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132.機銃
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未だ数百人の隷属勇者を有する王家陣営とスクアード辺境伯率いる諸侯連合の戦いが本格的になってきた今日このごろ。
勇者は強力な神器を持った大戦力だが、隷属されて嫌々戦わされている勇者はそれほど使い勝手のいい駒ではない。
隷属アイテムは付けたものが命令に背いたときに身体が言うことを聞かなくなるだけのアイテムだ。
自由に操ることができるわけではない。
無駄に人権意識の高い国で育った勇者たちを王家陣営は持て余している。
対する諸侯連合を率いるスクアード辺境伯は兵を率いさせたら王国一と言われるような名将だ。
王国騎士団の上層部を一新してしまって用兵に秀でた人材に乏しい王家陣営とは違い、諸侯連合は巧みに兵を用いる。
超戦力だが足手まといの勇者の大軍と名ばかり大将が不協和音を奏でる王家陣営と、勇者の数は少ないもののまるで羊飼いのように上手く兵を操る諸侯連合の力は拮抗していた。
そろそろ戦いの火種が男爵領にまで飛び火する頃だ。
防備を調えなければならない。
「よし、ボルト打ち込んで」
「了解しました。ボルト打ち込み開始!!」
数日いじった感触で機銃の使い方はまあまあわかった。
腐竜の体内にあった鉄と銅を材料にして弾丸を生成するための機構のせいで実弾銃のほうは少し大きくなってしまったけれどまだ外壁に付けられない大きさではない。
男爵領警備隊の面々にも手伝ってもらいながら機銃を16門外壁上に取り付けていく。
残りは船だ。
ルーガル王国方面が騒がしくなったおかげで陸路が最近は少し危険になった。
今の男爵領にとって海路は命綱だ。
船の防衛兵器は強いに越したことはない。
あれから男爵領も船の製造や外部発注に力を入れて4隻の船を保有するまでになった。
外壁への取り付けが完了したら港に帰港している船だけでも兵装を強化しておかなければ。
「よし、ボルトを固定してください」
男爵領警備隊の魔法により、太いボルトが外壁上に飛び出た状態で固定された。
ボルトに機銃の接続部をはめ、ナットで固定する。
魔法で固着したのでは整備のときにまた魔法で外さなければならない。
こういうのは原始的なボルトとナットで固定するのがいいんだ。
見たこともないような大きなナットを2人がかりでなければ持てない大きなスパナで回していく警備隊。
ずっと見ていられる光景だ。
ボルトとナットとスパナには男を魅了する魔力があるようだ。
しかし突如として鳴り響く銅鑼の爆音により、至福の時間は終わりを告げる。
「南東の方角に敵影!!」
櫓の上の見張り兵の指し示す方向を見れば、そこにはなにやら大きな荷物を抱えた数百人規模の軍隊が男爵領に向かって行進してきていた。
男爵領は港町として適度に栄えてきているし色々な特産物も育ってきているので他領の貴族からしてみれば魅力的な土地だ。
軍隊が攻めてくるのは最近では珍しいことではない。
しかしその持ち物が珍しい。
「あれは、魔導カタパルトですね。それに衝車」
いわゆる攻城兵器ってやつか。
魔導カタパルトは俺の魔法の知識にも存在している。
風魔法の力で岩を撃ち出す兵器だ。
そして衝車。
これはあちらの世界にもあった破城槌の一種だ。
そんなもので男爵領の鉄の門が破れるかは分からないが、魔法のある世界の破城槌だから普通のものではない可能性もある。
ここまで攻め込ませたくは無いな。
「そもそもあれはどこの軍隊なんだろうか」
「あの旗はフィラル子爵だと思います」
またお隣さんか。
貧乏な小貴族だと侮っていたけれど、結構良い物を持っているじゃないか。
歴史だけはある貴族家のようだから、倉庫をひっくり返せば過去の栄光の一つや二つは出てくるというわけか。
「油と火魔法によって攻城兵器を焼き払いますか?」
「いや、いい機会だからこれの試運転をしてみよう。1門すぐに使えるように整えよう」
「了解しました」
大急ぎで機銃を整備する。
光弾は似たようなものが船に取り付けられているので男爵領ではそれほど目新しくは無い。
ここは実弾銃を試してみたい。
魔石をセットし、弾丸を生成する機構を作動させる。
錬金魔法によって鋼鉄の芯を銅が覆ったフルメタルジャケット弾が生成されていく。
生成された弾は自動的に弾倉に溜まっていき、弾倉がいっぱいになると生成が止まる。
弾倉内には300発ほどの弾が入るようになっており、これが100発を切るとまた自動的に弾が生成されるようになっている。
原材料の鉄と銅を切らさない限りはほぼ永久に撃てる銃というわけだ。
腐竜の掃射が終わらないわけだ。
体内で無限に弾を生成していたのだから。
鉄と銅をどこから供給していたのかは謎だけどな。
時間があればそのあたりも詳しく調べてみたいところだ。
最近忙しくて自由な時間が少ない気がしている。
王国の問題が片付いたらまた男爵に休暇を申請してみよう。
暇ならいつでも自由に休みが取れる超ホワイトな職場だ。
「よし、装填完了。いつでも撃てるよ。まずは照準を合わせてみようか」
「了解しました。照準合わせろ!」
双眼鏡を覗き込んで機銃の台座に刻まれた目盛りを調節していく警備隊の狙撃手担当。
試し撃ちもしていないしたぶん初弾は外れるだろう。
目盛りといってもあくまでも目安だからね。
台座の取り付けなどによって生じたミリ単位の誤差はあるはずだ。
その誤差は距離が開けば開くほどに大きくなっていくだろう。
外しても誰も攻めないから気楽に撃ってほしい。
「照準よし」
「ではシゲノブ殿」
「はい、撃ってください」
「撃て!」
腐竜と戦ったときに聞いた忌まわしき機銃の発砲音が響き渡り、敵魔導カタパルトが木っ端微塵に大破した。
「命中!」
「まさか1発で当たるとは。君狙撃手の才能があるんじゃないのか……」
勇者は強力な神器を持った大戦力だが、隷属されて嫌々戦わされている勇者はそれほど使い勝手のいい駒ではない。
隷属アイテムは付けたものが命令に背いたときに身体が言うことを聞かなくなるだけのアイテムだ。
自由に操ることができるわけではない。
無駄に人権意識の高い国で育った勇者たちを王家陣営は持て余している。
対する諸侯連合を率いるスクアード辺境伯は兵を率いさせたら王国一と言われるような名将だ。
王国騎士団の上層部を一新してしまって用兵に秀でた人材に乏しい王家陣営とは違い、諸侯連合は巧みに兵を用いる。
超戦力だが足手まといの勇者の大軍と名ばかり大将が不協和音を奏でる王家陣営と、勇者の数は少ないもののまるで羊飼いのように上手く兵を操る諸侯連合の力は拮抗していた。
そろそろ戦いの火種が男爵領にまで飛び火する頃だ。
防備を調えなければならない。
「よし、ボルト打ち込んで」
「了解しました。ボルト打ち込み開始!!」
数日いじった感触で機銃の使い方はまあまあわかった。
腐竜の体内にあった鉄と銅を材料にして弾丸を生成するための機構のせいで実弾銃のほうは少し大きくなってしまったけれどまだ外壁に付けられない大きさではない。
男爵領警備隊の面々にも手伝ってもらいながら機銃を16門外壁上に取り付けていく。
残りは船だ。
ルーガル王国方面が騒がしくなったおかげで陸路が最近は少し危険になった。
今の男爵領にとって海路は命綱だ。
船の防衛兵器は強いに越したことはない。
あれから男爵領も船の製造や外部発注に力を入れて4隻の船を保有するまでになった。
外壁への取り付けが完了したら港に帰港している船だけでも兵装を強化しておかなければ。
「よし、ボルトを固定してください」
男爵領警備隊の魔法により、太いボルトが外壁上に飛び出た状態で固定された。
ボルトに機銃の接続部をはめ、ナットで固定する。
魔法で固着したのでは整備のときにまた魔法で外さなければならない。
こういうのは原始的なボルトとナットで固定するのがいいんだ。
見たこともないような大きなナットを2人がかりでなければ持てない大きなスパナで回していく警備隊。
ずっと見ていられる光景だ。
ボルトとナットとスパナには男を魅了する魔力があるようだ。
しかし突如として鳴り響く銅鑼の爆音により、至福の時間は終わりを告げる。
「南東の方角に敵影!!」
櫓の上の見張り兵の指し示す方向を見れば、そこにはなにやら大きな荷物を抱えた数百人規模の軍隊が男爵領に向かって行進してきていた。
男爵領は港町として適度に栄えてきているし色々な特産物も育ってきているので他領の貴族からしてみれば魅力的な土地だ。
軍隊が攻めてくるのは最近では珍しいことではない。
しかしその持ち物が珍しい。
「あれは、魔導カタパルトですね。それに衝車」
いわゆる攻城兵器ってやつか。
魔導カタパルトは俺の魔法の知識にも存在している。
風魔法の力で岩を撃ち出す兵器だ。
そして衝車。
これはあちらの世界にもあった破城槌の一種だ。
そんなもので男爵領の鉄の門が破れるかは分からないが、魔法のある世界の破城槌だから普通のものではない可能性もある。
ここまで攻め込ませたくは無いな。
「そもそもあれはどこの軍隊なんだろうか」
「あの旗はフィラル子爵だと思います」
またお隣さんか。
貧乏な小貴族だと侮っていたけれど、結構良い物を持っているじゃないか。
歴史だけはある貴族家のようだから、倉庫をひっくり返せば過去の栄光の一つや二つは出てくるというわけか。
「油と火魔法によって攻城兵器を焼き払いますか?」
「いや、いい機会だからこれの試運転をしてみよう。1門すぐに使えるように整えよう」
「了解しました」
大急ぎで機銃を整備する。
光弾は似たようなものが船に取り付けられているので男爵領ではそれほど目新しくは無い。
ここは実弾銃を試してみたい。
魔石をセットし、弾丸を生成する機構を作動させる。
錬金魔法によって鋼鉄の芯を銅が覆ったフルメタルジャケット弾が生成されていく。
生成された弾は自動的に弾倉に溜まっていき、弾倉がいっぱいになると生成が止まる。
弾倉内には300発ほどの弾が入るようになっており、これが100発を切るとまた自動的に弾が生成されるようになっている。
原材料の鉄と銅を切らさない限りはほぼ永久に撃てる銃というわけだ。
腐竜の掃射が終わらないわけだ。
体内で無限に弾を生成していたのだから。
鉄と銅をどこから供給していたのかは謎だけどな。
時間があればそのあたりも詳しく調べてみたいところだ。
最近忙しくて自由な時間が少ない気がしている。
王国の問題が片付いたらまた男爵に休暇を申請してみよう。
暇ならいつでも自由に休みが取れる超ホワイトな職場だ。
「よし、装填完了。いつでも撃てるよ。まずは照準を合わせてみようか」
「了解しました。照準合わせろ!」
双眼鏡を覗き込んで機銃の台座に刻まれた目盛りを調節していく警備隊の狙撃手担当。
試し撃ちもしていないしたぶん初弾は外れるだろう。
目盛りといってもあくまでも目安だからね。
台座の取り付けなどによって生じたミリ単位の誤差はあるはずだ。
その誤差は距離が開けば開くほどに大きくなっていくだろう。
外しても誰も攻めないから気楽に撃ってほしい。
「照準よし」
「ではシゲノブ殿」
「はい、撃ってください」
「撃て!」
腐竜と戦ったときに聞いた忌まわしき機銃の発砲音が響き渡り、敵魔導カタパルトが木っ端微塵に大破した。
「命中!」
「まさか1発で当たるとは。君狙撃手の才能があるんじゃないのか……」
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