量に思える。
当然この世界では武術の腕前だけで強さが決まるわけではなく、神器や魔道具などのアイテムの存在も強さに関わってくる。
だが、その点で言ったら俺は神器をそこそこたくさん持っているわけで。
単純に考えて武術の腕前で俺が勝り、保有アイテム数やアイテムの強力さでも俺が上回れば総合的に俺のほうが強いという結論になるだろう。
油断するつもりはないが、この屋敷の戦力は隷属したかえでちゃんと隼人君を戦わせる前提で整えられていると考えてもいいと思う。
不測の事態になったとしても、武力で切り抜けることは可能だと思う。
もう少し様子を見て、かえでちゃんと隼人君が2人きりになるタイミングを探ろう。
あれから数時間、あの貴族はかえでちゃんを盾に隼人君に卑屈なことを言わせたりして楽しんでから食事に向かった。
よくも飽きないものだと思った。
何か勇者に対して強烈なコンプレックスを抱えている人物のようだ。
隼人君は若いので、最初のほうはプライドが傷つけられたのか顔を真っ赤にしながら耐えていた。
しかしいつまで経っても貴族が飽きないので馬鹿らしくなったらしく、最後のほうはもう機械のように同じようなことを口にしていた。
あの貴族は勇者にコンプレックスを抱くあまり勇者を足蹴にして悦に浸っていたようだが、悦に浸りすぎて当の勇者に逆に馬鹿にされるという本末転倒に気がついているだろうか。
「ふぅ、やっと行ったか。なんなんだあいつ。何が楽しいんだろう」
「ごめんね、隼人君。私のせいであんな奴に頭なんか下げて」
「お前のせいじゃないって。それに俺、あんまりなんとも思わなかったんだよな。そりゃ、最初のほうは屈辱だって思ったけど。あいつ馬鹿じゃん?何度も何度も同じこと言わせて大笑いして。だから逆に俺おかしくなってきちゃって。笑い堪えるのに必死だったよ」
「そうだね。なんか変だったね。でも、怖いよ。今は馬鹿なことばかり命令してるかもしれないけど、この首輪がある限りどんな命令でも断われないんだよ」
「そうだな。なんとかこの首輪を外す方法を探さないと」
2人が状況を悲観せずに前向きに打開策を考えることのできる精神状態で助かった。
俺は年の功って程には人生経験が薄い。
会社と家の往復に半生を費やしたおかげで無駄に歳ばかり食ったおっさんの俺は、カウンセリングができるほど大人じゃない。
2人があんまりへこんでいたら面倒になって酒でも飲ませていたかもしれない。
それほど精神的に参った様子が無くて本当によかった。
貴族は横に立たせていた用心棒も一緒に連れて行ったし、メイドさんもお茶とお菓子を出して去っていったのでこの部屋には今2人だけだ。
話をするには今しかない。
しかし突然出て行っては2人を驚かせてしまうかもしれない。
俺は光学迷彩の魔法を発動し、神の苦無威の隠密能力を解除する。
神の苦無威による完璧な隠密能力は無くなり、光の屈折によって姿を隠すだけの光学迷彩が残される。
俺は壁のあたりをコンコンと軽くノックした。
「誰?」
「どうも、いつぞやのおっさんです。心配で様子を見に来ました。これから姿を現すけど、静かにしておいてくれるかな?」
「シゲさっぐむっ」
「しっかえで、静かにしなきゃ」
大声で俺のことを呼ぼうとしたかえでちゃんの口を隼人君が慌てて塞ぐ。
覚えていてくれたみたいでおっさんも嬉しいけど、ちょっと今は大声はね。
かえでちゃんは大声を出すとまずいことに気がついたのか、コクコクと首を縦に振る。
2人の心の準備ができたみたいなので俺は光学迷彩を解いて姿を現した。
「シゲさん。助けに来てくれたんだな」
「勇者を隷属させるアイテムなんていう危険なアイテムをよりにもよって王国が作りだしたって聞いてね。色々聞きたいこともあるけど、とりあえずその首輪を外すよ」
「外せるのか?」
「ちょっと見せて。うん、これなら外せる」
勇者を隷属させることのできる首輪は、基本的には奴隷を隷属させる首輪と同じものだった。
違うのは出力とか周波数のようなものとか、そのへんの細かい設定や素材の部分だ。
少しいじっていたら首輪はカチャリと外れた。
「すげぇ、シゲさんはすげえなやっぱり」
俺が凄いわけじゃなくて神樹の実を食べた知識チートなのだが、凄い奴だと言われて悪い気はしない。
残り物には福があるとあのどんぐりみたいなちっぽけな神器を選んだのは俺なのだから、回りまわって俺が凄いという考え方もあるし。
俺は同じようにかえでちゃんの首輪も外した。
「シゲさん、ありがとう。本当にどうなっちゃうのかと思った」
「まだ安心するのは早いよ。静香さんも何故か一人で動いているようだし、何が起こっているのかよく分からない。今から俺がお世話になっているリザウェル男爵のところに行くから、そこで話を聞かせてくれる?」
「ああ、話すよ。王国がどうなっちゃったのか。騎士団がどうなっちゃったのか」
「静香さんやマリステラさんのことも。シゲさんにはまた力を借りることになっちゃうかもしれないけど、もう私たちの力じゃどうにもならなくて」
「大丈夫。静香さんやマリステラさんのことも後で様子を見にいって、なんとかできるならしてみるから」
俺は2人を連れて男爵領に転移した。
そこには隷属アイテムの首輪を付けられて服従を強制されるかえでちゃんと隼人君がいた。
そして分かりやすく悪そうな貴族がニヤニヤ顔でふんぞり返っていた。
悪い貴族の典型のような男だが、それが王国貴族のスタンダードなので性格や見た目はそれほど気にしないようにしよう。
見たところ貴族自身は戦えるわけではなさそうだし、傍らに立たせている用心棒っぽい男もCランク冒険者くらいの力量に思える。
当然この世界では武術の腕前だけで強さが決まるわけではなく、神器や魔道具などのアイテムの存在も強さに関わってくる。
だが、その点で言ったら俺は神器をそこそこたくさん持っているわけで。
単純に考えて武術の腕前で俺が勝り、保有アイテム数やアイテムの強力さでも俺が上回れば総合的に俺のほうが強いという結論になるだろう。
油断するつもりはないが、この屋敷の戦力は隷属したかえでちゃんと隼人君を戦わせる前提で整えられていると考えてもいいと思う。
不測の事態になったとしても、武力で切り抜けることは可能だと思う。
もう少し様子を見て、かえでちゃんと隼人君が2人きりになるタイミングを探ろう。
あれから数時間、あの貴族はかえでちゃんを盾に隼人君に卑屈なことを言わせたりして楽しんでから食事に向かった。
よくも飽きないものだと思った。
何か勇者に対して強烈なコンプレックスを抱えている人物のようだ。
隼人君は若いので、最初のほうはプライドが傷つけられたのか顔を真っ赤にしながら耐えていた。
しかしいつまで経っても貴族が飽きないので馬鹿らしくなったらしく、最後のほうはもう機械のように同じようなことを口にしていた。
あの貴族は勇者にコンプレックスを抱くあまり勇者を足蹴にして悦に浸っていたようだが、悦に浸りすぎて当の勇者に逆に馬鹿にされるという本末転倒に気がついているだろうか。
「ふぅ、やっと行ったか。なんなんだあいつ。何が楽しいんだろう」
「ごめんね、隼人君。私のせいであんな奴に頭なんか下げて」
「お前のせいじゃないって。それに俺、あんまりなんとも思わなかったんだよな。そりゃ、最初のほうは屈辱だって思ったけど。あいつ馬鹿じゃん?何度も何度も同じこと言わせて大笑いして。だから逆に俺おかしくなってきちゃって。笑い堪えるのに必死だったよ」
「そうだね。なんか変だったね。でも、怖いよ。今は馬鹿なことばかり命令してるかもしれないけど、この首輪がある限りどんな命令でも断われないんだよ」
「そうだな。なんとかこの首輪を外す方法を探さないと」
2人が状況を悲観せずに前向きに打開策を考えることのできる精神状態で助かった。
俺は年の功って程には人生経験が薄い。
会社と家の往復に半生を費やしたおかげで無駄に歳ばかり食ったおっさんの俺は、カウンセリングができるほど大人じゃない。
2人があんまりへこんでいたら面倒になって酒でも飲ませていたかもしれない。
それほど精神的に参った様子が無くて本当によかった。
貴族は横に立たせていた用心棒も一緒に連れて行ったし、メイドさんもお茶とお菓子を出して去っていったのでこの部屋には今2人だけだ。
話をするには今しかない。
しかし突然出て行っては2人を驚かせてしまうかもしれない。
俺は光学迷彩の魔法を発動し、神の苦無威の隠密能力を解除する。
神の苦無威による完璧な隠密能力は無くなり、光の屈折によって姿を隠すだけの光学迷彩が残される。
俺は壁のあたりをコンコンと軽くノックした。
「誰?」
「どうも、いつぞやのおっさんです。心配で様子を見に来ました。これから姿を現すけど、静かにしておいてくれるかな?」
「シゲさっぐむっ」
「しっかえで、静かにしなきゃ」
大声で俺のことを呼ぼうとしたかえでちゃんの口を隼人君が慌てて塞ぐ。
覚えていてくれたみたいでおっさんも嬉しいけど、ちょっと今は大声はね。
かえでちゃんは大声を出すとまずいことに気がついたのか、コクコクと首を縦に振る。
2人の心の準備ができたみたいなので俺は光学迷彩を解いて姿を現した。
「シゲさん。助けに来てくれたんだな」
「勇者を隷属させるアイテムなんていう危険なアイテムをよりにもよって王国が作りだしたって聞いてね。色々聞きたいこともあるけど、とりあえずその首輪を外すよ」
「外せるのか?」
「ちょっと見せて。うん、これなら外せる」
勇者を隷属させることのできる首輪は、基本的には奴隷を隷属させる首輪と同じものだった。
違うのは出力とか周波数のようなものとか、そのへんの細かい設定や素材の部分だ。
少しいじっていたら首輪はカチャリと外れた。
「すげぇ、シゲさんはすげえなやっぱり」
俺が凄いわけじゃなくて神樹の実を食べた知識チートなのだが、凄い奴だと言われて悪い気はしない。
残り物には福があるとあのどんぐりみたいなちっぽけな神器を選んだのは俺なのだから、回りまわって俺が凄いという考え方もあるし。
俺は同じようにかえでちゃんの首輪も外した。
「シゲさん、ありがとう。本当にどうなっちゃうのかと思った」
「まだ安心するのは早いよ。静香さんも何故か一人で動いているようだし、何が起こっているのかよく分からない。今から俺がお世話になっているリザウェル男爵のところに行くから、そこで話を聞かせてくれる?」
「ああ、話すよ。王国がどうなっちゃったのか。騎士団がどうなっちゃったのか」
「静香さんやマリステラさんのことも。シゲさんにはまた力を借りることになっちゃうかもしれないけど、もう私たちの力じゃどうにもならなくて」
「大丈夫。静香さんやマリステラさんのことも後で様子を見にいって、なんとかできるならしてみるから」
俺は2人を連れて男爵領に転移した。
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