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16.女性たちの話
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お腹がペコペコなのに食べられないゴブリンに出くわしてしまった僕たちだったけれど、その後すぐに食べられるダチョウのような鳥を仕留めることに成功した。
その大きな見た目に見合った大量の肉が手に入った。
このあたりの森は獲物が豊富なので食べ物には困らないとザックスが言っていたので食べ物に対してアイテムコピーのスキルを使用するのはやめることにする。
スキルの使用回数のうち2回は魔石に使い、残りの1回は金貨に使わせてもらおう。
森の中でロープほどなんにでも使えるものはないとザックスは言っていた。
しかし街に行ってもロープなんかは荷物になるだけの存在だ。
街の中において森の中でのロープにあたるものは金貨だと僕は思う。
金貨はいくらあってもいい。
小さいからコピーしても女性たちにスキルのことがばれないのも都合がいい。
1キロの肉塊なんて増えたらそれはどこから持ってきたんだという詮索が必ず出る。
食料が足りなければそれも致し方なしと思っていたけれど、あんな大きな鳥が頻繁に狩れるならお腹いっぱい食べても大丈夫そうだ。
「このあたりまで来れば盗賊に見つかる心配はないだろう。今日はここで野営をするか」
「そうだね。水場もあったし、ちょうどいい」
僕たちは小川の畔の岩場で野営することにした。
火を焚いて肉を焼くのだ。
火を焚けば野生動物が怖がって近づいてこないというのはデマで本当は逆らしいけれど、肉が食べたいのだから仕方がない。
謎のフィジカルブーストのおかげで全員最低でも現役消防士レベルの身体能力を有している。
交代で見張りをすれば夜も問題はないはずだ。
「あの、水浴びをしてきてもいいですか?」
女性の一人がおずおずと申し出る。
彼女たちにはここまで色々と我慢を強いてしまった。
水浴びもその一つだ。
水の魔道具から出る水の量はそれほど多くない。
浴びられるほどの水を出せばあっという間に魔石の粉末が無くなってしまうだろう。
それゆえにここまで水の魔道具は飲み水の他には最低限のことにしか使わないようにしてきた。
当然水浴びなんてするような余裕はなかった。
急いで盗賊たちのアジトから離れなければならないという事情もあり、ここまで一度も水浴びができなかったのだ。
ここにはそこそこの水量の小川がある。
心行くまで水浴びしてほしい。
「坊ちゃん、こういうのはあんまり見ないってのが男の気遣いってやつだぜ」
僕は気づくと女性たちが水浴びしている様をガン見していた。
僕の中で崩壊しそうになる倫理観を再構築する。
今は服がないから平時でも女性たちは裸同然の恰好をしているのだ。
それが当たり前になると女性の裸を見ることへの罪悪感が薄れていってしまう。
今更裸を見たって誰も文句を言わねえよと唆す僕の中の悪魔をぶん殴って水浴び中の女性たちから視線を逸らす。
僕は無心で焚火を起こした。
僕の煩悩を燃やしているかのように焚火はゴウゴウ燃えた。
ここまで無駄口を叩かず黙々と歩いてきた僕たちだったけれど、少し余裕ができたので自然と口数も多くなった。
女性たちとは自己紹介もせずにここまで来たのでまずは自己紹介をした。
一番年上の女性たちのまとめ役のような女性はアリシアというらしい。
歳は26だという。
しっかり者の姉御肌って感じの女の人だ。
元Cランクの冒険者だったのだけれど去年結婚を機に引退。
旦那さんの経営する飲食店を手伝っていたそうだ。
隣町までおつかいに行き、途中で盗賊たちに捕まってしまったらしい。
悲惨な目にあわされたにもかかわらず、彼女たち全員が生きる意思を捨てなかったのはアリシアが励まし続けたおかげなようだ。
二人目は水浴びがしたいと申し出た女の人だ。
名前はメリッサ、22歳。
気弱そうに見えてしっかりとした芯のある力強い目をした女性だ。
商人の奥さんらしいけれど、旦那さんは護衛に自分だけを守らせてメリッサを置いて逃げてしまったらしい。
他人を気遣う余裕がなくなったときにこそ人の本性というものが垣間見えるよね。
100年の恋も冷めるというのはこのことだ。
三人目はアテナ、19歳。
彼女は近くの村に住む独身女性で、閉鎖的で早く結婚しろとうるさい周囲にうんざりして村を飛び出し街に向かう途中で盗賊に捕まってしまった。
利発で活動的な女性だ。
文字の読み書きも簡単な計算もできるらしいので、きっと街に行けばいい仕事が見つかることだろう。
四人目はエマ、同じく19歳。
近くの村に住む生粋の村娘だ。
旦那さんは広い畑を持つ大き目の農家の長男らしい。
農作業の手伝いをしていたら盗賊に攫われたそうだ。
外壁もないような村などは盗賊が中まで入ってきて女や家畜を攫ったり金目のものを盗んでいくことがたまにあるらしい。
なかなかに過酷な生活だ。
五人目はオリビア、18歳だ。
彼女は酒場の息子と結婚して酒場を手伝っていたのだが、仕入れのために街を出て盗賊に捕まってしまった。
一緒に捕まった旦那さんは抵抗むなしくトカゲの餌にされてしまったようだ。
僕たちが燃やした布切れなどの中に彼女の旦那さんの遺品もあったのかもしれない。
成仏してくれていることを祈る。
六人目と七人目は双子だった。
クレア16歳、クロエ16歳。
二卵性双生児のようで、あまり似てない。
まさかの年下だ。
日本であれば現役JKの年齢だ。
許されないぞ盗賊。
クレアとクロエの事情は少し複雑だ。
農村に生まれたこの双子はとある貴族に見初められた。
2人一緒に愛人にしてやるから屋敷に来いと言われた2人は、貴族の部下だという人達に半ば強制的に連行されたそうだ。
その連行されている途中で盗賊に捕まり今に至ると。
2人を連行していた貴族の部下は大量のトカゲを使役する盗賊を前にして、脱兎のごとく逃げていったそうだ。
胸糞が悪い話だ。
その大きな見た目に見合った大量の肉が手に入った。
このあたりの森は獲物が豊富なので食べ物には困らないとザックスが言っていたので食べ物に対してアイテムコピーのスキルを使用するのはやめることにする。
スキルの使用回数のうち2回は魔石に使い、残りの1回は金貨に使わせてもらおう。
森の中でロープほどなんにでも使えるものはないとザックスは言っていた。
しかし街に行ってもロープなんかは荷物になるだけの存在だ。
街の中において森の中でのロープにあたるものは金貨だと僕は思う。
金貨はいくらあってもいい。
小さいからコピーしても女性たちにスキルのことがばれないのも都合がいい。
1キロの肉塊なんて増えたらそれはどこから持ってきたんだという詮索が必ず出る。
食料が足りなければそれも致し方なしと思っていたけれど、あんな大きな鳥が頻繁に狩れるならお腹いっぱい食べても大丈夫そうだ。
「このあたりまで来れば盗賊に見つかる心配はないだろう。今日はここで野営をするか」
「そうだね。水場もあったし、ちょうどいい」
僕たちは小川の畔の岩場で野営することにした。
火を焚いて肉を焼くのだ。
火を焚けば野生動物が怖がって近づいてこないというのはデマで本当は逆らしいけれど、肉が食べたいのだから仕方がない。
謎のフィジカルブーストのおかげで全員最低でも現役消防士レベルの身体能力を有している。
交代で見張りをすれば夜も問題はないはずだ。
「あの、水浴びをしてきてもいいですか?」
女性の一人がおずおずと申し出る。
彼女たちにはここまで色々と我慢を強いてしまった。
水浴びもその一つだ。
水の魔道具から出る水の量はそれほど多くない。
浴びられるほどの水を出せばあっという間に魔石の粉末が無くなってしまうだろう。
それゆえにここまで水の魔道具は飲み水の他には最低限のことにしか使わないようにしてきた。
当然水浴びなんてするような余裕はなかった。
急いで盗賊たちのアジトから離れなければならないという事情もあり、ここまで一度も水浴びができなかったのだ。
ここにはそこそこの水量の小川がある。
心行くまで水浴びしてほしい。
「坊ちゃん、こういうのはあんまり見ないってのが男の気遣いってやつだぜ」
僕は気づくと女性たちが水浴びしている様をガン見していた。
僕の中で崩壊しそうになる倫理観を再構築する。
今は服がないから平時でも女性たちは裸同然の恰好をしているのだ。
それが当たり前になると女性の裸を見ることへの罪悪感が薄れていってしまう。
今更裸を見たって誰も文句を言わねえよと唆す僕の中の悪魔をぶん殴って水浴び中の女性たちから視線を逸らす。
僕は無心で焚火を起こした。
僕の煩悩を燃やしているかのように焚火はゴウゴウ燃えた。
ここまで無駄口を叩かず黙々と歩いてきた僕たちだったけれど、少し余裕ができたので自然と口数も多くなった。
女性たちとは自己紹介もせずにここまで来たのでまずは自己紹介をした。
一番年上の女性たちのまとめ役のような女性はアリシアというらしい。
歳は26だという。
しっかり者の姉御肌って感じの女の人だ。
元Cランクの冒険者だったのだけれど去年結婚を機に引退。
旦那さんの経営する飲食店を手伝っていたそうだ。
隣町までおつかいに行き、途中で盗賊たちに捕まってしまったらしい。
悲惨な目にあわされたにもかかわらず、彼女たち全員が生きる意思を捨てなかったのはアリシアが励まし続けたおかげなようだ。
二人目は水浴びがしたいと申し出た女の人だ。
名前はメリッサ、22歳。
気弱そうに見えてしっかりとした芯のある力強い目をした女性だ。
商人の奥さんらしいけれど、旦那さんは護衛に自分だけを守らせてメリッサを置いて逃げてしまったらしい。
他人を気遣う余裕がなくなったときにこそ人の本性というものが垣間見えるよね。
100年の恋も冷めるというのはこのことだ。
三人目はアテナ、19歳。
彼女は近くの村に住む独身女性で、閉鎖的で早く結婚しろとうるさい周囲にうんざりして村を飛び出し街に向かう途中で盗賊に捕まってしまった。
利発で活動的な女性だ。
文字の読み書きも簡単な計算もできるらしいので、きっと街に行けばいい仕事が見つかることだろう。
四人目はエマ、同じく19歳。
近くの村に住む生粋の村娘だ。
旦那さんは広い畑を持つ大き目の農家の長男らしい。
農作業の手伝いをしていたら盗賊に攫われたそうだ。
外壁もないような村などは盗賊が中まで入ってきて女や家畜を攫ったり金目のものを盗んでいくことがたまにあるらしい。
なかなかに過酷な生活だ。
五人目はオリビア、18歳だ。
彼女は酒場の息子と結婚して酒場を手伝っていたのだが、仕入れのために街を出て盗賊に捕まってしまった。
一緒に捕まった旦那さんは抵抗むなしくトカゲの餌にされてしまったようだ。
僕たちが燃やした布切れなどの中に彼女の旦那さんの遺品もあったのかもしれない。
成仏してくれていることを祈る。
六人目と七人目は双子だった。
クレア16歳、クロエ16歳。
二卵性双生児のようで、あまり似てない。
まさかの年下だ。
日本であれば現役JKの年齢だ。
許されないぞ盗賊。
クレアとクロエの事情は少し複雑だ。
農村に生まれたこの双子はとある貴族に見初められた。
2人一緒に愛人にしてやるから屋敷に来いと言われた2人は、貴族の部下だという人達に半ば強制的に連行されたそうだ。
その連行されている途中で盗賊に捕まり今に至ると。
2人を連行していた貴族の部下は大量のトカゲを使役する盗賊を前にして、脱兎のごとく逃げていったそうだ。
胸糞が悪い話だ。
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