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137.ヨネヅ半島
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ドラゴニアから陸路で南下すること半月ほど。
そこにはヨネヅ半島と呼ばれる紛争地帯が広がっている。
人種の坩堝と呼ばれるほどに他種族が暮らしている土地であるからに、紛争が耐えない地域だ。
人族だけでも先祖を違える複数人種が住んでいるのに、他にも獣人が10種族以上もそれぞれ別の集落を形成して暮らしているために争いが耐えないのだ。
同じ国で暮らしている表向き友好関係にあるエルカザド連合国の獣人たちでさえ、部族間には隔たりのようなものを感じたのだから部族を纏める意思が無ければ当然対立してしまうということなのだろう。
獣人たちの血の気の多さには何度も辟易とさせられた経験がある。
エルカザド連合国を樹立した人もきっと大変な思いをしたに違いない。
そこに複数人種の人族まで混ざるのだからもはや混沌の半島だ。
梶原さんの話では少なくとも400年以上は戦乱が続いているらしい。
混迷を極めた日本の戦国時代でも150年くらいだというのに、この半島はその倍以上もの間人々が戦い続けているというのだ。
神様からチートな神器をもらっていなかったら絶対に横切りたくなかった地域だな。
「盗賊だ!」
「はぁ、また盗賊か」
紛争地帯なのだから当然治安は最悪。
ヨネヅ半島に入ってからというもの盗賊がひっきりなしに襲ってくる。
まだこれでもマシなほうだというのだから驚きだ。
ヨネヅ半島はミスリルという希少金属の取れる大きな鉱山がある。
今俺が護衛についているこのキャラバンはその鉱山に食料や日用品、娯楽の品などを届けて帰りにミスリル鉱石をいっぱいに積んで帰ってくるらしい。
だから高価なミスリル鉱石を積んでいる帰りのほうが金になるため盗賊が狂ったように襲ってくるのだという。
「くそっ、こいつら錬度が高い。装備も良いし傭兵崩れか!」
「先生!先生!お願いします!!」
なぜだか俺は先生と呼ばれて他の護衛とは少しだけ待遇が違う。
おそらく俺がBランク冒険者だからだろう。
素性の知れない冒険者でも、高ランクになればそれなりにもてはやされるものだ。
特にBランク以上は確かな強さとギルドからの信頼が無ければなることができないので護衛の代金も桁が違う。
Bランクになってから始めて護衛依頼を受ける俺も、Cランクの頃とのあまりの待遇の違いに最初戸惑った。
しかし慣れれば先生と呼ばれるのもなんか気持ちいいし、他の護衛たちの手に負えない敵が現れない限りは休んでいていいという待遇も最高だ。
金も前金をがっぽり貰ったし、食事も酒もキャラバンの商人と同じものを口にできる。
やはり異世界でも社会的信用というものは大事だなと思った。
異世界の場合はその信用に強さも含まれている。
飲んで食って寝てばかりではギルドの顔に泥を塗ることになってしまう。
呼ばれていることだし、そろそろ働くこととしよう。
俺は馬車から下り、護衛たちと戦う盗賊を見回す。
ぱっと見て危なそうなのはやはりランクの低い冒険者が守っているあたりか。
儲かっていそうな商人が集まったキャラバンといえどもCランク以上の冒険者ばかりを雇うことは金銭的に負担が大きい。
そのために見張りや雑用などの強さを必要としない人手として、DランクやEランクの冒険者を雇うことがある。
さすがにこの紛争地帯の護衛にEランクは混ざっていないが、Dランクの冒険者は数人混ざっている。
俺は腰の刺突剣を抜き、Dランク冒険者が戦っている戦線に援護に向かう。
彼ら彼女らは、盗賊の勢いに少し押されて馬車に近づきすぎている。
「交代だ」
一言声をかけ、一番腕の立ちそうな盗賊の相手を代わる。
浅黒い肌にターバンを巻いた男だ。
ターバンの隙間からは金髪の髪が見えている。
おそらく人間だろう。
種族にもよるが、獣人だったらおそらく今頃Dランク冒険者は全員殺されている。
「平時だったらネバネバにしてやるところなんだがね……」
キャラバンのルールで盗賊は全員殺さなければならないことになっている。
この世界に来て幾度と無く人の命を奪う選択をしてきた俺だが、命を奪う必要が無いのならば好き好んで殺したくはない。
だがこのリアル戦国時代みたいな半島ではそんなことは言っていられないそうだ。
人の命よりも食料のほうが価値があるようなこの半島では、無駄に食料を消費する捕虜は必要ない。
実際に奴隷よりも食料のほうが高く売られているというのだからなんとも乱世。
「何をごちゃごちゃとっ!死ね!!」
「悪いね、こっちも仕事なんだ」
俺は振り下ろされた剣をヒラリと身体を横にすることで避け、盗賊の顎の下から延髄に向けて刺突剣を刺し込んだ。
「がっ……は……」
即死だろう。
それほど痛みも感じることなくあの世に行ったはずだ。
性悪の女神さまによろしく。
盗賊の残りはそれほど強い感じは無いが、Dランク冒険者たちには少し荷が重いか。
残りは魔法で一掃するとしよう。
「魔法撃つよ」
「「「はい!」」」
後ろから声をかけた俺の声に反応して盗賊と切り結んでいた数人のDランク冒険者が散開し、射線を空ける。
盗賊にも俺の声は聞こえているので逃げようとするが、今更走って逃げたところですでに魔法の射程圏内だ。
初級風魔法の弾丸を連射して盗賊の足を薙ぎ払う。
「よし、仕留めて」
「「「はい!!」」」
足を不可視の弾丸が強打した盗賊たちはみすぼらしく地面を転げ回る。
初級だしあまり魔力も込めていないので骨も折れていないと思うが、地を這う盗賊などはまな板の上の鯉と一緒だ。
Dランク冒険者たちが順番にトドメを刺していった。
「はぁ、殺伐としている……」
ルートを間違ったかな。
そこにはヨネヅ半島と呼ばれる紛争地帯が広がっている。
人種の坩堝と呼ばれるほどに他種族が暮らしている土地であるからに、紛争が耐えない地域だ。
人族だけでも先祖を違える複数人種が住んでいるのに、他にも獣人が10種族以上もそれぞれ別の集落を形成して暮らしているために争いが耐えないのだ。
同じ国で暮らしている表向き友好関係にあるエルカザド連合国の獣人たちでさえ、部族間には隔たりのようなものを感じたのだから部族を纏める意思が無ければ当然対立してしまうということなのだろう。
獣人たちの血の気の多さには何度も辟易とさせられた経験がある。
エルカザド連合国を樹立した人もきっと大変な思いをしたに違いない。
そこに複数人種の人族まで混ざるのだからもはや混沌の半島だ。
梶原さんの話では少なくとも400年以上は戦乱が続いているらしい。
混迷を極めた日本の戦国時代でも150年くらいだというのに、この半島はその倍以上もの間人々が戦い続けているというのだ。
神様からチートな神器をもらっていなかったら絶対に横切りたくなかった地域だな。
「盗賊だ!」
「はぁ、また盗賊か」
紛争地帯なのだから当然治安は最悪。
ヨネヅ半島に入ってからというもの盗賊がひっきりなしに襲ってくる。
まだこれでもマシなほうだというのだから驚きだ。
ヨネヅ半島はミスリルという希少金属の取れる大きな鉱山がある。
今俺が護衛についているこのキャラバンはその鉱山に食料や日用品、娯楽の品などを届けて帰りにミスリル鉱石をいっぱいに積んで帰ってくるらしい。
だから高価なミスリル鉱石を積んでいる帰りのほうが金になるため盗賊が狂ったように襲ってくるのだという。
「くそっ、こいつら錬度が高い。装備も良いし傭兵崩れか!」
「先生!先生!お願いします!!」
なぜだか俺は先生と呼ばれて他の護衛とは少しだけ待遇が違う。
おそらく俺がBランク冒険者だからだろう。
素性の知れない冒険者でも、高ランクになればそれなりにもてはやされるものだ。
特にBランク以上は確かな強さとギルドからの信頼が無ければなることができないので護衛の代金も桁が違う。
Bランクになってから始めて護衛依頼を受ける俺も、Cランクの頃とのあまりの待遇の違いに最初戸惑った。
しかし慣れれば先生と呼ばれるのもなんか気持ちいいし、他の護衛たちの手に負えない敵が現れない限りは休んでいていいという待遇も最高だ。
金も前金をがっぽり貰ったし、食事も酒もキャラバンの商人と同じものを口にできる。
やはり異世界でも社会的信用というものは大事だなと思った。
異世界の場合はその信用に強さも含まれている。
飲んで食って寝てばかりではギルドの顔に泥を塗ることになってしまう。
呼ばれていることだし、そろそろ働くこととしよう。
俺は馬車から下り、護衛たちと戦う盗賊を見回す。
ぱっと見て危なそうなのはやはりランクの低い冒険者が守っているあたりか。
儲かっていそうな商人が集まったキャラバンといえどもCランク以上の冒険者ばかりを雇うことは金銭的に負担が大きい。
そのために見張りや雑用などの強さを必要としない人手として、DランクやEランクの冒険者を雇うことがある。
さすがにこの紛争地帯の護衛にEランクは混ざっていないが、Dランクの冒険者は数人混ざっている。
俺は腰の刺突剣を抜き、Dランク冒険者が戦っている戦線に援護に向かう。
彼ら彼女らは、盗賊の勢いに少し押されて馬車に近づきすぎている。
「交代だ」
一言声をかけ、一番腕の立ちそうな盗賊の相手を代わる。
浅黒い肌にターバンを巻いた男だ。
ターバンの隙間からは金髪の髪が見えている。
おそらく人間だろう。
種族にもよるが、獣人だったらおそらく今頃Dランク冒険者は全員殺されている。
「平時だったらネバネバにしてやるところなんだがね……」
キャラバンのルールで盗賊は全員殺さなければならないことになっている。
この世界に来て幾度と無く人の命を奪う選択をしてきた俺だが、命を奪う必要が無いのならば好き好んで殺したくはない。
だがこのリアル戦国時代みたいな半島ではそんなことは言っていられないそうだ。
人の命よりも食料のほうが価値があるようなこの半島では、無駄に食料を消費する捕虜は必要ない。
実際に奴隷よりも食料のほうが高く売られているというのだからなんとも乱世。
「何をごちゃごちゃとっ!死ね!!」
「悪いね、こっちも仕事なんだ」
俺は振り下ろされた剣をヒラリと身体を横にすることで避け、盗賊の顎の下から延髄に向けて刺突剣を刺し込んだ。
「がっ……は……」
即死だろう。
それほど痛みも感じることなくあの世に行ったはずだ。
性悪の女神さまによろしく。
盗賊の残りはそれほど強い感じは無いが、Dランク冒険者たちには少し荷が重いか。
残りは魔法で一掃するとしよう。
「魔法撃つよ」
「「「はい!」」」
後ろから声をかけた俺の声に反応して盗賊と切り結んでいた数人のDランク冒険者が散開し、射線を空ける。
盗賊にも俺の声は聞こえているので逃げようとするが、今更走って逃げたところですでに魔法の射程圏内だ。
初級風魔法の弾丸を連射して盗賊の足を薙ぎ払う。
「よし、仕留めて」
「「「はい!!」」」
足を不可視の弾丸が強打した盗賊たちはみすぼらしく地面を転げ回る。
初級だしあまり魔力も込めていないので骨も折れていないと思うが、地を這う盗賊などはまな板の上の鯉と一緒だ。
Dランク冒険者たちが順番にトドメを刺していった。
「はぁ、殺伐としている……」
ルートを間違ったかな。
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