43 / 131
43.人脈と島の今
しおりを挟む
柴田勝家とその奥さんのお凜さんを治療した。
さすがの神酒ソーマでも死んだ人は生き返らせることはできないから、早めにうちに頼みに来てくれてよかったよ。
奥さんの病気は素人目でもかなり危険なものだった。
目が黄色くなっていたから、たぶん肝臓系の病気だと思う。
黄疸っていうんだっけな。
そんな現代ではテレビ番組で普通に流されているような情報を軽く口走ったら、なんか尊敬された。
万能薬を飲ませて奥さんが治ったら、神のように崇められた。
悪い感情を抱かれるよりはいいけどね。
これで森家に続いて柴田家にも繋がりができた。
こんな時代だから、人脈というのは本当に自分の命を救ってくれるからね。
殿と俺達家臣のためにも、織田家の重臣たちと少しずつ繋がりを作っていかなければ。
ただ、柴田勝家は清洲会議の後豊臣秀吉と対立するんだよな。
変につながりがあると、陣営に引き込まれる可能性もある。
勝三君は池田恒興の娘と結婚するはずだから、史実では清洲会議の後は池田恒興と一緒に豊臣秀吉に味方する予定だ。
森家と柴田家では家格的に森家が一歩劣る。
両家から誘いがあったら殿は柴田家を選んでしまうかもしれない。
でも正直柴田勝家でも織田信孝でも、天下を取れるとは思えないんだよね。
悔しいがあの山賊面は天下の器だ。
織田信長亡き後は豊臣秀吉に任せるのが泰平の世への最短ルートなんだよ。
たぶんいきなり徳川家康が天下をとってもそんなにうまくはいかないはず。
というかたぶん天下は取れない。
たしか清須会議の後秀吉に味方するのは、織田家五大将の中では丹羽長秀と池田恒興だったかな。
勇者ミツヒデは秀吉に討たれるし、滝川一益は柴田勝家に味方する。
秀吉派の丹羽長秀と池田恒興、どっちかの家に繋がりが欲しいところだ。
だけど結局池田恒興も徳川家康に敗れて死んじゃうしな。
確か史実だと勝三君も一緒の戦場で死んじゃうんだ。
そうなると丹羽長秀かな。
彼の武将は本能寺の変後に没落レースを逃れた数少ない織田家家臣だ。
殿の早期出世を望むのなら積極的に営業を行っていったほうがいいのだろうが、なんとなく釈然としない気持ちになった。
やっぱり今しがた治療した人や曲がりなりにも自分の弟子が、後の世で天寿を全うせずに死んでしまうからだろうか。
できることなら、みんな仲良く大団円で終わって欲しい気持ちはある。
でも世の中そんなにうまくはいかないよね。
特に今は戦国時代だから。
俺の脳みそでは全部丸く収まる結末なんて到底思い浮かばないけれど、足りなければ雪さんの知恵も借りればいい。
少しでも良い未来になるように精一杯努力してみよう。
またひとつ年が明けた。
島造りで忙しかったせいか、今年はなんだかあっという間だった気がする。
そういえば織田信長による比叡山焼き討ちはあったよ。
もうお坊さんへの怒りがマックスになってやっちゃったみたいだ。
ここのところうまくいかないことばかりだったから、鬱憤が溜まっていたというのもあるのかもしれない。
一向宗はあちこちで一揆を煽るし、比叡山は浅井・朝倉と組むし。
戦国武将たちの戦にお坊さんが入るともうメチャクチャだ。
自分たちは武装して攻めて来るくせに寺領に攻め入ると罰当たりだとか神罰仏罰が下るとか言われるんだから、そりゃあ信長じゃなくてもキレたくなるというもの。
まあ焼き討ちはちょっとやりすぎかもとか思うけどね。
寺領や城下を焼くっていうのは、一般人をたくさん殺すってことだ。
戦は侍や坊さん同士でやってりゃいいのにね。
実際、今回の比叡山焼き討ちでも非戦闘員がたくさんいたはずだ。
後の世でも比叡山焼き討ちのときに秀吉が非戦闘員を逃がしたとかいうエピソードが残っていて、美談として語り継がれていたりする。
逆に我らが勇者ミツヒデは一般人だろうが関係なく切り捨てたみたいだけどね。
そのへんがもう、要領のいい人と悪い人って感じがする。
まあ本心ではみんなこんなことはしたくなかったはずなんだ。
そんなこんなで今年の正月は少し沈んだ雰囲気だった。
殿のところの正月の酒宴はいつも通りのようだったけど、みんな少しだけ酒の進みが悪い気がした。
この時代の人にとって、寺社っていうのは結構大きな存在だ。
比叡山焼き討ちは織田軍に属する武士にとっては、少しへこむ出来事だったみたいだ。
雪さんもちょっと動揺していた。
雪さんはこの時代の人らしくお寺へのお参りも欠かさない熱心な仏教徒だからね。
元々織田が嫌いだったのが、もっと嫌いになったようだ。
俺は気分転換も兼ねて、雪さんを沖ノ鳥島へ連れて行くことにした。
現在の沖ノ鳥島はすでに男だらけの島では無い。
元野伏せりをしていた彼らだけど、本土には当然親族がいる。
中には奥さんや子供がいる人もいるそうだ。
今のところ台風対策も何重にも重ねた石壁が功を奏しているし、食料は島での労働の対価として俺から支給される。
食っていくには困らなくなった彼らは、本土に残してきた親族を島に呼びたがった。
俺も人が増えるのは大歓迎なので許可した。
許可といっても連れてくるのは俺だけど。
島に行ったらそうそう本土には戻してやれないと何度も確認したが、大体の人は食える場所があるなら行きたいと返答した。
そんなわけで島には今、男女合わせて60人ほどが住んでいる。
一気に賑やかになったね。
ダンジョンも今では長椅子4つほどになり、島民の憩いのスペースとなっている。
ダンジョンポイントもどんどん貯まっていく。
島全体をダンジョン化する日も近いかもしれないな。
俺と雪さんはダンジョン(椅子)の近くにテレポートし、椅子(ダンジョン)に腰掛ける。
「人工の島と聞きましたけど、結構しっかりとした島ですね」
「元々岩礁があった場所だからね。俺達は岩や土で肉付けしただけなんだ」
「そうなんですか」
耳をすませばざざぁ、ざざぁとざざ波の音が聞こえてくる。
落ち着くな。
みんなの憩いの場所になるのも頷ける。
織田信長もこんな時間を過ごせたら、比叡山を焼き討ちなんてしなかったのかな。
いや、したか。
魔王だもんな。
さすがの神酒ソーマでも死んだ人は生き返らせることはできないから、早めにうちに頼みに来てくれてよかったよ。
奥さんの病気は素人目でもかなり危険なものだった。
目が黄色くなっていたから、たぶん肝臓系の病気だと思う。
黄疸っていうんだっけな。
そんな現代ではテレビ番組で普通に流されているような情報を軽く口走ったら、なんか尊敬された。
万能薬を飲ませて奥さんが治ったら、神のように崇められた。
悪い感情を抱かれるよりはいいけどね。
これで森家に続いて柴田家にも繋がりができた。
こんな時代だから、人脈というのは本当に自分の命を救ってくれるからね。
殿と俺達家臣のためにも、織田家の重臣たちと少しずつ繋がりを作っていかなければ。
ただ、柴田勝家は清洲会議の後豊臣秀吉と対立するんだよな。
変につながりがあると、陣営に引き込まれる可能性もある。
勝三君は池田恒興の娘と結婚するはずだから、史実では清洲会議の後は池田恒興と一緒に豊臣秀吉に味方する予定だ。
森家と柴田家では家格的に森家が一歩劣る。
両家から誘いがあったら殿は柴田家を選んでしまうかもしれない。
でも正直柴田勝家でも織田信孝でも、天下を取れるとは思えないんだよね。
悔しいがあの山賊面は天下の器だ。
織田信長亡き後は豊臣秀吉に任せるのが泰平の世への最短ルートなんだよ。
たぶんいきなり徳川家康が天下をとってもそんなにうまくはいかないはず。
というかたぶん天下は取れない。
たしか清須会議の後秀吉に味方するのは、織田家五大将の中では丹羽長秀と池田恒興だったかな。
勇者ミツヒデは秀吉に討たれるし、滝川一益は柴田勝家に味方する。
秀吉派の丹羽長秀と池田恒興、どっちかの家に繋がりが欲しいところだ。
だけど結局池田恒興も徳川家康に敗れて死んじゃうしな。
確か史実だと勝三君も一緒の戦場で死んじゃうんだ。
そうなると丹羽長秀かな。
彼の武将は本能寺の変後に没落レースを逃れた数少ない織田家家臣だ。
殿の早期出世を望むのなら積極的に営業を行っていったほうがいいのだろうが、なんとなく釈然としない気持ちになった。
やっぱり今しがた治療した人や曲がりなりにも自分の弟子が、後の世で天寿を全うせずに死んでしまうからだろうか。
できることなら、みんな仲良く大団円で終わって欲しい気持ちはある。
でも世の中そんなにうまくはいかないよね。
特に今は戦国時代だから。
俺の脳みそでは全部丸く収まる結末なんて到底思い浮かばないけれど、足りなければ雪さんの知恵も借りればいい。
少しでも良い未来になるように精一杯努力してみよう。
またひとつ年が明けた。
島造りで忙しかったせいか、今年はなんだかあっという間だった気がする。
そういえば織田信長による比叡山焼き討ちはあったよ。
もうお坊さんへの怒りがマックスになってやっちゃったみたいだ。
ここのところうまくいかないことばかりだったから、鬱憤が溜まっていたというのもあるのかもしれない。
一向宗はあちこちで一揆を煽るし、比叡山は浅井・朝倉と組むし。
戦国武将たちの戦にお坊さんが入るともうメチャクチャだ。
自分たちは武装して攻めて来るくせに寺領に攻め入ると罰当たりだとか神罰仏罰が下るとか言われるんだから、そりゃあ信長じゃなくてもキレたくなるというもの。
まあ焼き討ちはちょっとやりすぎかもとか思うけどね。
寺領や城下を焼くっていうのは、一般人をたくさん殺すってことだ。
戦は侍や坊さん同士でやってりゃいいのにね。
実際、今回の比叡山焼き討ちでも非戦闘員がたくさんいたはずだ。
後の世でも比叡山焼き討ちのときに秀吉が非戦闘員を逃がしたとかいうエピソードが残っていて、美談として語り継がれていたりする。
逆に我らが勇者ミツヒデは一般人だろうが関係なく切り捨てたみたいだけどね。
そのへんがもう、要領のいい人と悪い人って感じがする。
まあ本心ではみんなこんなことはしたくなかったはずなんだ。
そんなこんなで今年の正月は少し沈んだ雰囲気だった。
殿のところの正月の酒宴はいつも通りのようだったけど、みんな少しだけ酒の進みが悪い気がした。
この時代の人にとって、寺社っていうのは結構大きな存在だ。
比叡山焼き討ちは織田軍に属する武士にとっては、少しへこむ出来事だったみたいだ。
雪さんもちょっと動揺していた。
雪さんはこの時代の人らしくお寺へのお参りも欠かさない熱心な仏教徒だからね。
元々織田が嫌いだったのが、もっと嫌いになったようだ。
俺は気分転換も兼ねて、雪さんを沖ノ鳥島へ連れて行くことにした。
現在の沖ノ鳥島はすでに男だらけの島では無い。
元野伏せりをしていた彼らだけど、本土には当然親族がいる。
中には奥さんや子供がいる人もいるそうだ。
今のところ台風対策も何重にも重ねた石壁が功を奏しているし、食料は島での労働の対価として俺から支給される。
食っていくには困らなくなった彼らは、本土に残してきた親族を島に呼びたがった。
俺も人が増えるのは大歓迎なので許可した。
許可といっても連れてくるのは俺だけど。
島に行ったらそうそう本土には戻してやれないと何度も確認したが、大体の人は食える場所があるなら行きたいと返答した。
そんなわけで島には今、男女合わせて60人ほどが住んでいる。
一気に賑やかになったね。
ダンジョンも今では長椅子4つほどになり、島民の憩いのスペースとなっている。
ダンジョンポイントもどんどん貯まっていく。
島全体をダンジョン化する日も近いかもしれないな。
俺と雪さんはダンジョン(椅子)の近くにテレポートし、椅子(ダンジョン)に腰掛ける。
「人工の島と聞きましたけど、結構しっかりとした島ですね」
「元々岩礁があった場所だからね。俺達は岩や土で肉付けしただけなんだ」
「そうなんですか」
耳をすませばざざぁ、ざざぁとざざ波の音が聞こえてくる。
落ち着くな。
みんなの憩いの場所になるのも頷ける。
織田信長もこんな時間を過ごせたら、比叡山を焼き討ちなんてしなかったのかな。
いや、したか。
魔王だもんな。
9
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる